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宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

それでも前に進んだ6月6日週の国会

2011年06月10日 22時25分22秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

 にわかに信じがたいことですが、6月6日週の国会は前に進みました。

 先週6月2日(木)の衆院本会議では前日の参本に続き、菅直人首相のサミット報告とそれに対する各党代表質問が予定されていましたが、自民党・公明党・たちあがれ日本が菅内閣不信任案を提出しました。慣例にもとづき、すべての審議に先んじて、2日午後1時から採決。ご存じの通り、圧倒的多数で否決され、衆議院は菅内閣を信任しました。私は、菅さんが「退陣表明」したとはまったく思っていないのですが、マスコミは「退陣表明」と報じています。私が菅総理について、以前から「性格は最悪だが精神力が強い」として、総理に推していて、「3・11」でも、それは証明されていると確信しています。どうか、菅さんは見苦しいまでに石にかじりついて続投してほしいと思います。そうはいっても、世間がどうみるか。これが日本の議院内閣制です。レームダック化を前提にした「次の体制」に向けた動きも必要です。

 そもそも、なぜ会期末、6月のセレモニーである不信任案が政局になってしまったか。最大の要因は、民主党の岡田克也幹事長安住淳国対委員長の政府外議員へのしめつけが遅く、甘かったということになるでしょう。そして、採決の前夜の「小沢グループ71人結集」というハプニングにつながってしまいました。うんざり政局はいったい何だったのか。ヒトコトで言うと、民主党正副の幹事長、正副の国対委員長、そして、自民党の執行部およびベテラン議員、公明党の執行部とも、「小沢グループが馬鹿とは知っていたが、ここまで馬鹿とは思わなかった」というのが本音でしょう。

 さて、これまでなら、今週の国会は、野党は「首相の退陣時期」が明確になるまで、審議拒否となったでしょう。しかし、政治への関心の高まり、ネット中継、ボス不在の政治(そのひきかえに、ケータイ、スマートフォンでめまぐるしく変わる情報戦)は国会空転を許しません。それでも国会は前に進んだ、といえるでしょう。

 7日(火)は衆院は疲れて審議無しでしたが、参議院では委員会で衆院送付法案の採決をし、翌8日(水)の参本では、「国鉄清算事業団の債務に関する法案(閣法)」や、「環境教育法の改正案(衆院環境委員長提出)」などが成立しました。かなり早く国会は正常化したといえるでしょう。

 9日(木)の衆院本会議では、「スポーツ基本法案」、「NPO促進法案」の2つの議員立法が参院に送られました。なかなか後半国会らしくなってきました。また、北朝鮮制裁の特定船舶入港禁止法に関する承認案件(衆・国土交通委員会で審議)や、「3・11」後に内閣が提出した「被災地のための金融機能強化法案(177閣73号)」も参院へ。さあ、会期末まで、残り8営業日、間に合うか。この9日(木)は参院法務委では、「刑法改正案(177閣42号)」、参・厚労委では「介護保険法改正案(177閣50号)」が審議されました。おそらく会期内に間に合いそうな気配です。

 そして、10日(金)はテレビ入りで、参院予算委員会に長浜博行さんが登場。意外や意外、テレビ入りの予算委は初めてとのことでしたが、与党質問のお手本のようでした。なお、税と社会保障の一体改革は20日ごろ、政府・与党幹部が成案を出す予定ですが、このたたき台(200ページ前後)は私は独自のルートで入手し、読み込んでいます。その結果、当家としては、大賛成ということになりました。早ければ、今週末にも、その理由を書きます。それにしても「信なくば立たず」が今177通常国会で最も聞かれた言葉だと思いますが、さすがに長浜さんは菅代表・岡田幹事長が民主党財務委員長を任せる人だな、と感じました。ぜひ一度、長浜さんとお話ししてみたい、と感じました。

 話が戻って、10日(金)。衆院の方に行きますと、大きな動きが。まず(火)と(金)が定例日の早朝の閣議で決定した、「国税などの改正法案(177閣2号)の修正案」と「地方税などの改正法案(177閣4号)の修正案」が出ました。民主党の藤井裕久さん自民党の野田毅さんが実務者協議をしていたと聞いています。これは、6月30日で切れる国税つなぎ法、地方税つなぎ法の中の「期限を区切っての減税」「免税」などの租税特別措置の来年3月31日までの延長。それに加えて、自民党からの税制改正の要求をかなり盛り込んだ修正案です。なお、当初の法案にあった、「法人税率の引き下げ」「相続税の基礎控除の5000万円→3000万円の引き下げ、税率の50%→55%」などは、この法案には入っていないようです。とにもかくにも、会期末ないしは6月30日までには絶対に、衆参で可決し、成立させなければいけない法案です。

 ちなみに、衆・財金委は“例の件”で後藤田正純・自民党側筆頭理事が委員を辞めてしまったので、きょうの衆院のホームページからすると、竹下亘・元財務副大臣が筆頭理事になると思うので、穏便に進むのではないかと期待できます。参院の財政金融委員会は、民自公との良識的な理事ですので、大丈夫でしょう。

 そして、衆・総務委では民主党側筆頭理事の黄川田徹さんが途中から、復興特別委員長になってしまったので、当選回数からすると何人かいますが、できれば、40歳になったばかりの小川淳也・元総務政務官に苦労してほしいと思います。この人、ちょっと細かいんですよね。この辺、おおように自民党側理事の肩を抱きながら、法案を速やかに参院に送ったら、次が見えてくると思います。その点では、衆・環境委はたくさん法案を通していて評価できますが、大谷信盛・同委筆頭理事が、参・環境委を傍聴して法案のプロセスをしっかり見ているということを知って、いいなあ、と思いました。民主党も捨てたものではありません。

 そして、10日(金)の衆本では、議員立法となった、「津波対策推進法案(177衆法14号)」」、「社会保険病院の存続法案(177衆法14号)」が通りました。なお、「社会保険病院の存続法案」は、参院選後の「院の構成を定める」だけの第175臨時国会(昨年7月)の審議でつなぎ法が成立しており、「ねじれ国会のお手本 鉢呂吉雄委員長が名裁き」という国会傍聴記にしたためております。

 さらに10日(金)の衆本で、やっとですが、「東日本大震災復興基本法案」が可決しました。これには、内閣提出法案と、自民党提出の法案、それに予算を伴う法案は50人以上の衆院議員の連名が必要なため、骨子案の発表にとどまった公明党案がありました。きょう参院委送られたのは、民自公共同修正で出し直した、第177国会衆法13号議案となりましたが、ポイントは「復興庁」「復興債」「復興特区」の3つで、これは公明党の骨子案にあったものばかりです。チーム3000の地方議員たちから上がってきた公明党が震災復興の主役になりつつあります。現時点で、民主党は公明党ほど組織力がないのですから、公明党の言うことをもっと聞くべきです。2次補正も公明党のアイディアを丸飲みに近いくらい入れたらいいのです。そういう意味では、復興特別委員会の筆頭理事が人柄の藤村修さんだったのは名人事といえるでしょう。

 まあ、しかし、大連立構想から始まった今週の国会ですが、議員立法が通るなど後半国会らしく、たくさんの法律ができつつあります。来週は参院がフル回転しなければいけません。そして、相対的に言えば、「最重要法案である特例公債法案(平成23年度の赤字国債発行法案、177閣法1号)を」成立させなければいけません。ここで、参議院の問責決議案など出したら、参議院不要論は一気に加速するでしょう。そして、特例公債法案が通らなければ、内閣支持率ではなく、国会支持率がなくなるでしょう。毎日新聞によると、震災復興後国会は機能していないと考える人は85%にのぼります。毎年やっている、ギャラップと読売新聞の共同調査では、昨年は、「国会を信用している」は日本では15%ですから、奇妙に一致しています。みんなの党参院議員の松田公太さんによると、電通総研などの世界の価値観調査では、国会の支持率は40%前後の国が多いそうですが、日本では20%前後だそうで、やはりこの辺りの水準です。

 残り1週間+3日間の最終盤国会を迎えます。衆参与野党、議員・職員・秘書が責任感を持って、辛くても前に進まないといけません。私たち国民もこの2週間、うんざりしないで、重大局面として国会を監視し、圧力をかけなければいけません

 さて、菅さんがどうするかということがありますが、民主党新代表に動き出しているところがあるようです。昔、宮澤喜一さんは「保守政党の総裁選出は実力者同士の話し合いが望ましい」という趣旨のことを言っていました。今の言葉で言えば「政権与党の代表は名乗りをあげた者同士の話し合いで一本化するのが望ましい」ということになるかと思います。宮澤さんの発言を聞いた十数年前は反感を覚えましたが、今となっては、その言葉の意味が胸に突き刺さるように感じます。現在は、野田佳彦さん、鹿野道彦農相、樽床伸二さん、小沢鋭仁さんの名前が上がっています。このうち、野田さん、鹿野さん、樽床さんの3人は、新進党に最初から最後までいた人です。憲政史上初めて、第95代首相は、新進党籍があった人となれば個人的にうれしいです。一方、小沢鋭仁さんは、民主党では、小沢(一)さん、岡田さんに続き、前原さんと並ぶほど、政治資金(個人・団体献金、パーティ券)の集金力がある人です。年齢を考えたら、ここで小沢(鋭)さんが出馬するのは当然でしょう。政治部の記者はそれがなぜかを、総務省収支公開室の資料(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/101130/22620056.pdf)などで調べておくといいのではないでしょうか。私は小沢(鋭)さんは金融に強いから、パーティ券が売れるんだと推し量っています。それと小沢グループは相変わらず人を見る目がないですね。鹿野さんは大変な威張り屋で、菅さんよりも怒鳴りますよ。おそらく小沢グループは鹿野さんと会話をしたことがないんでしょう。小沢グループには鹿野さんの秘書がいるし、農水省には鹿野さんではなく「影の大臣」と呼ばれる政務三役が他にいますから、農水官僚に友達がいれば、その理由を聞いたらいいと思います。ただ、鹿野農相だったからこそ、JA・JFと民主党政権の距離が縮まり、「3・11」後のスピーディーな対応につながったことは間違いありませんし、おそらく「新進党鹿野派」ということから、鹿野さんという名前が上がっているのでしょうから、私は元新進党の党員としてそのことには感謝します。それと仮に野田首相となると、福田康夫首相の早稲田大学政治経済学部経済学科につづいて、今度は早稲田大学政治経済学部政治学科から初の首相となるので、属人的には、うれしいです。もちろん首相にはなりませんでしたが、政治学科の前身の卒業生である、“孤高のパトリオット”「粛軍演説」の斎藤隆夫先生が憲政史上もっとも偉大な政治家であるとの考えは変わりません。とにもかくにも、「宰相の器」というものをよく考えてください。民主党の議員は与党としては馬鹿すぎます。サラリーマン家庭の田舎者が国会議員になると、ここまで驕り、ここまで先が見通せないものなのか、と慄然としている、というのが私の正直な感想です。民主党から乞食党に改名した方がいいのではないかと感じます。今度失敗したら、ホントウに終わりです。

 閑話休題。

 いずれにしろ、特例公債法案です。それと、ちょっと取材が甘くなってしまっているのですが、自然エネルギーの全量固定価格買い取り法案(177閣51号)は審議入りしていません。

 さあいよいよ、第177通常国会は、正念場を迎えました。

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