【国会傍聴記 2009-3-4 衆院本会議】
午後1時から本会議で、「定額給付金法案」(2008年度第2次補正予算関連法案)が3分の2で再可決されました。再可決はついに7回目になりました。
これを報じた4日のニュース映像(NHK、テレ朝)を確認したら、このブログで伝えるべきことがあると感じました。
ニュース映像を見ると、民主党の小沢一郎代表が本会議を欠席しているように見えますが、実際には小沢さんは出席していました。
河野議長の「再可決」の宣言に続き、民主党議員席の鳩山由紀夫さん、菅直人さん、羽田孜さんらが写りましたが、ここに小沢さんはいません。
しかし、冒頭の写真のように小沢一郎さんは間違いなく投票しています。
なぜこのような重大なギャップが生じたのでしょうか?
[画像の説明]冒頭の写真は中日新聞、それ以外は衆議院インターネット審議中継の映像からキャプチャ。
午後1時45分、河野議長はこの法案を「記名投票採決」、いわゆる“堂々めぐり”で採決することを宣言し、速やかに「議場の閉鎖」を命じました。
午後1時54分、小沢さんは反対票(青票)を参事(衆院職員)に手渡します。
投票を終えた小沢さんは、演壇から降りずに左にUターンしました。
小沢さんは議長席の後ろを通ります。
議長向かって左側に座っている駒崎義弘事務総長(衆院職員トップ)に一声かけ、事務総長がうなづきます。
制帽をかぶった衛視が議長席うしろの扉をあけます。
小沢さんは議場閉鎖中に唯一あく議長室側の扉から議場をあとにしました。
2時4分に議場開鎖。集計の上、2時5分、3分の2以上の賛成多数で法案は可決、成立しました。ですから、この2時5分の映像には小沢さんは映っていなかったわけです。
そして、散会後にこのドアから出るのは河野議長だけで、他の議員は、左右や後ろ側にある各ドアから出て行きます。
このように議場閉鎖中に投票を終えた議員が事務総長に一声かけて、議長席の後ろのドアから出て行くのは、金曜日の長時間の本会議などでは頻繁にありますが、昨日は水曜日の1時間の会議なので小沢さんだけでした。
小沢さんがこういう行動をとった理由は、散会後に出席議員(昨日は469人)と一斉に出ると、待ちかまえている報道陣にモミクチャにされるからだと思います。
取材を避けるのは「説明責任を果たしていない」と批判が出そうですが、小沢さんは午前10時~午前10時40分まで民主党本部内ホールで記者会見をしています。
とくだんの情報はなく、とりあえず議場外に張っているカメラマンにモミクチャにされると、護衛官(SP)や代表付(党職員)の負担も大きいし、混乱するので事前に打ち合わせていたのでしょう。
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さて、幹部議員が投票する瞬間には本会議場にすさまじい数のフラッシュが焚かれます。昨日のそれは、小沢さんのときに最多に達し、その2分後に麻生首相が投票したときは、半分ぐらいに感じられました。
今の政治が小沢一郎と民主党を中心に回っていることを証明しています。関心が最高潮に達していることは、選挙にとってプラスに働くと思います。
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さて、麻生首相の次の次に投票した森英介法相(自民党麻生派)がやつれていました。
実は私は17年前、当選1回生だった森英介さんと十数人ほどの会合でお会いしたことがあり、その時から知っていますが、これだけ疲れているのは見たことがありません。18人の閣僚の中でも明らかに一番疲れていました。
法務省東京地検特捜部が西松建設の裏金事件の捜査を強力に進めるなか、森法相が政府・自民党と特捜の板挟みになっているのではないかと推測しました。
法相には検察の捜査をすべて止めさせる「指揮権」という大きな権限があります。これがあるから、首相と同じ派閥から法相が起用されているわけです。指揮権は過去に1度、発動されています。
今回の国策捜査は、“関東軍”のような状態になった特捜を内閣が管理できない状態になっているのではないか、という一つの推論が頭をよぎりました。