ベクトル空間と四元数とはどういう関係にあるんだ。まったく関係ないではないかなどという声も聞こえそうだ。
四元数をベクトルと考えるというとああそうかとようやく理解してもらえるかもしれない。確かに四元数の和もまた四元数に実数をかける演算も定義されるので、だれでも四元数の集合は4次元のベクトル空間と思ってもらえるだろう。
いや複素数の全体だって、2次元のベクトル空間をなしている。実数だって1次元のベクトル空間だ。もっとも実数をベクトル空間と考えるのはあまりご利益はないだろうが。
実数をベクトル空間と考えることが実はベクトル空間の公理と深く関係していることをまで認識している人はどれくらい世の中にいるだろうか。
スカラ―積を四元数とか複素数に導入すれば、単なるベクトル空間ではなくて、計量ベクトル空間となる。いわゆる長さというか、距離の概念をもった空間である。
前に購入していた志村五郎『数学をいかに使うか』(ちくま学芸文庫)にも距離の概念のあるベクトル空間が役に立つと書いてあった。以前に読んだときにはこの言及には全く気がつかなかった。