私のフランス語修業も今回で18回目となった。不定期に書いているので、最近はいつ書いたのか覚えていない。
今回はちょっと変ったことを書く。とはいっても大して変ったことではないが。今日、NHKのラジオフランス語のアンコール放送を聞いていた。パトリスと国枝先生担当講座である。いつものことでブログを書きながら、聞いていた。
ブログを書き終わったので、あわててテキストを開いてみたら、あまり聞きなれない(見慣れない)言葉を見つけた。それはpendaison de cremaill'ere(パンデェゾン デュ クレマイェール)であった。
テキストの訳だと全体で「新居のお祝い」とあった。ところでpendaisonがどういう意味であり、cremaill'ereがどういう意味か書いてなかった。
大体私は外国語の単語の意味を調べるのに辞書を引くのが嫌いである。最近は年をとってきたせいか以前よりは少し辞書を引く機会が増えてきてはいるが、それにしてもものぐさな方である。
ところが、なぜかこのときはそれぞれの言葉の意味を調べてみたくなった。それはcremaill'ereが火葬とか何かに関係した語ではないかと連想したからである。
これはもう約50年も昔の大学院の学生だったころ、広島に滞在していたイタリア人の開いたイタリア語講座に半年ほど通ったことがあって、そのときにcremareとかなんとかいうイタリア語が火葬するとかいう意味だったことをかすかに思い出したからである。
これはローマ人が軍人として外国に派遣されて闘って戦死したとき、楯の上に載せてその火葬遺体が帰って来るという話を講師のリビオ・アレッシ氏が手のひらの上に棺をおいたジェスチャーをしたのを覚えている。
フランス語はイタリア語と同じラテン系の言語である。だから私の連想はそんなに突飛ではない。実際に辞書でcremaill'ere(クレマイエール)の下にcr'ematoire(火葬の、クレマトワール)とかcr'emation(火葬、クレマシーオン)という語が出ている。
ところで問題のcremaill'ereは「(暖炉の中にかけてなべなどをつるす)自在鉤(かぎ)」だとあった。他の意味もあるが、本来の意味はやはり火と関係があるのだろう。
さて、ではもう一つのpedaison(パンデゾン)の方である。日本語でもペンデンダントという語が使われるから、垂れ下がっているものをイメージしそうである。それでずばりpedaisonの意味は絞首刑とか首つり自殺の意味である。
道理でpendaisonの単独の意味が出ていないはずだ。しかし、pendaison de cremaill'ere全体では絞首刑も自在鉤も関係なく、新居のお祝いという意味で普通に使われているらしい。やれやれ。
つるすという動詞はpendre(パーンドル)という。une pendule(ユンヌ パンデュール)は振り子時計の意味である。
地球の自転を実験室内で実証したことで、有名なフーコーの振り子などもFoucault pendulumと英語でいう。ちなみにフーコー振り子は上野の科学技術博物館の玄関のところで動いている。フーコーの振り子を見たい人はぜひ上野へ行って見て下さい。