先日インターネットで検索してプリントしてあった資料を昨夜読んでみた。大部分はあまり長くもないし、難しくもない資料であったが、一つ二つ長い資料があった。
その一つは「複素数の定義」という題の論文であり、それがどこに載っているのかはわからなかったが、どうも「数研通信」という「数研出版」から出されている雑誌(記事をインターネットで見ることができる)に載った論文らしい。要するに複素数がどのように世の中に受け入れられるようになったかという歴史を調べたなかなかしっかりした論文である。
以前にこの人、坂本茂さんは「高校数学における複素数」という論文も書いたらしい。そしてそのテーマは私が「虚数とカルダノの公式」(『数学・物理通信』所載(注))というエッセイで述べたようなことをすでに書かれているらしい。
らしいとしか言えないのは、この論文「複素数の定義」にちょっとしか前のエッセイについての言及がないからである。
ひょっとしたら、インターネットで全文を見ることができるかもしれないので後で調べてみよう。引用してある文献は一つを除いて私も持っているようなものばかりであるのだが。
坂本茂さんは高校の数学の先生らしいが、優れた論文(とはいってもオリジナルのものではないが)を書く人がいるものだ。
ここまで書いてインターネットで『数研通信』を検索したら、すぐに出て来た。そして坂本茂さんの「高校数学における複素数」も探すことができた。
難しいところもあるので、この論文の全部を読んだわけではないが、坂本さんは高校生のときにx^{3}+y^{3}+z^{3}-3xyz=0を因数分解するという方法で3次方程式の解法を見つけていたという。
考えは私が「虚数とカルダノの公式」(『数学・物理通信』所載)に載せたのと同じ考えであり、私は遠山啓先生の岩波新書『数学入門』に触発されたのだが、坂本先生はそういうきっかけがあったとかどうかわからないが、独自に考えられたものらしい。
実際に解くときには場合によっては3乗根を複素数で表すときに困難があるとのことである(私のエッセイで解いた例ではそういう困難には出会わなかった)。そのために三角関数でその3乗根を表すというようなことを議論しているらしい。いずれにしても世の中には隠れた優れた先生がいる。
(2021.10.20 注:付記)「虚数とカルダノの公式」(『数学・物理通信』5巻3号(2015. 4.8) 2-13)に所載、「数学・物理通信」はインターネットで検索すると名古屋大学の谷村先生のサイトにバックナンバーがすべてある。