私の書きたい複素解析のテーマが3つある。
一つは「分岐点の定義」であり、これについてはすでに小著『数学散歩』(国土社)に書いたが、それの改訂版を「数学・物理通信」に書いた(注)。
つづいてこれが一番難しいが、解析接続をするいろいろな方法の説明である。これを詳細に説明した本はあまり見たことがないが、私の知る限り松田哲さんの『複素関数』(岩波書店)が比較的詳しい。
もうひとつ書きたいことは留数の方法である。それも例題として有名な朝永の『量子力学 I 』(みすず書房)に出てくる積分を留数の方法で導いておきたい。
もっともこれは私も訳者の一人になっている、ゴールドスタイン『古典力学』(吉岡書店)下に説明があるはずだ。はずだといったのはこの初版には確かに書いてあるのだが、私もかかわった2版とか3版にもきちんと書かれているか、今確認をしていない。
もっともこの積分は初等的にできると朝永の書には書かれていて、また現実にそれは本当にそうでもあるらしい。だが、これが留数の方法で積分できると『古典力学』に書かれていることを知ったときは目から鱗が落ちる感じだった。
(注)「数学・物理散歩」はインターネットで検索すれば、すべてのバックナンバーを見ることができる。これは名古屋大学の谷村省吾先生のおかげである。谷村先生、いつもありがとうございます。