【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

テレビ無し審議で麻生・甘利珍答弁連発 補正予算の一般・しめくくり質疑 民主党反対で衆院通過へ

2013年02月13日 23時49分36秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

【2013年2月13日(水) 衆議院予算委員会 平成24年度第1次補正予算案に対する一般的質疑としめくくり質疑】

 補正予算(案)はあす衆議院を通過することになりました。報道によると、民主党とみんなの党はそれぞれ「組み替え動議(政府に対して撤回のうえ編成替えを求める動議)」を出したうえで、「反対」するようです。短期的にも、長期的にもベストな判断でしょう。日本維新の会は賛成する見通し。これは地方自治体への交付金が多いからでしょう。

 朝9時から一般的質疑、午後からしめくくり質疑があり、山本有二委員長は午後5時5分に質疑の終局を宣言した上で、散会しました。あすは、組み替え動議の趣旨説明のうえで、討論、採決となる見通し。質疑の終局から採決まで一晩おくのは、珍しい例ですが、自民党国対の対応は評価したいところです。

 補正予算の審議は、本会議での財政演説、本会議での代表質問、委員会での趣旨説明、委員会での基本的質疑、集中審議、一般的質疑、参考人質疑、公聴会、しめくくり質疑、討論・採決と続きますが、テレビ中継は、衆参とも委員会での基本的質疑と集中審議だけです。本来はしめくくり質疑も放送してほしいところですが、長年の慣例で始まる時間がずれやすいので、NHKが嫌がっているのでしょう。なお、本予算でもNHKは以前は基本的質疑を3日間放送していましたが、最近は2日間だけで、2日間の間に全会派が一巡するよう質問割りをつくっています。

 前日のNHK入り集中審議で、民主党に埋没感があったこともあってか、長妻昭筆頭理事は玉木雄一郎さんを急遽午前9時に起用。

 玉木さんは「補正予算の正当性に疑いがある」として、麻生太郎財務相に「そもそも補正予算とは何か」と聞きました。麻生財務相が「財政法29条に決まっています」と答弁。ここで玉木さんは「その通りです」と答えました。ところが、この問答の最中、自民党席からせせら笑いが起きており、9時5分に「笑うところじゃないよ」とのヤジが聞こえました。NHKが入らないと、5分間でこの緊張感のなさですが、ヤジを飛ばしたのは自民党の先輩だろうと思いますが、根本的な議論をせせら笑う、日本の各級議会における自民党的体質を見ました。

 玉木さんは財政法29条「緊要となった経費」の「緊要とは命にかかわる公共事業のことだろうと思う。補修・老朽化対策にかかわる補正予算はどのくらいか」とただすと、麻生財務相はその場で暗算しながら「6兆円のうち、1・8兆円だから、1対3ぐらい(3分の1ぐらい)」と答弁すると、玉木さんは「その通り、4分の1ぐらいなんですよ」と引き取りました。しかし、こんなおおざっぱな議論でいいんですかね。

 そして、総務省予算に盛られた「ビッグデータの開発など独立行政法人情報通信研究機構」への500億円の増額補正について、総務省がいくら要求して、財務省がいくら査定したいのか聞くと、500億円要求して、500億円査定したことが分かりました。玉木さんは「たとえば、1割削減しても効率的にやれるかどうか査定しなかったのか」と聞くと、麻生財務大臣は「当然ある程度しているが、補正予算なので甘くなることは否定しない」と答弁しました。

 ここからは玉木節で「私は増税をお願いして当選してきました。とりわけ借金をして歳出を増やすことについては厳しく審査しなければいけません。この内閣には、嫌われ者が一人もいないことが問題点です」とし、テレビ入り時とおなじく、稲田朋美行政改革担当大臣を要求大臣として呼んで、エールを贈りました。 そして「日本を取り戻すが、予算を取り戻す、利権を取り戻すことにならないようにしてほしい」と締めくくりました。

 なお、玉木質問の最中に、おそらく大西健介議員(「サバイバル・ファイブの一人)が、「そうだ」の合いの手を入れていて好感が持てました。その一方、午後のしめくくり質疑で前原誠司・ネクスト財務相が「別の議員が指摘したように」と玉木質問を引用する際に、固有名詞を避けており、2期43歳の玉木さんに対する、7期50歳の前原さんの警戒心を感じさせました。ぜひ、大西さんは玉木さんを守り抜いてほしい。

 その前原質問も、テレビ入りでは「人口が減少すると(貨幣)デフレになるのは当たり前」との珍説を披露してしまいましたが、きょうは立て直してきました。甘利明・経済財政政策担当大臣に「この補正予算(緊急経済対策)の乗数効果はいくつか」と質問すると、甘利さんは「まだ箇所付けも終わっていないので、分からない」と答弁しました。

 少し観点が変わって、「しめくくり質疑」のあり方。以前の呼び名から「締め総(しめくくり総括質疑)」ともよばれる、しめくくり質疑ですが、日本維新の会の新人、重徳和彦(しげとく・かずひこ)さんが、まさに、しめくくり質疑だと感じる面がありました。これは、この1週間にあった質疑と答弁をていねいに振り返っていました。例えば、「山田宏さんが質問した補正により地方が多額の繰り越し(繰越明許)をしなければいけない問題」、「東国原英夫委員が質問した地域の元気臨時交付金ではハード対策(建設公債対象事業)に偏っている問題」、「自民党の小泉進次郎さんが指摘した厚生労働行政の問題」、「きょうの午前中の質疑で、村岡敏英さんが質問した農業の後継者が少ない問題」など、まさにしめくくり質疑でした。

 この後の、みんなの党の杉本かずみさんは、初登場ということもあり、まったく前の質問にふれませんでした。生活の党の村上史好さんは自ら質問した年金交付国債を年金特例債につけかえる補正の前提となる消費税上げについて質疑していました。かなり、しめくくり質疑らしくなりました。

 ただ、このうち、重徳議員は12月16日に当選したばかり。前の期では、まだよく分からない議員をブログ上で「まずは合格」とほめてしまい、その後、反省したことがあります。その後連休明け国会で不正常採決という与党議員としてありえない暴挙にでた後になって、ある人から「過去のエントリーで『まずは合格』褒めているから」とやたら「パーティ券を買ってパーティーに一緒に行こう」としつこく誘われたことがあります。それは過去のエントリであり、今はその議員を軽蔑していると言っているのに、しつこく誘われて困り果てた経験もあります。なので、重徳議員も先週知ったばかりですし、割り引いて読んで頂きたいと考えます。

 もちろん、玉木さんは2期生ですし、初当選前から、上記とは違う親友から「たまきゆういちろうのパーティー行こうよ」とさそわれ、「たまきゆういちろうって誰?」と言って、結局行かなかったのですが、これについては、やはり友の見る目は違うな、無理してでも行けば良かったな、と感じます。

 平成24年度補正予算案はあす衆議院本会議で可決し、参議院に送られます。

 そして、いよいよ来週は、心より尊敬する石井一先生が委員長をつとめる参議院予算委員会で審査されます。20年前の通常国会で自民党を飛び出して政権交代ある政治をめざしてきたシンドバッド石井。院は変われど、いまだに予算委員長の大役です。20年の間に消えていってしまった人たちの分まで、石井委員長意気軒昂です。

 平成25年度本予算審査に関するアイディアは改めて書いていきます。

[お知らせ1 はじめ]

 「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約に努めていますが交通費など諸経費がかかります。

 「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 ご協力ください。どうぞよろしくお願いします。

[お知らせ1 おわり]

[お知らせ2 はじめ]

 会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。

今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますのでご協力下さい。

[お知らせ2 おわり]

[お知らせ3 はじめ]

 このブログは次のホームページを参考にして、記事を作成しています。
 最近の法律・条約(内閣法制局ホームページ)
 衆議院議案(衆議院ホームページ) 
 今国会情報(参議院ホームページ)
 
予算書・決算書データベース(財務省ホームページ)

 衆議院インターネット審議中継
 参議院インターネット審議中継

 国会会議録検索システム(国立国会図書館ホームページ)

 民主党ニュース(民主党ホームページ)
 goo ニュース

[お知らせ3 おわり]