宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

パソナグループが「売上高1・2倍予想」発表、派遣法案の「期間撤廃」と「特定派遣業許可制」先取り

2015年07月15日 23時59分59秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

(このエントリー記事の初投稿日時は2015年7月16日午前6時半で、それから、15日付にバックデートしました。)

 今週火曜日、2015年7月14日(火)に、参議院厚生労働委員会で審議入りした「労働者派遣法改正法案(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部 を改正する法律案)」(189閣法43号)の成立・施行を踏まえて、株式会社パソナグループが15日(水)、「売上高が18・5%増になる見通しだ」とする、決算を発表していたことが分かりました。

 パソナグループは、前の期(2015年5月締め)の売上高が2262億円、営業利益が34億円となり、それぞれ、その前の期と比べて、8・4%増、8・7%増となりました。

  さらに、今の期(来年5月決算)は、売上高が2680億円、営業利益が47億円で、それぞれ18・5%増、34・7%増とする予想を発表。労働者派遣法施行が予想される9月以降に限れば、2割超の成長を見込んでいることが分かりました。

 この決算は、同じくすこぶる労働集約型の第3次産業であり、新聞発行業で(47都道府県1法人であるため会計上)日本2位の新聞社で、筆者(宮崎信行)が勤めていた、株式会社日本経済新聞社の売上高は3006億円、営業利益が167億円と同程度の水準になります。

 パソナグループは、専門26業務の派遣は0・6%増と低く予想。その代わり、企業から一括して人材派遣を受託して、請け負う事業が68・8%増と大幅成長すると見込んでいます。

 これは、審議中の派遣法改正案で、専門26業務のみならず一般派遣や特定派遣も派遣期間が事実上無制限になることから、派遣先企業からパソナへの一括注文が増えるからだと考えられます。

 また経営再建中の総合家電メーカー「パナソニック(旧松下電器産業)」系列の「パソナ・パナソニック・ビジネスサービス株式会社」を3か月前に買収したことで、売上高を押し上げるとしています。 審議中の法案に、「特定派遣業を現在の届け出制から許可制に改正する条文」があることから、今後経営が立ちいかなくなる、中小零細の派遣元会社を、大手各社が買収していくだろうという観測を強める要因となりそうです。

 安保法案(189閣法72号、189閣法73号)の衆議院強行採決により、延長国会は審議が中断する可能性が高まっており、参議院での成立がずれ込み、9月1日の施行日までに、政令や施行令などが間に合わなくなる日程感が浮上しており、参議院野党は今後、審議未了廃案に向けた攻勢を再び強めていく方針です。

 このエントリーは以上です。 


2015年日米ガイドライン国内実施のための安保2法案、衆議院特別委員会で可決、今週本会議で可決へ

2015年07月15日 12時25分31秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【平成27年2015年7月15日(水)衆議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 5月15日に提出された、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」(189閣法72号)

 「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」 (189閣法73号)

 が採決され、自公の賛成多数で可決しました。あすないしあさっての衆議院本会議でも可決し、参議院に送られる見通し。

  しめくくり総括質疑では、民維共3党が質疑。

 この後、討論。維新の党の柿沢幹事長は「岸内閣が退陣した日だから、7月15日に採決するのではないか」と指摘しました。


●きょう委員会可決した法律(案)の経緯

 これは、4月27日に、ニューヨークで開いた日米合同委員会で、中谷防衛相、岸田外相、アシュ・カーター国防長官、ケリー国務長官の4名が署名し、ただちに発効した

 「2015年日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドライン」を国内法に落とし込む法案です。

 1960年日米安全保障条約は、ソビエト連邦の脅威の前に、日本領土領海領空を越えて、1978年ガイドラインで変質。

 1978年ガイドラインで、いわゆる「極東事態条項」として、「日本以外の極東における事態で、日本の安全に重要な影響を与える場合に、日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方」を定め、日本自衛隊が日本以外でも活動する余地が生まれました。

 1997年ガイドラインでは、「極東」の文字が完全に消えました。これはソビエト連邦が崩壊したものの、北朝鮮が核実験をしたことに呼応した改定のため、「周辺事態」という言葉が登場し、「周辺事態は日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である」とし「周辺事態における協力の対象となる機能および分野ならびに協力項目例」が具体的に定められました。この中には「後方地域支援としての自衛隊施設や米軍施設内で、日本自衛隊は、米軍に対して、物資(武器、弾薬を除く)および燃料、油脂、潤滑油を提供する」ことになりました。

 1997年ガイドラインは、1999年周辺事態法として、国内法に落とし込まれました。

 そして、航空自衛隊がバグダッド空港から米軍兵士を輸送したり、インド洋で海上自衛隊が補給艦「ときわ」から米軍補給艦「ペコス」に補給活動をしました。

 そして、2015年ガイドラインは、中国の軍事力台頭を念頭にし再改定。「周辺事態」を削除し、「平時から緊急事態までのいかなる状況においても、日本、アジア太平洋地域、これを越えた地域が安定し、平和で反映したものとなるよう」「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対処」「日米同盟のグローバルな性質」を書き込みました。

 この国内法への落とし込みがきょう委員会で可決した法案です。自衛隊法の改正条文として「内閣総理大臣が自衛隊の全部または一部の出動を命じることができる事態として、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」が挿入されました。この「幸福追求の権利」は日本国憲法第13条に書き込まれ「包括的基本権」として、「憲法でもっとも大事な条文」(民主党の小西洋之参議院議員)です。政府は1972年統一見解で、「日本国は幸福追求の権利により集団的自衛権を持つが、行使しない」としてきました。

 これに「歯止め3原則」をかけるために、幸福追求の権利のためなら、米軍の武力攻撃に際して、平素から有事まで、日本周辺のみならず地球の裏側まで、首相が自衛隊に防衛出動を命令することができるようにしたのが、今回の法律案です。 


 委員会は、維新の党が提出した「政府案から存立危機事態を削除する、独自案」(189衆法25号、189衆法26号)と、民主党・維新の党が共同提出した「政府案にない、尖閣諸島などでのグレーゾーン事態で海上自衛隊、海上保安庁、警察が情報共有して協力する、領域警備法案」(189衆法27号)も採決。起立少数で否決しました。浜田委員長が本会議に報告し、本会議でも否決され、衆議院段階で廃案となり、参議院には送付されない運び。

 第189回通常国会は、95日間延長し、245日のロングラン国会となっており、9月27日(日)までの会期内に参議院でも可決し、成立する見通し。公布の日から起算して6か月以内に施行するため、今年度中に施行する見通し。 

【同日 衆議院厚生労働委員会】

 流会しました。

【同日 公布法律】

 「改正特区法」(189閣法65号、平成27年7月15日法律56号)が公布されました。

 「改正官公需法」(189閣法40号、平成27年7月15日法律57号)が公布されました。3か月以内の政令で定める日に施行。

 このエントリー記事は以上です。