というHardyの著書が大学生協の書籍部に届いたというので、とりに出かけた。ペーパーバンドで3000円を少し切った値段である。
この本の32-34頁にベクトルの商としての四元数の定義が書いてあるらしい。それでわざわざ購入したのである。実はインターネットでそのページを見ることができたのだが、プリントをしようと思うとプリントできない。英語が十分堪能ならばディスプレイ上で読むこともできたのであろうが、残念ながら私はあまり英語が堪能ではない。
それでしかたなく、本を購入することにしたのである。インターネットで見ていたのは多分google booksのサイトであり、お金をいくらか払えば、プリントもできたのかもしれないが、無料ではプリントできなかった。
他のサイトを探せば、無料でプリントできるサイトもあったかもしれない。そういうサイトを探す根気もないし、それにあまりいま私のパソコンが機敏に動かないということもあって原著の購入となった。本来ならHamiltonの四元数の本に書いてあるはずのことだが、Hardyに少し整理してもらった形のものを読んだ方がわかりやすいかと考えた。
もっとも堀源一郎先生の『ハミルトンと四元数』(海鳴社)にも説明がでているのだが、堀先生はベクトルという語をあまり厳密には定義されないでつかっているので、現代の私たちから見ると疑念がわく。ということで標記の書の購入となった。
1887年に出版された書であり、ベクトルは「向きのある線分」として定義されている。これは私たちが物理学でベクトルをはじめて学ぶときに学ぶベクトルの定義と同じだが、私たちはベクトルの商などは定義しない。
ベクトルを四元数の虚部の部分だとすれば、その商はもちろん定義できて、その商から普通の四元数が得られる。それで文句はまったくないのだが、はてさてどういう風に議論を展開しているものやら(注)。
(注)虚部だけしかない四元数の積は実部ももった普通の四元数になる。虚部しかない四元数の積は(ia+jb+kc)(ix+jy+kz)=X+iY+jZ+kWとなるからである。このXは四元数の実部である。
このことはハミルトンが四元数を見つけたプロセスそのものではないが、ちょっと状況が似ている。
すなわち、a+ib+cjとx+iy+jzとの積の因子には3つ目の虚数単位kがないが、その積(a+ib+cj)(x+iy+jz)=A+iB+jC+kDと一般にkの項を含むようになる。