【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

政府は国庫債務負担行為の補正で「法務局を前倒し発注する」セコいことは止めろ 補正予算

2013年02月01日 18時38分19秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[写真]民主党を代表して来週火曜日(5日)の本会議で政府の補正予算(案)をただす予定の岸本周平・衆議院議員。

 さきほどのエントリーに続き、政府がきのう(2013年1月31日)提出した平成24年度第1次補正予算(案)。

 とにかく気づいたころに衆議院で採決されちゃいますから、書きたいことは早めにどんどん出さないといけません。「自民党の辞書に国民の文字なし」、「自民党を見たら泥棒と思え」。1兆円単位の話ですから、真剣です!

 週明け4日月曜日の麻生太郎財務大臣(副総理)の衆参両院での財政演説から審議入り。この後、5日6日に衆参本会議で代表質問をしてから衆・予算委員会に入る運びのようです。詳しいことは今後の政治日程にも書きました。民主党からは2回連続小選挙区で勝った岸本周平さんが代表質問に立つようです。

 それにしても、なんで政府は召集日に補正予算案を提出して安倍晋三首相の所信表明と麻生財務相の財政演説をやらなかったのでしょうか。予算書の印刷が間に合わなかったのか。ていねいな国会運営のためなのか。いずれにしろ、野党としては出番が増えるので文句は言えないところです。が、公明党代表の山口那津男さんがきょう1日の参院本会議で「暫定予算が組まれる可能性が極めて高い。公明党の政策であるHIVワクチン、子宮頸がんワクチンが、妊婦検診の無料化が平成25年度から恒久化されるが、これらの恒久措置が4月から確実に自治体で行われることを強く要望します」と総理に釘をさす場面がありました。参院選でおしりが区切られた6月26日の会期末まで時間が少なくなりつつあり、民主党逆転の目は十分にあります。

【補正予算の国庫債務負担行為の補正を見逃すな】

 それはさておき、平成24年度第1次補正予算書のなかで、「国庫債務負担行為」も補正されています。

 「国庫債務負担行為」とは、今年度予算額を超える金額の契約を入札できる枠のことです。なぜできるかというと、政府が保証しているからです。政府が保証しているなら、民間企業は喜んで入札に参加するでしょう。いわゆる緊急経済対策(補正予算)の報道で出てくる「真水」と「事業規模」の違いはこういったことから生まれます。国庫債務負担行為の増額補正は真水にはカウントされませんが、総事業規模にはカウントされます。しかし、国庫が保証している以上、後年度に絶対にお金(税金)を払わなければならないのは当然のことです。国会によるチェックが必要です。

 さて、予算書。

 例えば防衛省ならば、「武器の購入」の国庫債務負担行為が731億円分増額補正され、2538億円になっています。3月中でも、その上限までなら入札で発注していいわけです。「航空機の購入」の国庫債務負担行為は、434億円増額補正され、1830億円までしていいことになりました。防衛省は特別会計がないので、一般会計でこのような対応をしています。つまり、国の予算書は「単年度主義で単式簿記現金主義」ですが、このような「複式簿記的な複数年度会計」も取り込まれているのです。

 文部科学省は「国際核融合実験炉研究開発費」として、12億円から377億円に大幅に増額し、その保証する期間も当初予算書の「24~25年度」から「24年度以降5年間以内」と延ばしました。必要ならばしっかりと本予算で対応して欲しい。

 特別会計でも国庫債務負担行為の増額があります。5年前のガソリン値下げ隊でおなじみ国交省の「道路特会」(社会資本整備特別会計道路整備勘定) では、道路修繕事業の国庫債務負担行為が140億円から293億円に増額して設定されました。「静岡県の国道1号」もあるようですから、新規参入したい方は入札に参加したらどうでしょうか。

 一般会計で法務省は法務局建設費の国庫債務負担行為を33億円から68億円へと増額してもらっています。静岡地方法務局藤枝支局などを前倒し発注するようです。私は「国の出先機関である法務局は基礎自治体に移管すべきだ」というアイディアを持っています。このような債務負担行為の設定は後年度の負担になるので反対です。もちろん景気対策になるのは分かります。だったら、補正でも、国庫債務負担行為ではなく歳出を増額補正する方法もあります。

 話はさかのぼります。過去にこういうことがありました。自民党が第2与党期の最後に組んだ平成21年度第1次補正予算(麻生内閣)の一般会計の「歳出」では法務省の予算を前月比1・2倍になりました。その中には、少年院に太陽光発電設備をもうける事業がありました。補正予算書によると、「低炭素革命を進めるため」だそうです。法務省は人件費中心で予算規模が小さいので、4月にして2割増しになったことになります。まさか概算要求のころに起きた西松事件(現・陸山会事件)に対するご褒美ではないか、と勘ぐる人もいそうです。少なくとも誤解を招きかねない行為です。この補正に関しては、衆院法務委員だった川内博史・民主党鹿児島1区総支部長の激しい追及がありましたが、予算は修正されませんでした。

 話は今に戻ります。法務省は特別会計が廃止されたので、一般会計しかありません。なので防衛省のように、一般会計の国庫債務負担行為で措置してもらったのではないかと勘ぐりたくもなります。スーパー官庁財務省だって現職の課長補佐を東京地検特捜部に逮捕された経験があり、法務省はこわいのです。そういったたぐいの話はこのぐらいにします。

 いずれにしろ、「国庫債務負担行為の修正」は、寄せ木細工である「歳入と歳出」の足し引き算には関係いので、野党で誰かやってみてほしいという感じがします。

 もちろん、速やかな補正予算の成立・執行が必要であることは、私もまったく同感です。

 そして、何よりも私は、こういうことを国会議員も高級官僚も新聞記者も9割以上理解していない。そのことを情報公開したい。その一心です。そして臥薪嘗胆している民主党総支部長にも、4年後の国政復帰後、与党だか野党だか分かりませんが国会議員として予算書を使いこなせるようになっていただきたいのです。

 とにもかくにも予算書を中心とした国会審議が続きます。あたかもドン・キホーテが独り言を日記に書き連ねるような状況が続くかもしれませんが、どうか、ご理解いただき、背中を押してくださいませ。 

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◎自民党政府、平成24年度第1次補正予算書を国会提出 やはり粉飾まがいのインチキ補正だった!

2013年02月01日 11時08分02秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[写真]震災の5日前、沖縄県宮古島を訪れた民主党の岡田克也幹事長(左から2人目)や藤本祐司参院議員(左から4年目)ら、2011年3月6日、藤本祐司さんのホームページから。

 政府(安倍晋三首相、麻生太郎財務相)は2013年1月31日(木)、平成24年度第1次補正予算書を国会に提出しました。

 予算書は次のページで読むことができます。補正はあっという間に衆議院で採決されてしまいますので、私たち有権者もスピーディーに目を通して意見を言う癖をつけたいものです。将来的には国会内で野党の意見もいれて、修正可決するようにしてほしいところです。が、現実として、野党の声を国会で反映させて修正するのは衆参ねじれでも不可能なのが現実です。

平成25年度第1次補正一般会計予算書は、
http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/pdfhdocs/201221001Main.html

平成25年度第1次補正特別会計予算書は、
http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/pdfhdocs/201222001Main.html

平成25年度第1次補正政府関係機関予算書は、
http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/pdfhdocs/201223001Main.html

です。とりあえず目を通して、自民党政府に圧力をかけてください。

【麻生財務相「新年度予算で地方交付税0・4兆円カット」は補正に前倒ししただけのインチキ補正だった】

 古来より、「自民党を見たら泥棒と思え」と言われます。

 麻生太郎財務相は「新年度予算(案)で地方交付税を4000億円カットした」とぬけぬけと記者会見したようですが、補正をみたら、地方交付税交付金が4120億円増額補正されており(特会5ページ)、まさに「15ヶ月予算」そのものの、その分を補正に前倒しただけのインチキ補正であることが明確になりました。「つけかえ」といってもいいでしょう。

 さらにこの原資には、復興特会(東日本大震災復興特別会計)から1213億円を回しています(48ページ)。これについて、補正予算書は「日本経済再生に向けた緊急経済対策の一環として社会インフラの整備や住民の定着促進等を図るための地方交付税交付金財源の交付税及び譲与税配付金特別会計交付税及び譲与税配付金勘定への繰入れ」と説明しており、被災地以外にも回ることは明確です。

 ことしから復興増税が始まっています。このうち復興特別法人税の252億円が復興特会の歳入として増額補正されています(255ページ)。予算書は「法人企業の申告所得が増加するものと見込まれることから、最近までの収入実績等を勘案して増加見込額を算出」したとしています。しかし、これでは被災地にまわるものと思って増税に賛成したのに、「住民の定着促進等を図るため」に山口県下関市役所や、福岡県飯塚市役所に回ってもいいことになります。まさにインチキ補正です。これは、財務省も不本意だと思いますよ。すべては自民党が悪人だからこういうことになるのです。

【大いに評価したい岡田さんがつくった「沖縄県庁への地方一括交付金」の44億円増額補正、25年度以降も大幅増額すべきだ】

 しかし、良い補正ももちろんあります。具体的には、沖縄県庁への地方一括交付金(内閣府主管の一般会計「沖縄振興交付金」)は当初の1574億円から44億円追加され、1618億円へと増額補正されました。これは言うまでもなく、岡田克也さんが心をくだいて、平成23年度予算書から新設されたものです。民主党マニフェストの「地方一括交付金」を沖縄県庁限定で実現したものです。増額補正だけでなく、新年度当初予算でもどーんと増やしていって、やがては沖縄県庁以外の46都道府県にも地方一括交付金を広げればいいのです。 「知事から市町村長への配分のあり方」については、沖縄県庁・県議会と、県内の自治体と議会に分権してしまえばいいのです。財源が移れば責任も移ります。ぜひ、山本一太・沖縄・北方相はがんがん予算をとってほしいです。期待しています!

 民主党執行部のしっかり精査する姿勢は支持します。しかし、それ以前に、補正予算案に関する情報を概算要求段階から、野党第1党と衆参事務局・調査局(室)に提供する姿勢が必要だし、国会での審議のあり方のしくみ作りがもっと必要です。

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