新聞の見出しや有権者間の議論のなかで「TPP参加の是非」が語られていますが、これは「TPP交渉への参加の是非」ですから。だいぶ意味が違います。JAも農業者をそそのかして求心力を高めるのは止めてもらいたいです。まして、これだけ、世界の経済・財政、そして貨幣経済、管理通貨制度(不換紙幣)、変動為替相場および国債が不安定というか、不透明な時代、ある意味、自分の所とご近所と親戚と直売所のやりとりで自給自足できている農業者はいまもっとも憧れの的だと考えますよ。
自民党総裁の谷垣禎一・影の首相は、2011年10月15日のテレ東「田勢康弘の週刊ニュース新書」に出演。来月11日・12日のハワイでのAPECが期限となるTPP交渉への参加について、「TPPは情報が少ない。協議を全然しなくていいのかというとそうではなく、協議をしながら日本の姿勢を考えていく」と述べ、TPP(交渉)に参加すべきだと明言しました。
谷垣さんは「農業だけが(JAの反対運動で)取り上げられているが、24の分科会があるんですね。与野党で、国論を収斂させていかないといけませんが、外交や安保の関係も考えれば参加しないわけにはいきません」と述べ、同党の衆院議員で元外相の高村正彦さん(山口1区)に取り扱いをゆだねているとしました。
私はテレビを見ていて、谷垣さんの発言にはかなり驚きました。
民主党内では、小沢グループから、「TPP反対論」が出ていますが、谷垣さんは民主党の財政・経済政策について、「民主党をみていると、(歳出の)分配だけなんですね。どうやって日本が自分の脚で立っていくのか。日本の良いところを引き出していかないといけない」と述べました。
なお、復興債の償還のための増税と、3次補正予算(案)とその関連法案に書き込まれるJT(日本たばこ株式会社)の株式売却にからめて「葉たばこ生産農家はJTが全額買い入れることになっており、たばこ増税とJT株売却は認められない」とし、自民党の事情をあっさり認めながら、反論しました。ちなみに、番組では、谷垣さんが東大に8年間通ったことや、「大将なんだから」などをボードで示して、楽しく人柄を紹介しました。
ところで、公明党は、斉藤鉄夫・幹事長代行はTPP(交渉)参加に前向きな姿勢をみせており、たばこ税については、石井啓一政調会長が「けっして否定的ではない。むしろ賛成の方が多い」と述べました。これは公明党が創価学会に頼らない「マイ獲得運動」により、農業者の支持者を増やしており、葉たばこ農家が被災地に多いことから、強硬な反対論があるものの、党としては賛成の方向性だと示したものだと考えられます。
なお、再選した連合会長の古賀伸明さんら新執行部は14日、公明党を表敬訪問。公明党代表の山口那津男さんが「政策実現に向けてあるべき姿をともどもに追及していきたい」と語ると、「働くことを軸とする安心社会の実現をめざす」と述べました。15日付公明新聞が伝えています。
小沢グループの孤立感が高まってきました。
自給自足の農家か、それともビニールハウス(とは限らないけど)で高付加価値農産品をつくるか。設備投資はJAバンクか、あるいは政策金融、地域金融が使えるでしょう。戸別所得補償の品目であるコメを集荷業者、もちろんJAに限りませんが、集荷業者に全部出荷して、そのお金で、JAコープでもあるいは「コメリ」でもいいですが、米国産の安いお米を買う。まあ、太平洋を渡ってきたお米が輸送コストを加えて、日本産米より安くなるとも思えないんですが、盆暮れ用とそれ以外で違うお米でもいいでしょう。それと、農業者のみなさん、JAの言うままに、ハチマキして、シュプレヒコールをあげても、万歳するのは、JAの役職員だけですよ。私(37歳)たちの将来を奪わないでください。
第179臨時国会は、2011年(平成23年)10月20日(木)に召集し、28日(金)に第3次補正予算案提出ということで、この21日(金)から27日(木)までの合計5営業日に国会は何をするのかと思っていたら、衆参の委員会で大臣の所信聴取と一般質疑をやるようです。
私としては6月1日の不信任案提出からの一連の政治空白がまだまだ続いているようにも感じます。各委員会で、新閣僚が所信表明し、それに対する各党委員の一般質疑をすることを「店開き」と呼ぶようですが、東日本大震災から7ヶ月経って「店開き」をしている場合でしょうか。やはり6月の不信任政局への憤りは今もあります。ひょっとして、震災・原子力災害で、衆議院議員まで不安で心が落ち着かなかったことによる群集心理だったとすれば、失ったものはあまりに大きい。しかし、前に進むしかありません。
政権政党・民主党があまりにも、党内での会議が多すぎるのですが、「国会での質問のチャンスが少ない」と言っていた政府外議員が、何でも聞ける一般質疑に起用されると、あまり大したことがない質疑をしているケースがたまにあります。もちろんできる人は、所管外の府省まで呼んで、しっかり答弁を引き出している。衆院議員にとっては、正念場ということになりそうです。
第179臨時国会では、自民党も人事異動で、各委員会の理事や委員を変えてきます。政権交代をめざしながらも、なかなかベテランと中堅・若手がしっくりいかない自民党。そういう意味では私は谷垣禎一総裁というのは、時機にピッタリだと思うのですが、どうも日本ではリーダーを好き嫌いで論じる有権者が多いようです。ただ、来年9月の総裁選に向けて、どういう布陣を敷くか見所です。そして、来年の通常国会もおしりに参院選がないじっくりやれる国会です。おそらく自民党は平成24年度の赤字国債を発行する法案などを「人質」にして、早期の解散確約の見返りに採決に応じる作戦をとる可能性もあるでしょう。首相の野田佳彦さん、財務大臣の安住淳さんがストレスに耐え、どう対処するかカギとなりそうです。
安住財務大臣(宮城5区石巻選出)は、14日の閣議後記者会見で、閣僚の資産公開について聞かれ、「クルマ2台流されましたから」「自宅兼事務所も来年、(確定申告で)雑損控除を財務省(の国税庁)に申し込もうと思います」と冗談めかして答えました。また、会見では触れませんでしたが、資産公開の対象でない親名義と思われる実家も浸水で全壊したはずです。本来は冗談めかして言えるような話ではありませんが、「頼れるアニキ」の精神力には脱帽します。そして、第178臨時国会の参・予算委での公明党の松あきらさんの「女性特有の病気」に関する答弁でも、自身のプライベートに踏み込んで答弁し、野田総理とともに法案に前向きだとされました。こういう、安住さんが国民にアタマを下げてお願いすれば、税制に関する各種の法案も必ず成立させられると信じて疑いません。
安住国対委員長は大変優秀でした。野党時代からテレビ露出の多かった安住さんですから、有権者にも、いろいろな好き嫌いがあるでしょうが、与党国対というものは結果がすべてです。政権交代後の民主党国対委員長では唯一、ずば抜けた成績を残しました。会期中の在任期間がわずか2週間の樽床伸二・国対委員長は評価しようがない面もありますが、安住さんはずば抜けていました。
「週刊ポスト2011年10月7日号」に興味深い記事があり、民主党政権下では、本来与党の仕事である国会日程を今は財務省がにぎっていて、財務官僚によると、「大臣室でやっているのは国会対策の作戦会議です」、「だから国対委員長だった安住さんが初入閣で財務大臣に抜擢されたんです」と話し、同省の官房文書課が国会日程を握り、動かしているとしています。また財務官僚の政界工作部隊は合計100人いるとしていて、勉強会などを通じて、国会議員室に気軽に出入りする関係をつくっているそうです。私もさる懇意にしてもらっている議員事務所にいたら、当時は財務省政務三役だった議員が帰ってきて、おつきの秘書官がすばやく私と名刺交換しました。私がジャーナリストと分かると、嫌そうな顔をして、そのままぴったり付き添って、事務所内の議員室に消えていきました。他に事務所内にいられる国会外の人物の存在を疎ましく感じたのでしょう。週1回定例の勉強会も事務所内でやっているそうです。他の事業官庁の政務三役と、廊下でバッタリ会って話しかけられると、お付きの官僚はニコニコしながら、鞄を持って立っています。財務官僚は他の府省の官僚とは明らかに優秀そうな風情をしており、嫌そうな顔をしてしまうところだけが弱点かもしれませんが、所作からして全然違います。
私は来年の通常国会まで、安住財務省国対を基本的に支持したいと考えます。かなりご批判もあるでしょう。が、①ねじれ国会、②震災対応、③財政難、④世界的な財政・経済の不透明さ、⑤税と社会保障の一体改革法案(消費税率アップ)と⑥復興債償還財源の明確化(すなわち復興増税、法人税と所得税、個人住民税の時限的な上乗せ)の合計6つの課題を考えれば、ぜひ、短くとも半年(来年3月末まで)は、「安住財務省国対」に任せたいと考えます。
すでに財務省国対は動き出していて、その状況証拠があります。それは先の第178臨時国会で、自民党などが成立を迫った3法案。この3法案のなかで、予算所要額が「(初年度)200億円」、「約649億円」、「15億円」の3法案のうち、「15億円の法案」だけが成立したことになります。ここに、「安住財務省国対」によるふるい分けがあったのではないかと感じます。
「東電福島原発事故の調査委員会設置法」(10月7日公布、法律番号は112号)の所要額は15億円。それと、「二重ローン対策法案(株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案)」(177国会参法12号、片山さつきさんら提出)、「東日本大震災に対処するための私学の建物などの災害復旧などの特別措置法案」(177国会参法21号、橋本聖子さんら)の合計3法案(関連を含めると4法案)でした。
その中で、「安住財務省国対」は郵政改革特別法案の修正による可決・成立をめざすことになり、郵政改革特別委員会がにわかに忙しくなりそうです。
大蔵大臣を「頼れるアニキ」と呼んだら失礼に感じられる方もいるかもしれませんが、相当きついでしょうが、安住淳さんに信なくば立たず、期待しています。