[写真]衆院議員に初当選した菅直人さん、1980年6月の第36回衆院選、江田五月さんのホームページから引用
菅直人さんが、1年生議員として、衆院科学技術委員会に初登場した29年前に、風力など再生可能エネルギーについて質問し、化石燃料や原子力の問題点を指摘していたことが、国会議事録データベース(国立国会図書館)で分かりました。しかし、質問の最後に自民党政府の中川一郎大臣(科学技術庁長官・原子力担当)から、「(再生可能エネルギーが)あるから、原子力は要らないのではないかということの口実に使う、利用する、乗り過ぎ、悪乗り」をしないようたしなめられていたことも分かりました。
菅さんは14日の参院・東日本大震災復興特別委員会で「何か私が再生可能エネルギーについても最近言い出したかのような表現をされましたが、是非私の一期目のときの議事録を御覧をいただきたいと思います。風トピア計画という、科学技術庁長官、当時の中川一郎さんとの間で私が交わしたやり取り、私は、アメリカのウインドテストセンター、三宅島にあった風力の二つの大きな発電機、東電が持っておりましたが、そして科学技術庁が行っていた風トピア計画、これらを全部自分の目で見ると同時に、国会でもそのことを取り上げておりまして、別に今回のことで急に申し上げ出したわけではありません」と答弁しました。というわけで、実際に調べたら、その通りでした。
これは、1982年(昭和57年)3月23日の衆院・科学技術委員会(当時は常任委員会)でのやりとりです。この第96回国会は鈴木善幸内閣として2度目の通常国会で、参院全国区を廃止する公職選挙法改正のため、94日間延長して会期244日間のロングラン国会でした。また、国会議事堂至近のホテル・ニュージャパンで大規模な火災が起きるなど、平和で経済的に安定した中で、本来ならばしっかりと未来への種まきをしておくべき国会だった、と今から振り返ると思います。
この国会で、菅さんがいた「社民連(江田五月代表)」は同じく野党で金権政治を批判していた「新自由クラブ(河野洋平代表)」と「新自由クラブ・民主連合」という会派を組んでいていたので、小政党ながら13議席あり、そこそこの質問時間は確保できていたようです。そこで、衆院の各委員会が動き出した3月23日の一般質疑に、1年生議員の菅直人さんが颯爽と登場しました。
[議事録から引用はじめ]
私、この科学技術委員会において初めての質問をさせていただくわけですけれども、きょうは「むつ」の話とか原子力発電所の話とかいろいろ議論がなされたようですけれども、私の方からは、日本におけるエネルギー開発の中でのいわゆるソフトエネルギーといいましょうか、またクリーンエネルギーともいいますけれども、そういった開発の中で特に風力の問題、風の問題について二、三お尋ねをし、また、大臣の御見解を伺いたいというふうに思うわけです。
エネルギー問題といいますと、石油がだんだんなくなるのではないか、石油がなくなったときに、まず議論をされるのが原子力ということですけれども、実は地球には毎年大変な量の太陽のエネルギーが降り注いでいて、それがただ直接に太陽の熱というだけではなくて、風を起こしたり波を起こしたり、いろいろな形でこの地球にエネルギーをもたらしている、そういうものをもし人類が使うようになれば、クリーンな形であるだけでなくて、まさに無限に再利用ができるリニューアルエネルギーという言い方もしているようですけれども、再生できるエネルギーになってくると思うわけです。
そういう意味で大臣にまずお伺いしたいのは、こういうエネルギー政策の中において、そうしたソフトエネルギーないしクリーンエネルギー、そういったものの技術開発というものについて、大臣がどのような意欲で取り組もうとされているのか、御見解をお伺いしたいと思います。」
[議事録から引用おわり]
というわけで、私も議事録を見て、驚いたのですが、29年前の1年生議員・菅さんは再生可能エネルギーとしての、風力について質問しています。そして、「私も、この風トピア計画の実施のころから大変関心を持っておりまして」と述べており、これより前から関心を持っていたことは議事録にしっかりと残っていました。私は菅首相を支持しながらも、人としての菅さんは大嘘つきとの前々から思っていたので、14日の菅答弁が事実で驚いてしまいました。
「たとえ石炭にかわったとしても、石炭の液化がうまくいったとしても、石炭エネルギーも化石エネルギーとしていつかはなくなるわけですし、また、原子力発電の問題もいろいろな問題を抱えている。ウランがなくても、核融合になれば無限であると言えば言えますけれども、それもまたいろいろ問題を抱えている」と指摘しました。そのうえで、「もともと、太陽から地球に送られてくるエネルギーを一番いい形で使う技術が開発されれば、まさに未来永劫エネルギー問題については展望が開けてくる」と応用物理学科で学んだ造詣を感じさせる発言をしています。
また、通産省資源エネルギー庁の役人とのやりとりでは、「そうすると、いまの電気事業の法律的な制約の中ではむずかしいということですか」と話、電力業界と自民党政権との構造的な問題に意識を持っていたと思われる発言をしています。
それから、10回連続当選し、非世襲議員ながら内閣総理大臣となった菅さんが、求心力を落とすなかで、1年生時代の青春の思い出である、再生可能エネルギーの法律を仕上げようとしていることは十分に理解できます。
なお、この議事録、中川一郎・大臣が最後の答弁で興味深いことを言っています。
「サンシャインがあるから原子力は要らないのではないかということの口実に使う、利用する、乗り過ぎ、悪乗り、こういうことがないようにひとつぜひ御理解をいただきたい、この辺をお願い申し上げておきます。菅委員にはその点ないと思いますが、(略)」
[国会議事録から引用はじめ]
第96回通常国会 衆議院 科学技術委員会 - 3号
昭和57年(1982年)03月23日
昭和五十七年三月二十三日(火曜日)
午前十時二分開議
出席委員
委員長 近藤 鉄雄君
理事 岸田 文武君 理事 小宮山重四郎君
理事 保利 耕輔君 理事 与謝野 馨君
理事 小林 恒人君 理事 関 晴正君
理事 草川 昭三君 理事 和田 一仁君
上草 義輝君 小沢 一郎君
中村喜四郎君 平沼 赳夫君
前田 正男君 村上 勇君
五十嵐広三君 安井 吉典君
山本 幸一君 吉田 之久君
山原健二郎君 菅 直人君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 中川 一郎君
出席政府委員(略)
委員外の出席者(略)
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
科学技術振興の基本施策に関する件
――――◇―――――
○近藤委員長 これより会議を開きます。
科学技術振興の基本施策に関する件について調査を進めます。
(中略)
○近藤委員長 菅直人君。
○菅委員 私、この科学技術委員会において初めての質問をさせていただくわけですけれども、きょうは「むつ」め話とか原子力発電所の話とかいろいろ議論がなされたようですけれども、私の方からは、日本におけるエネルギー開発の中でのいわゆるソフトエネルギーといいましょうか、またクリーンエネルギーともいいますけれども、そういった開発の中で特に風力の問題、風の問題について二、三お尋ねをし、また、大臣の御見解を伺いたいというふうに思うわけです。
エネルギー問題といいますと、石油がだんだんなくなるのではないか、石油がなくなったときに、まず議論をされるのが原子力ということですけれども、実は地球には毎年大変な量の太陽のエネルギーが降り注いでいて、それがただ直接に太陽の熱というだけではなくて、風を起こしたり波を起こしたり、いろいろな形でこの地球にエネルギーをもたらしている、そういうものをもし人類が使うようになれば、クリーンな形であるだけでなくて、まさに無限に再利用ができるリニューアルエネルギーという言い方もしているようですけれども、再生できるエネルギーになってくると思うわけです。
そういう意味で大臣にまずお伺いしたいのは、こういうエネルギー政策の中において、そうしたソフトエネルギーないしクリーンエネルギー、そういったものの技術開発というものについて、大臣がどのような意欲で取り組もうとされているのか、御見解をお伺いしたいと思います。
○中川国務大臣 代替エネルギーの重要性については御理解いただいておりますが、その中でソフトエネルギーの位置づけということでございます。ソフトエネルギーも、量的にも場合によっては相当大きなものもありますし、いろいろ利点もございます。しかしながら、現在の技術的段階では、季節的な問題だとかあるいは時間的な問題だとか、一カ所での発電量というものがきわめて限られる、あるいはコストが高い等々、現段階で大量のエネルギーとして使うことにはまだ定着しない、これはひとりわが国のみならず世界的な傾向でございまして、現段階では石炭とかあるいは天然ガス、並んでやはりコストの面、実用的な面では原子力ではなかろうか、こう言われております。
ただ、このソフトエネルギー、風力を中心にして無視していいものかというとそうではない。これはやはり長期的なエネルギーとして十分関心を持っていかなければいけない、こういうことについては間違いのないことだと存じます。そこで、研究予算につきましても、自然エネルギー分野の拡充のために昭和五十四年度では八十億円、五十六年度では二百二十三億円、五十七年度予算でも二百四十三億円というものを計上いたしまして取り組んでおる次第でございます。
ちなみに私も、科学技術庁が委託をして風力の研究をいたしておるのを、たしか石川県でしたか行って見てまいりましたが、一基一キロワット程度ということでございまして、まだまだ当面はむずかしいのではないかと思いますが、粘り強く研究することについて、そういった基本もありますので、努力はしていきたいと思っております。
○菅委員 半ば積極的であり、半ば消極的な回答だったように思うのですけれども、私は最初に申し上げたように、このエネルギー、特にこうしたソフトエネルギーの開発というのは、五年、十年の問題であるという以上に、ある意味では人類がこれから先永久に抱えている問題の解決の一つの大きな可能性があるんじゃないか。
たとえ石炭にかわったとしても、石炭の液化がうまくいったとしても、石炭エネルギーも化石エネルギーとしていつかはなくなるわけですし、また、原子力発電の問題もいろいろな問題を抱えている。ウランがなくても、核融合になれば無限であると言えば言えますけれども、それもまたいろいろ問題を抱えている。もともと、太陽から地球に送られてくるエネルギーを一番いい形で使う技術が開発されれば、まさに未来永劫エネルギー問題については展望が開けてくる、そういう意味では、確かに現実の中でのむずかしさはあると思うのですけれども、もう少し日本の政府としても積極的な態度をとっていただけないかというふうに思うわけです。
その中でもう少し具体的な問題をお聞きしたいのですが、科学技術庁として、これまでもクリーンエネルギーの問題、特にきょうは風の問題に的をしぼってみたいのですが、風、風力の利用について過去においても幾つかの研究をされており、現在、将来においてもされようとしているように聞いておりますけれども、その概要をお聞かせいただきたいと思います。
(中略)
○菅委員 あわせて、きょう資源エネルギー庁の方にもおいでいただいていますので、資源エネルギー庁関係で行われているクリーンエネルギーの計画、特に風力について、いまの現況なり過去の実績なりの概要をお知らせいただきたいと思います。
○清木説明員 通産省で実施しております風力の研究開発につきまして、特にサンシャイン計画の関係の風力の開発について御説明させていただきます。(略)
○菅委員 科学技術庁にもう一遍戻りたいのですけれども、先ほど風トピア計画の話をしていただいたのですが、私も、この風トピア計画の実施のころから大変関心を持っておりまして、たしか、三カ所において八基ですか、風車を設置されていろいろとやられてみた。たしか、このときの実験といいましょうか実証実験は、いまも言われたように比較的小さい、一キロから二キロワット程度の発電についてやられたと思うのですけれども、ここに、いろいろ調査結果の概要とかというのが出ているわけですけれども、この内容が、これからの可能性があるという評価だったのか、いや、これはいろいろやってみたけれどもなかなかうまくいかないという評価だったのか。せっかくなさった風トピア計画の結果と、それから次に、いま言われました二千キロワット程度の風力の実験とがどういう形でつながっているのか、そのあたりについてはどうですか。
○下邨政府委員 風トピア計画につきましては、御指摘のように三カ所で行いました。愛知県の武豊町とそれから群馬県の安中市と石川県の金沢市、それぞれ条件の違います三カ所で行いました。温室の冷暖房に使うとか、電気自動車の充電に使うとか、あるいは養魚水槽の加温とか、誘ガ灯の点灯、そういうものに使うというようなことで検討したわけでございます。(略)
○菅委員 少し細かい内容に入りますけれども、私もきょう、ちょうどここへ来る途中、部屋で「フォト」という、これは政府関係のあれだと思いますが、四月一日号に「春風にアイデア風車花ざかり」と書いて、あちこちの風車が出ていまして、大体小型の風車を使っていろいろやっておられる。
それで、大臣の北海道でも、昔から山田さんという人が開発をした風車が幾つか、もう五十年くらい前から使われていて、それが五十年後にも動いていたというので、いまから数年前にも何かテレビのカメラが入ったり、いろいろあるようでして、私、この風力について、きょうの質問に当たっていろいろと準備をしたときに、この風トピア計画では非常に小さい風車を使われているわけですね。それはそれなりに、いまの話でもわかるように機能した。確かに、一つ当たりのエネルギーの出る量はそれほど膨大ではないけれども、まあコンパクトなもので言えば、それなりに機能した。部分的には、特に離島とか、配線がしにくいようなところでは、経済性も、限られた場所ですけれども十分あり得るのじゃないか。
それが、次の計画になっていま言われていた二十キロ級の計画になると、今度は非常に大きなブレードを使った、いわゆる風車を使った計画になっている。サンシャイン計画の中身をいろいろ聞いてみますと、これまた三十メートル近い風車を使ってやっている。実は、私も二年ほど前にアメリカのデンバーにあるウインドテストセンターというところで幾つかの風車を見てきたのですけれども、確かに、大きい風車である程度機能しているところもあるようですが、逆に、小さな風車をもっとたくさんつくるようなやり方があるのじゃないだろうか。これは専門的な議論になってしまいますと私もよくわかりませんけれども、たとえば、一つだけそのポイントを挙げてみますと、この風トピア計画のときの風力の強さというのは、大体どのくらいの平均風力だったということになっていますか、ちょっと質問途中ですが……。
(中略)
○菅委員 そうすると、いまの電気事業の法律的な制約の中ではむずかしいということですか。それともいまでも可能だということですか。
(中略)
○菅委員 (略)時間もほとんどありませんので、もう一度最後に大臣に伺いたい。
これは科学技術庁には限りませんけれども、たとえば石油代替エネルギー法などを見ていても、または石油代替エネルギーの開発にかける国の補助金の総額とかにしてみても、原子力にある程度の費用をかけることそれ自体は、科学の進歩のために危険性をいろいろ除去する上でも必要かと思いますけれども、もう一つの道であるこういった自然エネルギーの道が、先ほど言われた五十五年で八十七億ですか、五十六年で二百二十三億、五十七年で二百四十三億なんといったら、これがどの程度の大きさか大臣はよく御存じだと思います。まさに微々たるものでして、決して相当力を注いでいると言えないと思うのですけれども、科学技術庁の長官として、こういったことについてこれからさらに大いにがんばりたいとか、何かそういった大臣の御意見を伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
(中略)
○中川国務大臣 非常に外国のことも勉強されまして、いろいろと御提起をいただきまして、まことにありがとうございました。
ただ、金額をもって力の入れ方を判断していただいても、御承知のように原子力ということになれば非常に高度の技術が必要である、したがって、研究費もかさまなければならないものである。風力その他については、原理その他はもう大体わかっておりまして、あとは実用化するのに低コストになるためにはどうする、あるいはいま言ったような電気の貯蔵というのですか、使わないときの電気をどうするというような問題もありますので、これから研究していくことについてはやぶさかでなく、金額も二・八倍とかふやしているわけでありますから、防衛費じゃないけれども突出をいたしておりまして、その辺も理解していただきたいし、せっかくの御提言ですから、一生懸命努力していきたいと思います。
ただ、ここでお願いしておきたいのは、サンシャインがあるから原子力は要らないのではないかということの口実に使う、利用する、乗り過ぎ、悪乗り、こういうことがないようにひとつぜひ御理解をいただきたい、この辺をお願い申し上げておきます。
菅委員にはその点ないと思いますが、これも必要だが、そういうこともありますということも知っていただきたい。非常に高い両面ということでございますから、その点は高く評価いたしておるところでございます。
○菅委員 終わりにしようと思ったんですが、私の質問にないことまで言っていただきましたので……。
私は、基本的には、こういう科学技術というのはツーウエー、スリーウエーでいいと思うのです。ただ、やはりそのときのバランスというものがあって、九九・九%こちらだけで、あと〇・一%――それこそ私からも大臣に申し上げたいのは、少しばかり費用をつけているからといって、そういった自然エネルギーについても力を入れてないのではないのだという言いわけに使われないようにぜひお願いをして、質問を終わらせていただきたいと思います。
○近藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十二分散会
[国会議事録から引用おわり]