物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

H"atten Sie denn nicht st"arker bremsen k"onnen ?

2018-07-12 12:39:47 | 日記

「もうちょっと強くブレーキを踏むことができなかったでしょうか」という意味であろう。

これはある会話の中の一文を取り出したものである。この文章を見てあまり違和感を感じない人は、ドイツ語にかなり通じた人か、それでなければ、あまりドイツ語を分かっていない人であろうか。

状況は車に乗っていた男女が互いの車を衝突させてしまった。車はもう続いて乗ることなどできそうにない。そういう状況の下での会話である。事故に怒るでもなく二人がお互いの安否の状況を確かめ合っている。そういう状況を想像してほしい。

文頭のh"attenとbremsen k"onnenとは現在完了を形成するが、接続法第2式で丁寧に話をしている。(接続法の)現在完了なら、bremsen k"onnenではなくて、bremsen gekonntではないのと思う人もおられるであろう。だが、ここはやはりbremsen k"onnenが正しい。

このk"onnenは過去分詞(または完了分詞)である。もちろん、本動詞として単独でつかうときには、k"onnenはk"onnen, konnte, gekonntと変化するが、話法の助動詞としての動詞の3要形ではk"onnen, konnte, k"onnenと変化をする。

こういうことを知っていたからと言って私がドイツ語をとくによく知っているというわけではない。たまたま、こういうことを知っていたにすぎない。

しかし、こういうことは初歩のドイツ語学習者が学ぶ、ドイツ語文法書に載っているのだろうか。もっているドイツ語の学習書を探してみようか(注)。

 (注)早川東三『ドイツ語入門』(NHK出版)の「話法の助動詞の現在完了」の項にはちゃんと書かれてあった。


熱を温度差を利用しないで移動させる

2018-07-12 10:40:48 | 物理学

熱を温度差を利用しないで移動させることはできるか。もちろんできる。物理に詳しくない人はそんな馬鹿なと思う人もおられるかもしれない。答えはいわゆるカルノーのサイクルと言われるものでわかる。

物理の教師を長年してきたが、大学を定年退職する前の数年になって5年間ほどようやく熱力学を教えることとなった。

そのときにカルノーのサイクルを教えたのだが、どうもそのへんのことがわかっていたのかどうもあやふやである。1979年には朝永信一郎先生の『物理学とは何だろうか』(岩波新書)上が出版されてそれに「熱を温度差を利用しないで高温の熱源から低温の冷却器に移動させる」ことについて書いてあったのだが、どうもそれを読んだときにはっきりと認識をしていたとは言えない。

最近、熱力学のテクストを読む機会があり、また、戸田盛和『エントロピーのめがね』(岩波書店)を読んだりしていて、上に述べた『物理学とは何だろうか』を読んでみてようやく認識をした。カルノーのサイクルではピストンを準静的に動かすということで力学的な可逆過程を実現しており、また高温の熱源から低温の冷却器への熱の移動をその熱源と冷却器の温度差を使わないで行っているということが。

これで熱の移動にかんしても可逆過程となるように配慮をしていることがわかった。熱は高温の熱源から低温の冷却器にその温度差を利用して移動させるとこれはもちろん不可逆過程であり、カルノーサイクルが可逆機関であるという前提がくずれるが、このことをうまく回避している(注)。

村上雅人さんの『熱力学』(海鳴社)では、だからカルノーのサイクルをほとんど本の末尾にとりあげるという工夫をしている。

(注)等温過程で熱源から熱量Qをもらい、それを断熱課程で気体の体積を準静的に膨張させることで、力学的な仕事に変える。そしてその気体の温度を冷却器の温度と等しくなると力学的な仕事にならなかった熱Q'を冷却器に移動させる。このときまた準静的に気体の体積は圧縮される。このとき外界から気体に仕事がされる。

こういう風にして、確かに高温の熱源から低温の冷却器へその温度差を利用しないで、Q-Q'だけの熱を移動させることができる。しかし、サイクルにするために、さらに冷却器との接触を断って、断熱的にもとの気体の体積まで断熱圧縮する。ここまでくれば、このあとはサイクルをくりかえせばよい。