昨日、2階の寝室の掃除をした後で、書棚の前の椅子に座って、書棚を眺めていたら、在職中に購入していたのか姜さんの『在日』(講談社)という書があるのに気がついた。
この書を自分で所有しているとは思わなかった。それで日曜でもあるのでこの書を階下に持ち出し、コタツで斜め読みした。
今春まで東京大学教授だった姜さんを知らないインテリはいないと思う。テレビに新聞によく出て来られるイケメンの学者である。昨年か今年の春までだったかNHKの音楽の番組にまで出演されていた。
在日ということについての考察とか経験とか感情とかそういうことがこの書の主眼だと思う。その点については私が何か的外れなことをいってもしかたがないので、なにも述べないことにする。
ただ、この書を読んでいて、気のついた細かな事実があった。
姜さんのお母さんは私が2歳くらいから6歳くらいまで住んでいた、朝鮮(今の韓国)の鎮海(チネ)の出身であることと、お父さんはその鎮海からほど近い町の昌原の出身であることであった。私は小さかったので、昌原に行ったことがあったかどうかはわからない。
貧窮と朝鮮の植民地化でこの地方の人々の多くは当時の宗主国であった、日本に渡って生活を紡ごうとした人たちがおられた一方で、私の父のように職を求めて朝鮮に渡った日本人もいた。
私は愛媛県で生まれたが、妹はこの鎮海で生まれた。姜さんがお母さんの故郷の鎮海に行かれたことがあるかどうかはわからない。昔もそうであったが、いまではこの鎮海は桜の名所として有名であり、桜の季節にはとても多くの観光客がこの街にやってくる。
指紋押捺問題で一度それを拒否するという態度を姜さんは表明されたことがあったらしい。いまでは多分韓国・朝鮮系の在日の方々は指紋押捺の義務はなくなっていると思うが、そのような何でもないことでも多くの在日の人の運動の効果であろう。
指紋押捺は実は私もドイツ留学のさいに経験があるが、あまり気持ちのよいものではない。ドイツ人のR氏がいつも日本では外国人は犯罪者と同じ扱いを受けるとこぼしておられたことがある。
姜さんはご自分ではエリートという意識をお持ちではないようだが、若くしてドイツに留学されたりとやはりエリートであろう。
これはエリートということとは別かもしれいないが、彼の才能とかタレント性以外に彼がイケメンであることが彼をより有名にしているのではないかと思う。
イケメンだとか美人であるとかはある程度生まれつきである。だからそれが怪しからんという話は誰からも起こらないし、またイケメンであろうとなかろうとそれはそれこそ本人の責任でもない。
だが、姜さんのタレント性の大部分は彼の知性によるのだろうが、やはりその一部は彼がイケメンであることによるだろう。
そして、最近ではご長男の死を描いた小説まで書かれている姜さんの多才ぶりだが、彼の亡くなられたご長男も写真で見たらとてもイケメンでそのことを生かして自死を選ばないでなんとか生き延びられるという道はなかったろうかと残念に思っている。