【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

小山展弘・衆議院議員がまさに順風満帆の初質問

2010年02月19日 20時41分39秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導


【衆院財務金融委員会 2010年2月19日(金)】

 小山展弘さんの初質問が昨日急きょ決まり、政策秘書さんから連絡をもらったので、駆けつけてきました。

 小山さんは国会議員になってすぐ、民主党の不名誉な歴史に名を連ねてしまいました。与党として初めて迎えた法案採決が強行採決となってしまい、起立賛成者のひとりとなりました。質問したり、討論に立つことは一切ありませんでした。議事録には「出席議員」として名前が残りました。2009年11月19日のことです。

 それから、ちょうど3ヶ月後のきょう、初質問のチャンスを得ました。

 この日の財金委は午前9時に始まり、小山さんの質問は午後12時21分から。

 玄葉光一郎委員長が「次に小山展弘君」と呼ぶと、亀井静香・金融担当大臣から「なんだよ、まだ終わりじゃねえのかよ!」とのぼやき声が・・・しかし、小山さん全く動じませんでした。まあ、緊張で耳に入らなかったようですが。

 
[画像]小山議員を指名する「玄葉光一郎・衆院財務金融委員長(民主党)」

 小山君は与党議員ですから、「菅財務大臣への質問の予定はありませんので、どうぞご休憩下さい」と促し、菅直人さんは昼食に向かったようです。

 小山君は、最初の質問を「中小企業金融等円滑化法が施行されて最初のヤマ場である年末年始を越えました」と切り出しました。あの強行可決した法律のフォローから入ったのです。

 この質問は政治的にも金融的にも日程感覚にすぐれた質問だと思います。

 また実績の数字を副大臣に答えさせ、その評価を大臣に答えさせました。合理的ですね。

 
[画像]小山議員に答弁する亀井静香・内閣府特命担当大臣(国民新党代表)

 
[画像]小山議員に答弁する大塚耕平・内閣府副大臣(民主党)

 ずっと答弁者の目を見ながら聞いていた小山君。最初はガチガチでしたが、だんだんと饒舌になり、

 「リーマン・ショック前には、『融資は投資だ』という言葉が投資銀行ではやったらしいが、それは違う。

 お客様と一緒に成長していく、高度成長期のようにはいかないけど・・・でも、そういう姿勢を持つことが、金融機関のあるべき姿なんです。」

 農林中央金庫職員としての経験を国政につなげました。委員会室にいた政務三役、与野党の先輩議員たちが「あれ、こいつ面白いかもな」という表情をしていたように、私には感じられました。

 質問するだけではありません。自己ピーアールも十分でした。

 新銀行東京への金融検査に関して、大塚耕平さんに質問。野党時代は、追及チーム座長、現在は金融副大臣。大塚さんも答弁できてうれしいという風情でした。

 そして、「新銀行東京」と対比させるかたちで、JF漁協(漁業協同組合)について言及。「今、50年間1回も不正融資をせずにコツコツとやってきた漁協がどんどん廃業に追い込まれています」との現状を国政に届けました。

 実は、JAバンク(農協)だけでなく、JFマリンバンク(漁協)の預貯金も農林中金が運用しています。で、小山議員がしらみつぶしに調べた結果、「漁協」関連団体職員出身の国会議員は彼ひとりのようなんです。ちゃっかりアピールしています。静岡3区で自民党の柳澤伯夫元金融相を5万票近くの差でかわした実力の一端を感じました。

 最後は、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額(1000万円)引き上げは、信金・信組・JAバンク・JFマリンバンクの経営を圧迫すると指摘しました。

 亀井郵政改革担当大臣から「私どもは、郵便局が栄えて、信金、信組、あるいは保険の代理店が廃れるような改革はしません。それぞれ相まって地域社会を守っていくことができる郵政事業にはどうしたらいいか。私どもとしては、信金、信組、あるいは第二地銀が協力し合っていけるように、大塚副大臣を中心にどういう協力が出来るのか協議をしています」との答弁を引き出しました。この「大臣から答弁を引き出す」という姿勢は、政府外与党議員(バックベンチャー)の手本となるものだと思います。

 一回だけ、「委員長!」と言い忘れた小山さん。前日の衆院本会議中、質問時間の22時間前にチャンスをもらったたった15分間の質問ですが、十分及第点だったでしょう。

 筆頭理事の篠原孝さん、国対副委員長の高山智司さんら、よい先輩に恵まれていることも、よく見て取れました。

  → 
 [写真]去年の夏       [画像]今年の冬

 小山展弘34歳、ひとりの代議士として、自分の脚で一歩を踏み出しました。

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 午前中の委員会では、自民党の野田毅さん(昭和39年大蔵省入省)が菅財務大臣に6月に策定する「中期財政フレーム」について質問。菅財務大臣が「第45回衆院選の任期中は消費税を上げない」と言明すると、「ならどうやって(衆院選任期切れ後の2013年度以降の中期財政フレームを計算するのか?」と追及。これは大きな難問が浮上しました。

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 菅財務大臣は、19日午後の衆院財金委で、「所得税法改正案」「粗特透明化法案」など予算関連(日切れ)3法案の趣旨説明をしました。来週以降、日切れ法案を審議するベースが整ったことで、予算審議は与党ペースになってきました。