【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

岡田克也さん、衆院定数を平成6年改正公職選挙法の「3対2」に戻す公明党・市川案への回帰を提案

2013年10月03日 23時59分59秒 | 岡田克也、旅の途中

(このエントリーの初投稿日時は、2013年10月5日土曜日の午後11時半で、バックデート)

 岡田克也さんは2013年10月3日(木)、国会内で、自公民3党の衆議院選挙制度改革実務者協議にのぞみました。朝日新聞によると、「定数80削減という従来の案を撤回し、代わりに小選挙区と比例代表をともに減らして3対2の比率を維持する案を提案」しました。

 これは第128通常国会の1994年平成6年の1月29日(土)の両院協議会で、衆議院小選挙区を導入する改正公職選挙法(案)ほか3件(平成6年政治改革4法(案))の協議案として、公明党(Clean Government Party)の市川雄一書記長が提案した「小選挙区300、比例区200」とするとの「市川提案」の原点に戻ろうという考え方です。1996年の第41回衆院選は、自民党と新進党がこの選挙制度でのぞみました。しかし、次の2000年の衆院選から「小選挙区300、比例区180」となっています。これは自自公連立政権で、自由党の小沢一郎代表が、公明党(New Komeito)の冬柴鉄三幹事長に飲ませた提案で、これにより、公明党は、第42、43、44、45回衆院選で連続して議席を減らし続けました。

 岡田さんの提案は、平成6年改正公職選挙法の原点に返るとともに、公明党に対して、経世会、連合(旧同盟)、創価学会による「新進党再結集」のメッセージを送ったものです。

 なお、今回の協議でも、定数削減は実現しても、抜本改革(中選挙区復活)は見送られる見通しです。

[国会会議録から全文引用はじめ]

第128回国会 公職選挙法の一部を改正する法律案外3件両院協議会 第3号
 平成六年一月二十九日(土曜日)
     午後二時三十九分開会
     ―――――――――――――
 出席協議委員
   衆議院
    議 長 市川 雄一君
    副議長 大出  俊君
      野坂 浩賢君     左近 正男君
      渡部 恒三君     石井  一君
      園田 博之君     荒井  聰君
      森本 晃司君     米沢  隆君
   参議院
    議 長 平井 卓志君
    副議長 橋本  敦君
      坂野 重信君     下稲葉耕吉君
      下条進一郎君     関根 則之君
      松浦  功君     村上 正邦君
      山本 富雄君     青島 幸男君
  協議委員外の出席者
   衆議院事務局
         委 員 部 長 川上  均君
         特別委員会第二
         調査室長    田中 宗孝君
   衆議院法制局
         第 一 部 長 内田 正文君
   参議院事務局
         委 員 部 長 貝田 泰雄君
         地方行政委員会
         調査室長    佐藤  勝君
   参議院法制局
         第 四 部 長 天野英太郎君
     ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公職選挙法の一部を改正する法律案
○衆議院議員選挙区画定審議会設置法案
○政治資金規正法の一部を改正する法律案
○政党助成法案
      ――――◇―――――
    〔平井卓志君議長席に着く〕
○議長(平井卓志君) これより公職選挙法の一部を改正する法律案外三件両院協議会を開会いたします。
  国会法第九十条によりまして、本日は、私が両院協議会の議長を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
  両院協議会は、国会法第九十七条の規定により、傍聴を許さないことになっておりますので、協議委員並びに協議会の事務をとる職員以外の方は御退席を願います。
  この際、申し上げます。
  昨日、土井衆議院議長並びに原参議院議長から、両院の協議委員議長及び副議長に対し、両院協議会においてさらに協議を行い、成案を得るよう御要請がございました。
  これを受けまして、本日、開会する運びとなりました。
  この際、市川衆議院協議委員議長から発言を求められておりますので、これを許します。市川雄一君。
○市川雄一君 一昨日の両院協議会の運営におきまして、参議院側の皆様から、協議会をまだ続行すべきであるとの要望がございましたが、私の判断で協議を打ち切りましたことはいささか配慮が足らなかったと存じ、ここに遺憾の意を表します。
  本協議会の重要性にかんがみ、今後の運営につきましては、よき先例となるよう努力いたします。
○議長(平井卓志君) 他に御発言があれば、順次御発言を願います。村上正邦君。
○村上正邦君 協議会の審議を顧みれば、与党側が示した修正案について我々自由民主党は誠意を持って検討し、疑問点についてただしてきました。これに対して与党側の皆さんは、自民党が示した対案についてほとんど門前払いのごとく退け協議会を打ち切ったことは、成案をまとめようという誠意さえ与党側になかったと言わざるを得ない。このことをしっかりひとつ皆さん反省をしていただきたい。
  そもそも当協議会は、二院制のもとに、憲法に基づいて、衆参両院の代表が国民に開かれた場で協議を行い、成案を目指すことが目的であるが、いわゆるトップ会談という密室において実質的な修正案の詰めが行われ、当協議会の協議が形だけのものとなったことについて、私は重ねて遺憾の意を表したい。これは、協議会のメンバー、皆さん方もそういうお考えにお立ちになっている、私はこう理解をいたします。
  次に、市川議長、あなたに申し上げたい。
  あなたは、かねてより参議院軽視や参議院の運営に介入するなどの発言があったと伝えられており、当協議会冒頭において、運営については公正円満に行うよう要望いたしました。にもかかわらず、去る二十七日の両院協議会における運営、特に、双方より修正案の提示を受けて、議論が多く残っているのに一方的、独断的にこれを打ち切ったことは、当協議会の議長としてその適格性に欠けるものである。
  本日の会議冒頭で、ただいまあなた自身もその反省に立って陳謝の意の表明はあったが、その責任は極めて重い。あなたは、二十七日、協議会を打ち切ることを宣言するに当たり、ここが大事なことです、議長としての責任において打ち切る、こう発言したが、議長においての責任というその責任はどういうことを言うのか。私は、そのことについて、あなたに重ねてその議長においての責任ということについてお聞きしたい。私は、政治責任とはその職を賭すことが政治責任であると思います。平たく言えば、与党側の代表として議長職を辞任することが政治責任だと思います。
  お話に聞けば、両議長で、陳謝することにおいてこの協議会をお受けするというお話があった、こうお聞きいたしておりますが、しかし、それは市川議長、甘えというものである。あなたが本当に自分の言った言葉に責任を持つのなら、与党側は議長をおかえになられてこの協議会に臨むべきである。私は、あえてさらに言うならば、議長をお取りかえにならなければ退席したい、こういう気持ちでおることを申し上げ、あなたの弁明をお待ちいたします。
  以上です。
  議長、発言を求めます。
○議長(平井卓志君) 御発言ございますか。
○村上正邦君 議長、あなたの発言がなければ私は退席します。
○市川雄一君 ただいまの村上正邦さんの御発言の趣旨を重く受けとめました。
○議長(平井卓志君) 橋本敦君。
○橋本敦君 私も冒頭、議事進行の関連で発言をお許しいただきたいと思います。
  一月二十七日の協議会におきまして、先ほど市川議長じきじきにお話がありましたとおり、成案を得る見込みがないものとして、議長の責任で終局をする旨の宣言をされたと私どもは理解をいたしました。そのことによって、成案を得る見込みがないものとして、この協議会は法的に言えばその任務は終了したということが宣言をされて、したがってそこで散会をするというのが本来的な筋であろうと思うわけであります。そのことを予定して、衆参の議長からそれぞれの議長にその旨のお話があり、本会議での国会法に基づく手続を待つのみであったという状況であります。
  それが、土井議長のお話で預かりとなったか保留となったか、要するにそういう事態となったことからこの再会議ということになったわけでありますが、それは土井議長等の高度の政治的御判断であったとしても、法律的には終局をしたものとして処理をする。したがって、この協議会の再開というのは、そのことをどうクリアしても法的にはあり得ないのではないかという重大な疑念を私は持っているわけであります。
  そういう趣旨で、この発言を冒頭にさせていただいたわけでありますが、再会議が可能であるというようになるには、先ほど市川議長が議長として遺憾の意を表明されただけではこの法的問題は解消しないのではないかという重大な疑念を持っておるのであります。この点について市川議長の御見解が特にありますれば伺いたいと思いますし、私としてはそういう意味で、この協議会の再開そのものはまずその点で賛成することができないという意見であります。
○議長(平井卓志君) 御発言ありますか。
○市川雄一君 橋本敦さんの御発言、重く受けとめます。
  この二十七日の協議会が終わりまして、私と大出副議長で、土井議長、鯨岡副議長のところへ報告に参りました。午後一時から始まり十一時半に至る協議会の経過を克明に御報告を申し上げました。
  土井議長の方から、あるいは鯨岡副議長の方から、両院協議会の枠組みは残っている、したがって、二十八日――二十七日の夜の話ですから、二十八日、翌日になればまた何かいい案が生まれて、両院協議会がうまくいくかもわからない、したがってその点を十分念頭に置いてください、こういう御趣旨の御発言がございました。手続的には、私と平井議長が衆参の本会議でその旨報告をするまでの間は両院協議会の枠組みが残っておるという、私はそのときの理解でございました。したがって、土井議長、鯨岡副議長の事態の深刻性をかんがみての私たちに対する御助言に対しては、よくその趣旨は理解いたしました、こう申し上げまして帰ってまいったところでございます。
  もし仮に、大変恐縮ですが、議長、副議長がおっしゃるようなよき案なるものが生まれるとしたら、それは総理あるいは自民党の河野総裁のトップ会談という、そういうトップのレベルでのかなり高度のお話し合いがあり、そこで何らかの合意が得られるというようなことがあれば、議長、副議長のおっしゃるような可能性もあるかもしれません、私たちも引き続き努力いたしますが、大変恐れ多いことですが、議長、副議長におかれましてもぜひ御努力を願えればありがたい、重ねて議長、副議長の御助言は念頭に置いてただいまから帰ります、ありがとうございましたと、こういうごあいさつを申し上げまして私どもは帰ってきた次第でございます。
  したがって、ただいま平井議長から、衆参両院の議長、副議長の要請により本日の両院協議会が開催された旨お話がございましたので、私はその旨を了として、きょう実は出席をさせていただいた次第でございます。
  ただ、重ねて申し上げますが、一昨日の運営につきましては、心から遺憾の意を表したいと思います。
  以上でございます。
○議長(平井卓志君) 青島幸男君。
○青島幸男君 冒頭、衆議院側の議長、市川さんから、陳謝と申しますか遺憾の意が表されました。ここでくだくだと振り返ったことを申し上げるつもりはありませんが、あの際、私もかなり疑問に思ったのですが、市川議長が、私の責任においてこれ以上話を進めてももう進展がないから打ち切りたい、こうおっしゃられた、あの言葉はかなり重いものであったと思います。
  あの際、私が考えましたのは、あそこでああいうふうなおっしゃり方をせずに、我が方の参議院の議長であります平井議長とお話し合いの上で、ここまで来て話が煮詰まらないからどうしようかということで、双方ともこのメンバーは議長によって本会議で指名されてきたメンバーでございますから、ですからお話し合いの上で一回双方の議長のもとへその旨をお届けし、御意向をお伺いして、またこちらへ持ってきて再開というのがしかるべき手続ではなかったか、このように思います。
  ですから、今のような格好で再開になりましたことに多少の疑念はありますけれども、これが好むと好まざるとによらず、初めてのことでございまして、前例となるということだそうでございますので、今後はそのようなことのないように、両議長におかれまして慎重にお話し合いの上でこの会議を進めていただくことを切にお願いいたします。
  それだけです。
○議長(平井卓志君) それでは、前回に引き続き協議を行います。
  順次御発言を願います。市川雄一君。
○市川雄一君 この際、私から協議案を提案させていただきたいと存じます。
  その案を配付させていただいてよろしいでしょうか。
○議長(平井卓志君) 結構です。
市川雄一君 じゃ、配付してください。
  この際、私から協議案を提案させていただきたいと存じます
  その提案理由並びに提案をさせていただきます。
  昨日来報道されておりますので、既に御承知かと存じますが、昨日、土井衆議院議長からの御提案をきっかけとして、細川内閣総理大臣と自由民主党の河野総裁との間で政治改革関連法案の成立に向けて協議が行われ、両者の合意が得られるに至りました。この合意には、日本共産党及び二院クラブは参加されていないことを付言いたしておきます。
  私といたしましては、この合意に沿って、本両院協議会としての成案を得ることができますよう、ここに提案させていただく次第であります。
  合意された事項は、政党間の合意でありますので、直ちに本両院協議会の協議の対象となるものではありませんが、後ほど提案させていただく協議案の前提となるものでありますので、そのまま紹介させていただきたいと存じます。
  次のとおりであります。
  一 比例代表選挙は、ブロック名簿、ブロック集計とする。ブロックは、第八次選挙制度審議会の答申の十一ブロックを基本とする。
  二 企業等の団体の寄附は、地方議員及び首長を含めて政治家の資金管理団体(一に限る。)に対して、五年に限り、年間五十万円を限度に認める。
  三 戸別訪問は、現行どおり禁止とする。
  四 小選挙区選出議員の数は三百人、比例代表選出議員の数は二百人とする。
  五 小選挙区の候補者届け出政党、比例代表選挙の名簿届け出政党並びに政治資金規正法及び政党助成法の政党要件の「三%」は、「二%」とする。
  六 各政党に対する政党助成の上限枠は、前年収支実績の四〇%とする。ただし、合理的な仕組みが可能な場合に限る。
  七 投票方法は、記号式の二票制とする。
  八 寄附禁止のための慶弔電報等の扱いは、現行どおりとする。
  九 衆議院選挙区画定のための第三者機関は、総理府に設置する。
  十 以上の合意の法制化のため、衆参両院からなる連立与党及び自由民主党各六名(計十二名)の委員により、協議を行うものとする。
  合意された事項は以上のとおりでありますが、現実問題として、本日は今国会の会期最終日でありますので、これらの合意事項を内容とする協議案を御用意することは時間的に不可能であります。そこで、これらの合意事項は、第百二十九回国会において、連立与党と自由民主党とが共同して、平成六年度当初予算審議に先立って実現させるこ
 とを前提として、今国会では施行日を改めた上で衆議院議決案を成立させることといたしたいと存じます。
  お手元にお配りした協議案は、以上申し上げた趣旨のものでありますので、御理解を賜りたいと存じます。
  それでは、案文を朗読いたします。
     公職選挙法の一部を改正する法律案両院
     協議会協議案
   衆議院議決のとおりとする。
     衆議院議員選挙区画定審議会設置法案両
     院協議会協議案
   衆議院議決案附則第一条中「公布の日」を「別
  に法律で定める日」に改める。
   その他は、衆議院議決のとおりとする。
     政治資金規正法の一部を改正する法律案
     両院協議会協議案
   衆議院議決のとおりとする。
     政党助成法案両院協議会協議案
   衆議院議決のとおりとする。
  協議案の案文は、以上であります。
  なお、ただいま申し上げました案文のうち、衆議院議員選挙区画定審議会設置法案に係る施行期日を定める法律は、先ほど申し上げた合意事項を内容とする改正法と同時に成立させることが必要であると存じます。
  何とぞ、御協議の上、これらの協議案を本両院協議会の成案としていただきますよう、協議委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。
○議長(平井卓志君) ただいま市川君から御提案のありました四案を協議会の協議案として議事を進めます。
  ただいまの各協議案について御意見のある方は、順次御発言を願います。坂野重信君。
○坂野重信君 自民党としての意見を申し上げます。
  前回の市川議長の一方的打ち切り発言によって協議が中断されてしまった後で、また今回の再度の協議会の開会には釈然としないものがあります。これは村上委員一人のみならず、我々自民党委員の全員が全く同じ気持ちであります。それをはっきり申し上げておきます。
  そこで、しかし、そうはいっても衆参両院議長の御意見もございましたし、そしてまた今説明がありましたように、細川総理と河野自民党総裁との合意もありました。したがって、これを踏まえて、我々はこの協議案に対しましては、積極的賛成とは言えませんが、まことにやむを得ないものだと思います。
  以上、簡単ですが、所見を申し上げます。
○議長(平井卓志君) 橋本敦君。
○橋本敦君 私は、日本共産党の立場から、ただいま市川議長から御提案いただきました協議案に対しまして、順次意見を述べさせていただきたいと思います。
  まず第一点は、この協議案は、参議院で否決された重みを深く受けとめるどころか、全面的にこれを無視する結果となり、しかも手続的には、選挙区画定審議会法案は別として、一事不再議の原則に明白に反するものだと考えております。
  衆議院において可決された法案、参議院において審議の結果否決をいたしました法案、附則の部分、なるほど変わっていると言えばその部分だけが変わっているかもしれませんが、法案としては審議された姿そのままが重ねて協議案の内容として出てくるわけでありますが、これを両院協議会の成案としても、まさに一事不再議の原則に反する結果を明白に引き起こしている問題だと思うからであります。したがって、その点で協議案としては、これは法的に正当なものとして成り立ち得ないのではないかという重大な疑問を持っております。
  第二の点は、小選挙区並立制法案等この四法案の参議院で否決した趣旨、それは直ちに憲法上の原則に従って廃案とするのが当然だということを申し上げましたが、今度は協議案という形でその内容が一層改悪されることを保証するものになっている点であります。
  私どもは、小選挙区並立制法案等、政党助成法も含めまして、既に憲法の原則に反し、民主主義の根本理念に背理するものであることを従来から述べてまいりましたが、今回、この協議案の内容としてではありませんが、背景的事情として市川議長から御説明があった合意の内容を見ましても、小選挙区部分が三百に拡大される、比例部分は十一ブロックになった上、それぞれの集計が全国単位でなくなる、また、企業・団体献金が五年とはいえ基本的に容認されるという方向に、一層憲法と民主主義の根本理念に反する方向に行っている内容であります。
  さきのこの協議会でも、自民党から提案された案に対して、それは民意をゆがめるとかあるいは小政党排除が一層進むとか、また金権腐敗政治一掃のための企業・団体献金の禁止はせめて地方議員にまでと言ったが、自民党案には歩み寄れないなどと与党の各党の皆さんから一様に反対の意見が表明されたのであります。今回は、協議案の背景となった合意は、それ以上にまさに民意のゆがみ、その他憲法原理に反する方向が強くなるわけでありますが、与党の各党の皆さんの態度がこのように一夜にしてなぜ変わったのであろうか、選挙制度あるいは法案の重要な中身について、それは哲学も理念もない政治的談合と言われかねないものではないのか、そういう疑念をぬぐい切れないのであります。
  第三は、手続上も、また議会制民主主義の立場から見ても、この協議案に賛成することができないという問題であります。
  まず第一は、両院協議会という正式の院の協議機関の成案をつくる協議、それ自体が一たん成案を得る見込みがないとして議長から宣言されたわけでありますが、その後、この協議機関で成案が特別に新たな事情で審議をされ、協議をされたという経過を一切抜きにして、総理と自民党との間のいわゆる政党間交渉と協議、私どもからいえば、まさに正規の機関外の政治的なそういった合意によって、それがこの協議会の成案の中身として持ち込まれてくるという事態は、私は、これは議会制民主主義の立場、また両院協議機関の権威の点からいっても、重大な越権とじゅうりんではないかということを強く指摘したいのであります。その点については、私は議長の責任も軽からざるものがあると考えております。
  本来、両院協議会の任務と目的、それは、前回も申し上げましたが、憲法上もそれなりに限定された例外的規定としての機能を持っている範囲で認められるべきだと思うのでありますが、その点から見ても今度の協議案の内容は、否決とそれからもともとの政府案との間の関係における調整ということをはるかに超えて、もともとの否決された政府案、衆議院が可決された政府案以上のものを協議案として持ち込むわけでありますから、両院協議会の規定とその目的、範囲をはるかに超えることを政治的にやろうとしていると言わざるを得ないのであります。
  その点では、私は、まさに協議会の権威もあるいは院の権威も政治的に踏みにじられたという点で極めて心外だと言わざるを得ないのであります。逆に言えば、政治的に合意を得たその内容を、成案を得るものとして協議会を利用した、その手続それ自体が政治的に利用された、乱用と言うほかはないということであります。
  しかも、先ほど市川議長から御説明がありましたように、その合意なるものを今度はさらに予算審議前に次の国会で可決をさせるという、そういう状況でありますから、まさに国会外の党間の合意で出口まで決めて、そしてそれを国会に出すということはまことにこれは国会軽視、審議権の無視と言わざるを得ないのであります。憲法や国民の参政権にかかわる重要法案がこのような扱いとされてよいのであろうか。国会は何のために、だれのために審議を尽くすものとして存在するのかといった点から、重大な疑問を呈さざるを得ないのであります。
  結論として、この小選挙区並立制法案を含む政
 府案は、細川首相も審議の中で述べられたように、まさに政治のダイナミック、あるいは国民の反対を抑えても進めたい政策の実現のための強力な政治を目指すという、そういう方向に向けて、手続においても民主主義に反する手法で進めていくという、そのことをあらわに今回の場合もあらわしたと言わざるを得ません。その点で私は、内容的にも手続的にも重大な疑問があり、賛成できないことを強く申し添えたいと思うわけであります。
  以上です。
○議長(平井卓志君) 青島幸男君。
○青島幸男君 ただいま共産党の橋本さんがおっしゃられたことは、私は一々同感でございまして、おっしゃられるとおりの疑問はこれからもずっと残るでありましょうし、また、終わりを決めてしまったという、その日取りの決定につきましても、大変な疑念と不満を私は隠し切れずにおります。
  振り返って考えてみますと、皆様方、それぞれここで顔を合わされて、衆議院側は衆議院側で許されるぎりぎりの範囲というところで法案をお示しになり、自民党側は自民党側でまたぎりぎりと思われるところをお示しになって、双方で、時には声を荒げることさえあるような熱心な論議が交わされておりました。
  にもかかわらず、そのことをまるでほうり出して、勝手に、しかも密室で細川さんと河野さんが決められてしまったということに対しては、ここにいる皆さんもかなりそのむなしさと憤りを感じておられるはずでございますが、私も、全く許しがたい、これは民主主義に対する暴挙だというふうに認識をしておりまして、日がまだ決まっていないということもありまして、これは徹底的に反対をしていかなければならぬと決意を新たにしたところでございますけれども、あえて少し時間をいただいて私見を申させていただいてよろしゅうございますか。
  もし、この法案がそのまま、今のこの協議案のとおりに可決されて法律になってしまったときのことを考え合わせますと、私はもう不安でたまりません。
  と申しますのは、小選挙区制になりますと、今度は、候補の方はそこで公認を取りつけなければなりません。例えば、自民党の例で申し上げましょうか。自民党の例で申し上げますと、一つの政党の中ですから、思想、信条あるいは政策について論じ合ったり確かめ合ったりすることよりも、どういう経緯で公認をとるかという地盤、看板と地縁、血縁といったようなものに執着せざるを得ない格好になりますでしょうし、そうなりますと、一部権力者、それを決定する方々の意向は異常に大きなものになってまいりますし、一つはそういうところに筋道を立てて、派閥もありましょう、血縁もありましょう、いろいろの手だてを講じて公認をもらうということにまず第一番に大きな力を費やさなければなりません。
  そのほか、それをあるいは保証するであろう比例代表制のメンバーの上位に載せてもらわなければなりませんので、そのためにまたどれだけの労苦が費やされるか。衆議院の皆さん方、御経験がないので気軽にお考えのようかもしれませんけれども、参議院の比例区ができまして、名簿の順位を決める段になりましたときには、それこそ党員を何十万人も集めるの、党費をどうやって工面しろのというようなことで、大きな負担を課せられているという事実もあるわけです。
  ですから、そういうことを考え合わせますと、まず公認を取りつけなければならぬ。それから、それの保証として比例区の名簿順位を上げてもらうように交渉しなければならぬ。しかも、新たに決まった小選挙区の中でどういう配分に決まるかわかりませんし、新たな選挙区の中でそれは全く不利な戦いをしなければならないかもしれません。そこで新たな戦いをしなければならなくなれば、それは、地縁、血縁、金がかかるのどうのこうのということよりも、当選の翌日から次の選挙について右往左往しなければならぬということになりかねないということを考え合わせますと、これはとても負担を強いることになると思いますね。
  それは、自民党のように伝統があり、ある程度数があり、決まった知名度も持った政党ならまだよろしゅうございますが、今度それと対決をしなければならないわけでありますから、皆様方は連立てきっとお戦いになるでしょう。それぞれの政党の看板をおろして、あるいは一本になるかどうか知りませんけれども、そうなりますと、その枠の中で今度はどういう格好で公認を取りつけるか、あるいは名簿の順位にどう加えてもらえるかということと、新たな戦い方をして、その小選挙区の中でトップ当選しなければならないわけですから、それはまた新たな大変な労苦を強いられることになるでありましょうし、その公認とか名簿の順位を決める決定機関は党の上層部、あるいはその一握りの人間ということに恐らくなるでしょう。
  そうなりますと、ふだんから党に盾突くとか新しい意見を述べ立てるという方々は、なるべくなら排除するという格好に自動的に向かわれるでしょうし、ですから、公認されて名簿に載って出てくる方々は、ユニークな考え方をお持ちになった、ユニークな情熱と意欲を持っている方ではなくて、ですから、ユニークな侍が排除されて、日和見で、権力にべたべたくっつくというような格好のイエスマンのみが上位にランクされ、公認を取りつけるということになりますと、ますます政治家は小さくなっていきますし、それで公費なんかを受けて大きくなった政党がますます肥大化すれば、そして独善的な一握りの方々がこれを支配するようになったら、それこそ大変なファッショに結びつくに違いない。
  そういうことから考え合わせますと、とてもこのままこの協議案を認めて皆さん方が心底これでいいんだと思っていらっしゃるとは夢にも私は思いません。
  前回にも私は反対の理由を申し上げましたので、これ以上くどくど申し上げることはありませんが、そういう不安を隠し切れず持っておりますので、機会あるたびに反対の意見を表明してまいりたいと思いますが、廃案にどうしても結びつけるように、これから残された機会は幾ばくもないでしょうけれども、その機会をとらえて私は邁進してまいるつもりでございまして、ここは議論の場ではございませんから反論を承ろうとは思いませんが、私の所信の一端を述べさせていただきました。
  ありがとうございました。
○議長(平井卓志君) 左近正男君。
○左近正男君 それでは、日本社会党の意見を申し上げさせていただきたいと思います。
  昨夜の河野自民党総裁と細川総理のトップ会談での十項目合意事項を了解いたします。今後、合意事項の法制化に向けて積極的に対応していきたいと思います。
  この機会に我が党の、日本社会党の立場について少し申し上げさせていただきます。
  私どもの党の見解については、昨夜、村山委員長談話を発表させていただきました。この趣旨は、政治改革は五年を超える論議を積み重ねてきたものでございますが、特に議員、政治家としての存在に深く影響を及ぼす諸課題であり、実に困難な論議の連続でありました。しかし、土井議長の提案を受け、細川総理と河野自民党総裁の合意が成り立った以上、これを支持していくというものであります。
  なお、この機会に、私どもの党としては、政治家個人にかかわる企業・団体献金については今後ともその適正、厳正化に向けて積極的に努力をしていきたいと思います。
  最後に、本改革によりまして国民の皆さん方から信頼される政治の実現に向けて一層の決意と努力をしていくことを申し上げ、日本社会党の意見とさせていただきます。
○議長(平井卓志君) 石井一君。
石井一君 新生党・改革連合を代表いたしまして、意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
  衆議院での可決、そして参議院の委員会での可
 決、しかし、最後の参議院の本会議における否決によりまして、また当協議会の議論が相調わず、我が国の議会制民主主義は最大の危機に立っておった。そして、この問題は過去五年間にわたる議論、そしてその間、自民党内閣が二つ、このことについて窮地に陥った。二度あることは三度ある、あるいは三度目の正直という言葉も、両方ございますけれども、私はまさに最大のピンチに直面しておったという認識をいたしておりましたが、昨日夜半から今日に至る経過の中に、いろいろ言い分もございましたでしょうけれども、私は、お互い互譲の精神の中から国会の良識を示したと思っております。その背景には国民の健全な、この問題を処理してもらいたいという世論の背景があったというふうに認識いたしておるわけでございまして、この協議案に全面的に賛成の意を表するものでございます。
  なお、議論を尽くしてまいりましたので、中身について多くを申し上げませんが、自民党案に対しましてもいろいろと検討をいたしまして、協議案の二、企業・団体の献金問題につきましては五年で打ちどめをするということはございますけれども、社会党の苦悩をも連立の中で顧みず、思い切って経過措置を入れたということを御理解いただきたいと思います。
  また、三の戸別訪問に関しましてもいろいろ議論がございました。しかし、現行どおり禁止する。この問題についてもそれを受け入れた。
  また、小選挙区選出議員の数の割り当てでございますが、自民党サイドは二百八十名以上という御要望でございました。当時の運動方針にも明記されておりますが、それを思い切って当初要求されております三百名というところにいたしております。
  さらに、六番目の政党助成に関する問題も、上限枠によってシーリングをつくれ、前年度の収支実績を見よという新たな参議院の御提案に対しましても、これを取り入れるというふうな中から、あらゆる努力をいたしまして、この協議案ができ上がっておるということを御理解いただきたいと思うのであります。
  また、この全体の流れを見ておりますと、第八次選挙制度審議会が二年間にわたり、日本の英知を集めた審議委員二十七名によって検討をされました案と非常に酷似いたしております。五年間の議論を経て、その当初にもう一度戻ったという感じがいたすわけでございますが、そこには哲学があり理念があり、一つの論拠がすべてにおいてあるということを私は確信をいたしております。
  最後に、一部に、参議院で否決されたこの法案が、一部修正されたとはいえ、もう一度このような形で審議され成案になるということに対する御疑問があるようでございますが、各議院での当初の議決と両院協議会の成案の議決では両院の重みが加わっておるのでありますからステージが全く違い、そういう意味では何ら問題はないというふうに考えております。
  今回のような協議案を成案とした先例も幾つもございます。私の国会生活二十数年を顧みまして、これは一般の法案でございますが、衆議院で議決をいたします、参議院へ送付をいたします、参議院で修正を加えられます、そしてまた衆議院へ回付されてまいります、その場合に、我々はそれを参議院の議決どおり可決するということで、変えられましたものをまたお受けしてこれを決定するというふうなことはやっておるわけでございまして、これは当然我が国の先例その他からも説得力のある理論であるというふうに信じております。
  何よりも、政治情勢が急激に変わり、事情の変更が起こったわけでございますから、法律的にも政治的にも手続に問題はない、瑕疵はないということを確信いたしております。
  以上でございます。
○議長(平井卓志君) 荒井聰君。
○荒井聰君 私は、さきがけ日本新党を代表いたしまして、本協議案に賛成の意見を申し述べさせていただきます。
  冷戦が終わり、国際社会は旧来システムや価値観の崩壊などまさに激動の中にあり、今日ほど政治のリーダーシップが求められているときはありません。しかし、日本では毎年のようにさまざまな政治腐敗事件が発覚し、国会がその対応に忙殺されている状況が続いております。政治の中に国民が不在であるという政治不信の萌芽さえ感じるのであります。
  この政治改革は、海部、宮澤内閣に続く三度目の挑戦であり、今回もこの挑戦が挫折するならば、国民の政治に関する信頼はまさに地に落ちると思います。また、これ以上の政治改革のおくれは、政治の空白を招き、景気の回復など多くの重要な課題への取り組みの妨げとなり、国民の政治不信を限界まで高め、我が国の国際的信用の失墜すら招きかねません。
  このような状況下、昨日、細川総理、河野自民党総裁は、法案の成立に向けて大胆な合意を図る決断力と党内をまとめ切る指導力を国民に示しました。今まさに、本両院協議会はこの両者の意を酌み、御提案のあった協議案を成案とするそのときであると考える次第でございます。
  以上でございます。
○議長(平井卓志君) 森本晃司君。
○森本晃司君 公明党の森本晃司でございます。
  ただいま提出されました協議案について、賛成の意を表するものでございます。
  一昨日この両院協議会で、私どもの出しました案、さらにまた参議院自民党側から出された案につきまして、相調うことができませんでした。しかしながら、昨日、衆参両院議長、また総理、総裁の多大の御尽力を得まして合意を得ましたことを、大変乱はうれしく思っておるところでございます。
  両院協議会が不調に終わった後、国民世論の、何としても、妥協しても合意して成立をさしてもらいたいとの強い要望と期待がありました。今政治はその期待にこたえることができるものではないかとの感を強くしているところでございます。
  法案の中身につきまして、企業・団体献金については、我が党はこれまで禁止を主張してまいりました。しかしながら、今回の合意案では、資金管理団体一団体に限るということ、また五年後廃止ということでありまして、禁止の方向が明確になっております。従来から見ますと、大きな前進であります。したがって、合意を見るにはやむを得ないと思っているところであります。
  本日のこの両院協議会で協議案の成案が得られますことを強く望みまして、私の賛成の意見とさせていただきます。
○議長(平井卓志君) 米沢隆君。
○米沢隆君 民社党を代表して意見を述べさせていただきます。
  今日までいろいろ経緯はありましたが、懸案の政治改革問題がこのように最終段階を迎えることができますことはまことに喜ばしい限りでございまして、各党関係者の皆さんの御努力に心から敬意を表したいと存じます。
  また、この両院協議会におきまして成案を得て決着することになりましたことも、将来の議会制民主主義の進展のためにもまことに喜ばしいことであると考えます。修正問題等の法制化など残された問題はまだありますけれども、この両院協議会の協議がその成功に向けての第一歩であることにかんがみ、私は、提案に対して全面的に賛意を表する次第でございます。
  以上です。
○議長(平井卓志君) 他に御発言ございませんか。
○坂野重信君 さっき私から自民党の総括的な意見を申し上げましたが、若干補足するところがございますので、関根委員から追加させていただきます。
○関根則之君 最初、市川委員から協議案の提案理由説明をいただいたわけなんですが、その終わりのところで、「協議案の案文は、以上であります。」と言った後で、なお三行ほどありまして、真ん中から読みますが、「先ほど申し上げた合意事項を内容とする改正法と同時に成立させることが必要であると存じます。」こう言っているんです
 ね。
  これは何をおっしゃっているのか。この協議会は、こんな、次の法律をいつ成立させるかなんて、それが必要であるかないかを議論する場ではないので、この三行は不要だと思いますので、削除をしていただいた方がよろしいんじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
○市川雄一君 御指摘のとおりだと思いますので、削除させていただきます。
○議長(平井卓志君) 他に御発言もなければ、これより採決に入ります。
  公職選挙法の一部を改正する法律案、衆議院議員選挙区画定審議会設置法案、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案、以上四案の各協議案を一括して採決いたします
  四協議案を本協議会の成案とすることに賛成の方の起立を願います。
     〔賛成者起立〕
○議長(平井卓志君) 起立十七名。これは、出席協議委員の三分の二以上であります。よって、四協議案はいずれも両院協議会の成案と決定いたしました。
  なお、成案の案文整理等につきましては、議長に御一任願います。
  以上をもって本協議会は終了いたしました。
  これにて散会いたします。
     午後三時三十七分散会

[国会会議録から全文引用おわり]