私はHermiteanだと思ってきたが、どうも最近ではHermitianのほうが普通に使われていると知った。
何のことだと思うだろう。エルミート演算子の英語である。てっきりHermitean operatorと書くと思っていたから。
あわてて、Schiffの量子力学の本をみたら、Hermitianとなっていた。もっともBohmの量子論の本ではHermiteanとあったので、両方とも存在するとわかったが、最近では岩波の『数学入門辞典』でもHermitianとなっていたから、現在ではHermitianで、決まりであろう。
Hermitean operatorの発音であるが、私はエルミチアン・オペレーターと発音してきたが、英語の得意な上智大学名誉教授の物理学者、藤井先生はハーミチアン・オペレーターと発音されていたから、英語の普通の発音ではそういうのであろう。
ちなみに「エルミート演算子とはその期待値をとると、それが実数となる演算子」のことである。演算子にある種の数と同じような性質をもたせた考えである。もっとも普通の量子力学ではこの定義を拡張したエルミート演算子の定義が使われているのが普通である。そのためにエルミート演算子の理解が難しくなっている。
いつだったか、非線形波動の研究で有名だった広田良吾先生のE大学の工学部の集中講義に出席していて、「それはエルミート演算子ですか」と質問したら、逆に「エルミート演算子とはなんですか」と聞かれて、私のほうが絶句したことがあった。
さすが、偉い先生はそういう初歩的な問を怖がらないのだと知った。しかし、これは広田先生くらいに偉い先生にだけ許された特権なのかもしれない。
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