このブログはなにしろ10年以上書いているので、同じことを何回も書くということも起こるだろう。
西村肇さんの書いた、星野芳郎さんの追悼記に一言だけ出ている武谷観をここに書き留めておこう。
「観念的で行動的---職人と違ってた星野さん」(雑誌「現代化学」より)
(前略)しかし、(星野は学生時代に:引用者補足)新聞発行の実務が忙しかった分、数学、物理の基礎学力を磨き、音楽、文学に沈潜する時間には不足していたと思われます。これは武谷さんとはまったく違う点です。最晩年、私が訪れた時、武谷さんの机の上には、細かい字で書き込みのある「群論と量子力学」(ワイル)がありました。生来計算好きの物理職人だったのでしょう。一方、音楽の方は本格派で、音楽批評は深く感動的でした。星野さんの技術論が、本質で武谷流でない理由がここにあります。(後略)
短い引用だが、興味深いと思う。西村さんは星野さんに批判的である一方、星野さんのいいところも書いている。それは星野による、板倉聖宣の評価である。西村さんも星野に示唆されて、板倉の業績を再認識したらしいことは前にもこのブログで書いた。
星野に関して興味深かったのは『「技術の体系」は学問としては、基本構造と方法に疑問が残ります』とあるところだ。私は岩波講座の『基礎工学』に載ったこの「技術の体系」の一部を読んで感銘を受けたことがあるので、上には上があるものだと思う。
西村さんの引用で興味深いところをもう一カ所引く。
「ここで思想家とは、言っていることが、正しいにしても間違っているにしても、首尾一貫している人のことです。そのためには、人と決定的に対決し、否定しうることが条件です」
思想家とはそういうものか。なるほど。
「観念的で行動的---職人と違ってた星野さん」は、他のところも興味深いが、その紹介は別の機会に譲ろう。
西村肇さんの書いた、星野芳郎さんの追悼記に一言だけ出ている武谷観をここに書き留めておこう。
「観念的で行動的---職人と違ってた星野さん」(雑誌「現代化学」より)
(前略)しかし、(星野は学生時代に:引用者補足)新聞発行の実務が忙しかった分、数学、物理の基礎学力を磨き、音楽、文学に沈潜する時間には不足していたと思われます。これは武谷さんとはまったく違う点です。最晩年、私が訪れた時、武谷さんの机の上には、細かい字で書き込みのある「群論と量子力学」(ワイル)がありました。生来計算好きの物理職人だったのでしょう。一方、音楽の方は本格派で、音楽批評は深く感動的でした。星野さんの技術論が、本質で武谷流でない理由がここにあります。(後略)
短い引用だが、興味深いと思う。西村さんは星野さんに批判的である一方、星野さんのいいところも書いている。それは星野による、板倉聖宣の評価である。西村さんも星野に示唆されて、板倉の業績を再認識したらしいことは前にもこのブログで書いた。
星野に関して興味深かったのは『「技術の体系」は学問としては、基本構造と方法に疑問が残ります』とあるところだ。私は岩波講座の『基礎工学』に載ったこの「技術の体系」の一部を読んで感銘を受けたことがあるので、上には上があるものだと思う。
西村さんの引用で興味深いところをもう一カ所引く。
「ここで思想家とは、言っていることが、正しいにしても間違っているにしても、首尾一貫している人のことです。そのためには、人と決定的に対決し、否定しうることが条件です」
思想家とはそういうものか。なるほど。
「観念的で行動的---職人と違ってた星野さん」は、他のところも興味深いが、その紹介は別の機会に譲ろう。