ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

温泉合宿で一致団結「参議院不要論」を吹っ飛ばせ 参議院民主党

2011年10月19日 12時16分32秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

 冒頭ちょっとタイトルと離れますが、電事連が再生エネの全量買い取り法成立で、都道府県税の減税を要求していることが分かりました。

 盗っ人猛々しいとはこのことのことです。

 電気事業連合会(電事連、関西電力社長の八木誠会長)が第177通常国会で修正可決・成立した「再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法」に関連して、2011年10月18日、公明党に対して、同法成立にもとづく法人事業税の減免措置を要望していたことが、19日付公明新聞で報じられました。事業税は都道府県税であり、発電・送電・配電が一致した電事連加盟電力会社の社員は日本のどこにでるので集票マシンとして均一した力を各地域で持っています。電力総連などの地方議員は電力会社やその子会社の現役社員であることも多く、ある程度都道府県庁には影響力があります。そして、事業税といっても、地方税法で決まるので、国が租税特別措置で、再生エネの全量固定価格買い取りで、都道府県税をまけてもらおうという考えです。情けないことに、「粗特の透明化とシンプル化」を訴えていた民主党が、政権獲得後に国会議員になった人がパーティー券を2枚ぐらい買ってもらい(会場費を除いた手取りは2万円ぐらいか?)、昨年11月、粗特(免税)の継続を声高に叫ぶようになりました。2万円で買われる花魁より安い民主党議員。そもそも前回の選挙では支持を受けていないし、各種団体の支持で小選挙区で51%の得票率を稼げるでしょうか。運動員を1~3人くらい送ってもらって、「選挙の体裁を整える」のが関の山。これから11月の税制調査会で、粗特の継続に関する圧力が高まります。ただ、外資系企業が日本を避けるのは、法人税の税率ではなく、複雑な租税特別措置と規制の手続きの多さに嫌気をさしている日本を回避しているのが実態のようです。粗特透明化法(古川法)の状況の確認と、粗特の順次廃止が日本経済の復活につながります。ただ、新聞では、東北の復興特区の企業の人件費を税額控除するという構想が報じられましたが、これは、全国的に、企業が人件費を税額控除する租税特別措置をしたらいいと思います。

 さて、民主党・新緑風会は、臨時国会が始まる前日と前々日、1泊2日の温泉合宿を開きました。これは昭和28年(1953年)の「国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律」にもとづき、所属議員1人あたり65万円(制度発足当時は1万円)を毎月各会派に支給するもので、参議院の全会派に対して18億8760万円が、財務省→参議院→各会派に交付されています。予算コードは「02-011-95012-2123-11」です。

 このお金を使って、民主党・新緑風会(輿石東会長)は、岳温泉(だけおんせん)で温泉合宿を開きました。午後1時集合で、参議院の民主党から出ている4大臣がSPを従えてあいさつ。その後の研修会では平野復興相(民主党・新緑風会参院議員)らが講師をし、被災地選出の同僚が経過報告をし、公式行事は午後5時40分で終了。会議はマスコミフルオープンなので、番記者は行かないといけないですが、平日に仕事で温泉でリフレッシュできて良かったのではないでしょうか。そのためか、温泉合宿を揶揄する記事はみかけません。この旅館は露天風呂も個室も含めて複数あり、室内プールもある大規模な施設です。旅行の情報・予約サイトによると、震災前でも価格は1万円~1万1000円台の利用者が多くリーズナブル。また施設が大きいので、小さいお子さん連れでも安心して利用できると好評でした。ホテルというのは装置産業であり、稼働率(客室稼働率)が下がるとその分粗利益が全部吹っ飛びます。装置産業であるので借入金があるはずですから、大変ご苦労されていると拝察します。

 で、これは合計5時間の研修会がすべてフルオープンで、野田首相(衆院議員)のほか、輿石幹事長、前田国交相、市川防衛相、平野復興相、蓮舫公務員制度改革担当相の合計6人のSP付きの政治家が話します。ことしになってから、TV局政治部で経費節減のため、地方出張を原則認めていないようで、松本龍復興相の宮城県庁内での知事訪問も、現地の放送局が取材・放送した事例がありました。しかし、これは東京政治部の番記者の出張を、上司も認めないわけにはいかないでしょう。そして総理があいさつすることも異例で、輿石さんが万事上手いとしかいいようがありません。ただ、フルオープンとはいえ、会場内からの立ちレポ(TVニュースの生中継でのリポート)は控えるよう地善意呼びかけましたが、そこまでやりますかね。

 民主党ホームページに載っている、この日の輿石民主党幹事長(兼)民主党・新緑風会会長の表情も、権力の絶頂にいるうれしさにあふれているように感じます。

 
[写真]温泉合宿であいさつする輿石東さん。


[写真]仲間内の温泉合宿で講師を務めた平野復興相。



[写真]あいさつする「民主党・新緑風会」参院議員で公務員制度改革担当大臣の蓮舫さん(民主党本部公式ホームページから)

 ただ、風評被害で苦労しているようで、民主党・新緑風会は「今回は被災地復興支援の一環として、風評被害に苦しんでいる福島県で開催し、研修会翌日には会派議員による被害地視察を予定しています」としており、宮城県コースは石巻市役所などを訪れ、午後4時過ぎに東北新幹線ターミナル着、福島県コースは、浪江町役場二本松事務所などを訪れ、2時10分に新幹線駅着と、じっくりと視察することになっています。例年は軽井沢で開かれることが多いのですが、「今回は福島」ということになりました。まったく関係ないのですが、以前、ある宗教団体の熱心な信者とされる夫婦と息子が、東京・城北の建設会社の社員寮で住み込みで働いていたのですが、両親が朝早く、昼間眠いので、息子に仕事の分担を依頼したことに憤慨し、両親を殺害。両親のお金を持って、テレビで見た憧れの軽井沢のホテルに行ったところ、そこで初めて軽井沢には温泉がないことを知り、失意のうちに、群馬・草津温泉に向かい、人生初の温泉を堪能。その後、警視庁の捜査員がホテルの部屋をノックし、「お巡りさんだけど、なんで来たか分かるよね?」と言って、逮捕された事件を、なぜ思い出しました。

 また二本松市は、井上ひさしさんの『吉里吉里人(きりきりじん)』のモデルとされ、バブル期に、独立国ムードにあやかり、独自の国会議事堂をつくった、というwikipediaの記述も大変興味深く読みました。

 温泉合宿と、個室での研修会、番記者を交えての温泉、バスでの視察と、ありふれた手法でつくりあげた輿石さんだけの王国。あすからの国会で中間取りまとめをする参院選挙制度改革では、西岡議長が、9ブロック大選挙区制(1票方式)、公明党が11ブロック定数42削減、社民党が定数そのままながらもやはり11ブロックと各党が「1票制」を主張しており、民主党の選挙区は鳥取県と島根県などの10県の合区(がっく)による「1票の格差見直し」と比例の「2票制」を主張しています。これは現行制度で第1会派なのが民主党ですから、見直しに否定的なのは当然です。しかし、やはり公明党案に比べると、説得力に乏しく、衆参一体改革も必要になります。

 以下は、現在の参議院の議席数です。
 

 民自公の3党(+国民新党)のスキームなら、211議席になります。しかし、来年の通常国会辺りから自民党内で抵抗野党的な動きが出てくるでしょうし、国民新党は郵政改革法案(176閣法1~3号)が成立すれば、政権を利用しない方向性に行くかも知れません。そうすると、3党協議の枠組みでは、民主党・新緑風会の106議席と、公明党の19議席の合わせて125議席で、過半数の122議席を3議席上回るだけになります。「社会民主党・護憲連合」の4議席を入れても、129議席です。かりに民主党・新緑風会の小沢グループが3~5人以上造反すると、一気に議案の採決が本会議場でひっくり返ることになります。

 産別、県連、各種団体のいずれか一つの推薦だけで当選している民主党参議院議員に言論の自由と人権はありません。温泉合宿で一致団結して、通常国会おわりまで一切の造反をゆるしてはなりません。そうでなければ、公明党は民主党を信用して3党協議にのぞめなくなります。

 衆参憲法審査会が179臨時国会でスタートする見通しとなり、憲法改正による参議院廃止論も浮上するでしょう。参議院にとってもまさに正念場であり、国民の間に高まる参議院不要論を一致団結して粉砕するために、輿石さんの力がもうしばらく必要となります。

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