地震の予知はなぜ難しい?
このことを非専門家である私が理解したいと先の徳島科学史研究会の総会で発言したら、出席者の中から「地震の発生はマルコフ過程だから無理だ」とか、「地震の起こる地盤は複雑系だから地震の予知は難しい」と発言があった。
多分それらの発言は間違ってはいないのだろうが、地震の予知が難しいことを自分の実感としてわかるようになりたいというのが非専門家である私の発言の意図であった。
第一、マルコフ過程とはなんだか知らなかった。それで昨夜就寝前にマルコフ過程とは何かが気になって、『現代数学教育事典』(明治図書)を探してみたら、わかりやすい説明があった。
その数日前に『理化学辞典』(岩波)を引いてみたら、説明が載っていたが、私には理解できなかった。
いま、、『現代数学教育事典』によって私の理解したところではマルコフ過程とはその事象の起こる確率がその前の事象にのみ依存しているような過程であるということである。
『理化学英和辞典』(研究社)によれば、つぎの事象の確率が現在の状況だけで定まる確率過程とある。
これは視点を未来に起きる、次の事象の起こる確率とするか、または現在の事象の起こる確率がそれ以前の状況によって決まるかという時点をどこにとるかの違いだけである。
それだと現在の状況が詳しくわかれば、つぎの地震の予知ができてもいいことになる。だが、まだ現在の地震学の知識ではまだとらえきれていない情報があるのだろう。それが何かということがわかれば、地震の予知ができてもいいことになるが果たしてどうなのであろうか。
地震の発生はマルコフ過程だから予知ができないという、理由はあまり明確ではないが、複雑系だから予知ができないという方はどうだろうか。これは十分に理由があるようだが、やはり何が地震を生起させる根本となっているのかがその複雑系でもわかればいいような気がする(注)。
しかし、地震を起こす地盤等の系が複雑であるために何が肝心な要素かということが現在のところ特定できないというのであろう。それにしてもそのうちに地震が予知できそうな状況にはまだなさそうである。
では地震学に国費をつぎ込むのは税金の無駄遣いでその費用を負担するだけ無駄かというとそういうわけでは決してない。地震に対する被害を最小にするための方策を考えることには地震学によって地震の実態がもっと深く掘り下げられれば地震学は役に立つはずである。要はその知識の使い方を知ることであろう。
(注) ちょうど物性の話で秩序パラメータ(order parameter)の変化で物性の変化が記述されるような、そういうパラメータ(物理量)が何かということを見つけるという以前の段階に地震学があるのではないかという気がするが、これは素人の考えだから見当違いも甚だしいかもしれない。
地震の専門家のロバート・ゲラーさんによる(『週刊エコノミスト』9月10日号)と小さな地震は常に地下で起こっており、それが大部分の場合には大地震を引き起こすことがないが、たまに大地震になるのだという。その大地震になるのかそうでないかの分岐点が何なのかがまだ現在の地震学ではわかっていないということであろうか。
ちなみにゲラーさんによると「地震の前兆現象があるのか」とか「大地震は周期的に起きる」とかの説は学問的にはまだ確認をされていないので、これらの考えについては彼は現在のところ否定的である。