ケイレーは多作な数学者である。生涯に約800の論文を書いたという。
これはもちろんオイラーのには及ばないだろうが、それでも数学者として論文の多い方であると思う。
小倉金之助著作集8巻を引っ張り出してきて、昨日から読んでいるが、その中に藤沢利喜太郎が匿名で書いたというケイレーの追悼文が引用されていた(以下引用:字は現在の普通の書き方に直した)。
氏が一生涯に公にせる800の論文中、永久に価値を有するものは、わずかに20有余にすぎざるべし。著書としてはわずかに楕円関数論一部あるのみ。この如何に不都合なる書物なるか、知る人は知らん。・・・氏の楕円関数に関する研究のごときは真に研究と称すべき程のものなし。・・・余は多年に亘り氏の論文を熟読し、一つも得るところなく、余は実に貴重なる日月を浪費せり。氏のごとき既に数学者として名声ある人は、今少し濫りに論文を公にすることを慎みて貰いたきものなり。・・・
小倉金之助はその4年後に林鶴一先生の講演からケイレーが偉大な数学者であることを知ったという。
それにしても上の評はどういうことであったろうか。