民主党が月2回発行している機関紙「プレス民主」の2011年6月17日号に目を見はる記事が載っていました。
政権交代後に、自民党やさきがけで与党の経験がある4世議員の鳩山由紀夫代表と、自民党や新生党や自由党で与党の経験がある2世議員の小沢一郎幹事長の世襲議員グループは、陳情(要望)の党本部幹事長室への一元化をしました。これは英断だと思いますが、いかんせん、世襲議員グループは「家業が政治」なので、独占欲求が強く、自分の権力欲、(おそらく)金銭欲につなげてしまったので、政権交代の希望が失われ、大きく支持率が下がりました。
そこで、2010年6月からは、菅直人さん、枝野幸男さん、岡田克也さん、仙谷由人さん、玄葉光一郎さん、野田佳彦・財務大臣、輿石東・参院議員会長さんらが非世襲議員グループが民主党の舵取りをするようになり、なんとか盛り返してきました。
陳情の一元化は民主党で継続され、陳情要請対応本部ということで、本部長が岡田幹事長、本部長代行が長妻昭・筆頭副幹事長、本部長代理が横光克彦・党組織委員長(47都道府県連のまとめ役)という同じく非世襲議員グループがシステムをつくって、情報を共有しながらやっています。
プレス民主によると、2011年6月9日には、2012年度(平成24年度)本予算(当初予算案)に向けて、予算のつくり方について、都道府県連代表である国会議員への説明会を開いたとの記事。これはおそらく、自民党議員からしたら「そんなことも知らないの?」、「民主党はお子ちゃまだねえ」という内容でしょうが、鳩山・小沢民主党が執行部が独占していた予算に関する情報を、菅・岡田民主党では、都道府県連代表の国会議員(ちなみに岩手は小沢一郎さん)に情報を開示(ディスクロージャー)し、情報を共有する。そして、機関紙にもその内容を載せる。で、この記事には6月~7月は「地方自治体や経済団体などが政府・与党に予算要望などを提出」する時期だとされています。ですから、私たち国民も、この6月~7月に予算要望を都道府県連にすれば、平成24年度予算に反映されるかもしれません。こういった情報が、経団連、電事連、日本医師会、JA、日本航空、連合以外にも開かれることは、画期的なことだと思います。
プレス民主によると、長妻さんは「役所は8月末に(財務省主計局に提出する)概算要求を決定する」として、「その前に、自治体、関係団体から概算要求への要望事項を都道府県連としてヒアリングして把握し、その内容を今月中(6月30日までに)にとりまとめて本部に届けてほしい」と述べました。ですから、有権者として予算要望をするのは、ぜひ今週中にでも、各都道府県連に申し出ればいいということになります。
【保存版】予算編成の流れ(プレス民主2011年6月17日号を参考に宮崎信行作成)
●6月 民主党都道府県連が自治体や各種団体にヒアリングして、要望書を民主党本部陳情要請対応本部に提出。
●6月~7月 自治体や経済団体などが政府・与党に予算要望などを提出。
●7月下旬頃 概算要求基準を閣議で了解。財務省が各府省からの概算要求の上限(シーリング)や重点分野などをあらかじめ示す。
●8月 各府省の各局・各課などが自治体各種団体などの要望もふまえて概算要求項目を作成。与党と相談しながら、各府省の概算要求書をまとめて、8月31日まで(昨年の場合)に財務省に提出。
●9月~ 財務省が査定し、年末(12月20日ごろ)までに財務省原案を作成。
●12月下旬ころ。 財務省原案のうち、事務方で決着しない項目などは関係閣僚による政治折衝で決着。以前は与党議員が大臣を送り出す決起集会もあったが、民主党政権では実務的に進む。
●12月24日ころ。予算(政府原案)を閣議決定。歳入面では、税収、各種収入、公債金などの内訳、歳出面では所管府省別、主要経費分野別内訳など予算の概算枠組みが決まる。
●1月下旬 細かな計数整理などをへて予算書ができあがり、国会に提出。
●3月末ころ 予算が成立。
このような流れになります。
ちなみに、今国会では、復旧・復興に関する補正予算案について、自民党が「予算は組んだ首相が執行まで責任をとるべきだ」として、菅首相を交代させるべきだ、と言っています。これは「筋が通った」意見のようで、実はメチャクチャなまるで小沢さんのような理屈です。予算というのは、365日間執行されています。今、執行されている予算は、菅首相が概算要求から政府原案・国会答弁まで手がけて成立させた平成23年度予算であり、5月2日に補正された予算です。ですから、今の予算を執行する責任は、菅首相にあるのだから、菅さんは来年3月31日までは首相をやらなければいけないということになります。自民党はもっともらしいワンフレーズをテレビで繰り返して、国民を誘導する政治はホントウにもうやめてほしい。
で、菅・岡田民主党による、こういった権力の源泉である予算の情報の開示の流れの一環として、1年生議員を幹事長補佐(兼)陳情要請対応本部副本部長補佐にして、さまざまな政策要望を知り、各種団体とも上品な人脈をつくりながら、政務三役と交渉するというオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)による予算編成をしています。
岡田克也幹事長が、2011年6月6日付で幹事長補佐に任命したのは、続投組も含めて次の1年生議員のみなさんです。
網屋信介さん、岡田康裕さん、金森正さん、櫛渕万里さん、小村寿明さん、柴橋正直さん、竹田光明さん、中林美恵子さん、福田衣里子さん、湯原俊二さん、吉川政重さんの各衆院議員と、石橋通宏さん、小西洋之さんの両参院議員の13人です。
また、政権交代後、財務省主計局の「予算・決算」のホームページは格段に見やすくなりましたから、とっつきにくいでしょうが、ぜひ一度見てください。アドレスはhttp://www.mof.go.jp/budget/index.html
です。
で、この「予算・決算」のホームページの使い方ですが、例えば
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2009/index.htm
のページを開いてみて、平成21年度決算書を見ることができます。
このページに含まれる情報から取り出すと、平成21年度(2009年度)の国の財政で、法人税収が6・4兆円だったに対して、所得税は12・9兆円だったことが分かります。ということは、企業の利益にかかる法人税よりも、私たちの給料・所得にかかる税金がおおまかにいって2倍以上だったことになります。歳入では、法人よりも個人の方がはるかに国家財政に貢献しているのですから、歳出だって、経団連、JA、電事連などの法人より、私たち個人の声が、「1票」以外にもっと反映されるべきです。
物言わずに原子力災害に耐える日本国民から、しっかりと物を言い、かつ揚げ足取りでない建設的な議論で、日本列島の財産を細くても長くしっかり、シェア(共有)する日本国民へ。
「政治を国民の手に取り戻す」ーーそれは「私たちの権利」というよりもはや「私たちの義務」になったと思います。非世襲の成り上がり「菅・岡田・枝野・野田政権」の背中を押しましょう。今が踏ん張り所、まさに正念場です。
【追記 2011年6月19日 午後9時半】
一つ大事なことを付け加えないといけません。ここでご紹介した民主党の機関紙「プレス民主」は民主党の党員(年6千円)登録した人が送ってもらえます。なお、サポーター(年2千円)でも、総支部によっては、対応してくれるかもしれません。ぜひ興味のある方は、ゆかりのある、民主党総支部(衆参国会議員など)に電話して、6月中に登録してみてください。選挙区事務所でも、国会事務所でも対応していると思います。いずれにしろ、電話などで問い合わせてみてください。ぜひ6月中の早い時期に。私からもよろしくお願い申しあげます。<(_ _)> 【追記おわり】
参考エントリー)2年前に書いた下のエントリーを書き直しましたので、ご参照下さい。
[写真]渡部恒三さん(本人公式ホームページから)
さあいよいよ、第177通常国会会期末の週を迎えました。しあさって23日(水)が会期末の攻防となりますが、不信任政局の混乱のあおりで、参議院自民党は問責決議案を提出できない状況に追い込まれたもようです。
渡部恒三さんは2011年6月19日(日)放送のTBS「時事放談」に出演しました。
「菅直人首相が2日の民主党代議士会で退陣を表明した」という誤報について、恒三さんは「代議士会での発言なり、記者会見なりを聞いていると菅君は『辞める』なんてヒトコトも言っていないんですよね」、「一定のメドがついた段階で、若い世代に責任を引き継ぐという言葉は、私なんかは(政権交代ある二大政党デモクラシーをめざして衆議院副議長を退任して野党・民主党に入党した)10年前から言っているんですから」としました。そのうえで、「前の総理が今の総理に『ペテン師』だなんて言ってみっともない」、「鳩山君は頭は良くないのは前から知っていたけど、育ちは良いのでコロッとだまされちゃったんだろうな」と、いつもやさしい恒三さんにしては珍しく毒のある表現で、解説しました。司会の御厨貴さんは「それはまあ、複雑な言い回しでおっしゃいましたねえ」と驚いたようす。これは、国対委員長当時の「起き上がりこぼし事件」のように、やんわりと、鳩山由紀夫さんら、菅降ろしに懸命な世襲議員グループ(小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏、田中眞紀子氏、および自民党の谷垣禎一氏、石破茂氏)らに新しい政治への幕開けに協力するよう直接的なメッセージを送ったようにも思えます。「3・11」後の日本では、他国同様に、このような直接的なメッセージが増え、意思決定のスピードが速くなると私は予想しています。
恒三さんは「この国が生きるか、死ぬかのイチバン大事なときに、イチバン国民のみなさんから信用されない(といけない)政治が混迷している。国が滅びるか、滅びないかの大事なときに混迷している。ですから、国民から政治が信用されなければ、どんなに頭の良い奴が上手いこと言ったって(ダメなので)、国民から信用されること(が大事だ)」としました。そして、「来週マスコミ各社の世論調査をするでしょう。そこで、世論が『続けろ』といえば続けていいし、『できるだけ早く辞めてくれ』という世論なら辞めていただく。国民の意見に従う! 」と述べました。
このように、非世襲議員である恒三さんが、国民の世論調査の結果次第で、菅直人さんの首相続投を表明したことから、国会周辺でも菅続投の機運が開けてくることが考えられます。
ちなみになぜ6月2日夕刊に「首相退陣表明」という横見出しが載ってしまったのか。これは、正午からの民主党代議士会がNHKで生中継されていたので、これを本社にいる政治部長・デスク、整理部長らが、「一定のめどがついた段階で、若い世代に責任を引き継ぐ」というのが菅さんの文脈からして、無期限続投表明なのは明らかです。そこで、平河クラブ(自民党記者クラブ)を現場の頂点とする本社詰めの幹部が、“菅語”を理解できずにそのまま見出しをつくってしまったのでしょう。社民連記者クラブなんて初めからありませんからね。そこで引っ込みがつかなくなっているのが、各マスコミの現状ではないでしょうか。現時点では、朝日と産経が引っ込みがつかなくてなっている一方、日経と東京(中日)はかなり軌道修正ができていると考えます。
ところで、TBS「時事放談」はフジ「新報道2001」、NHK「日曜討論」、テレ朝「サンデーフロントライン」「サンデースクランブル」とは違い、収録番組で、金曜日に収録されています。この収録風景は、国会取材の記者に公開されています。そのため、事前に内容の一部が報道されることになりますが、必ず「TBS」という文字を入れて報道するよう、お願いしているようです。なお、私は時事放談をよくエントリー化していますが、すべて実際にテレビ放送を見て、記事にしており、事前に番組収録現場にでかけて取材したことはありません。
時事ドットコム:世論みて進退判断を=民主・渡部氏
民主党の渡部恒三最高顧問は17日、TBSのテレビ番組の収録で、菅直人首相の進退について「今、辞めるべきとか辞めるべきでないということは言わない。(マスコミ)各社の世論調査で続けろという支持が多ければ続けていいし、できるだけ早く辞めてくれという世論なら辞めていただく」と述べた。
渡部氏はこれまで首相は特例公債法案の成立と引き換えに退陣すべきだとしていた。