解析力学のHamilton方程式は2つで1組の1階の偏微分方程式である。質点の座標と運動量についてのとても対称的な方程式である。
それで十分満足する人もいるのだろうが、運動量pの時間微分がハミルトニアンHの 座標q での偏微分に等しいといいっていいが、ただ負号のマイナスが前についている。
これは座標qの時間微分はハミルトニアンHの運動量pでの偏微分に等しいがこの前には負号のマイナスはついていないのと対照的である。
ほとんど対称的に見えるこの方程式の対称性をこの差が崩していると考えた人がいた。それで見かけをもっと対称的にしたいと強く思ったのだろう。
そう考えてポアソンはPoissonの括弧を考え出したのではないか。そしてその括弧を用いると対称性の崩れはまったく見えなくなる。
これは私の推測であって、いま歴史的な裏づけをもっている訳ではない。
そしてそのPoissonの括弧の形に書いたHamiltonの方程式はDirac がHeisenberg の量子力学への端緒となった論文を読んでDirac流の量子力学を思いついたきっかけとなった。
現在ではPoissonの括弧をハミルトニアンHと座標qまたは運動量pとの交換子で置き換えれば、Heisenberg方程式が得られることがわかっている。