ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

【6/2】コロナ国会終幕ムードで「アスベスト給付金法案」「ILO105号条約法案」が起草され、今国会成立へ

2021年06月02日 18時58分10秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]東京メトロ「国会議事堂前駅」の構内から見た衆議院第一議員会館、先々月撮影。

 緊急事態宣言下で始まり、緊急事態宣言下で終わる通常国会となりそうです。既に大きな政治課題は成案を得ていますので、議員立法中心の審議となっています。

【参議院本会議 きょう令和3年2021年6月2日(水)】

 法案の審議はなく、15分ほど。

 「令和元年度予備費使用総調書その1」と「その2」は共反対、「特別会計使用総調書」は全会一致で承認され、衆参とも審議が終わりました。

 「平成29年度NHK決算」「平成30年度NHK決算」「令和元年度NHK決算」が承認されました。このうち「平成29年」は衆議院では全会一致だったと思いますが、参議院では過半数。それ以外は全会一致で承認されました。

 最後に、行政監視の実施状況に関する中間報告を立憲の野田国義行政監視委員長がしました。おとといの当ブログで、総務省に報告を求めると書いてしまいましたが、委員会が本会議に報告するてはずでした。

【参議院3つの調査会 同日】

 中間報告をとりまとめました。来年の最終報告は、ことしの衆院選で混乱して、参議院にも余波を及ぼした場合、来年の参議院選挙が始まってから調査会報告書を出すと、それはますます誰も読まないことになります。選挙後の参議院での混乱もありえますが、とりあえず形になりました。

【衆議院厚生労働委員会 同日】

 公明党の高木美智代さんが「今国会も残すところあと2週間。私の質問は最後かもしれない」と給付金などを田村大臣に直談判。与党の政調会長代理と野党の政調会長が構成する「政府・与野党コロナ対策協議会」の枠組みは、機能しなかったことについて、高木さんの胸中はいかに。

 「育児・介護休業法など改正案」(204閣法42号参先議)は全会一致で可決すべきだと決まりました。あす成立。

 先日のアスベスト最高裁判決を受けた「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金支給法案」(204衆法 号)を委員長が起草し、全会一致で本会議に提出して可決すべきだと決しました。長妻昭元厚労相が、野党会派筆頭理事の立場で「附則第2条に、国以外の者のかかわりと屋外労働者への配慮について施行後に見直す規定が入っている」と政府に念押しをする発言をしました。

 「ILO105号条約強制労働の廃止に関する条約批准のための国内実施法案」(204衆法23号)が馳浩・自民党衆議院議員から趣旨説明されました。(1)国家公務員法の政治的行為(2)船員法の業務命令無視(3)国公法のスト煽り行為の3つの違反行為の罰則を懲役刑から禁固刑に下げる改正。採決の結果、共産党反対、自公立など賛成多数で可決すべきだと決まりました。

【衆議院国土交通委員会 同日】

 制定以来議員立法が続いている、「水循環基本法改正案」(204衆法 号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。10年来議員連盟をリードしている立憲民主党の小宮山泰子さんが趣旨説明し、同党の森山浩行さんが質問しました。小宮山さんの地元埼玉県の一部地域では、村の長老を「水年寄」と呼ぶなど、水資源の配分に敏感な土地柄で知られています。小宮山さんは、法律に地下水を追加すると説明。観測や調査の必要性を強調しました。

【衆議院農林水産委員会 同日】

 委員長が「鳥獣被害防止特措法改正案」(204衆法 号)を起草し、可決すべきだと決まりました。愛玩動物とジビエなどの事業者の役割を明確化し、市町村が税源不足のときに県に協力を求めたりするほか、銃刀法の特例を令和9年4月15日まで延長する規定。

【衆議院内閣委員会 同日】

 「銃刀法改正案」(204閣法37号参先議)が小此木国家公安委員長から趣旨説明されました。

【衆議院文部科学委員会 同日】

 「東京オリパラ特措法改正案」(204衆法21号)が馳浩さんら趣旨説明されました。馳さんは「タレント候補」と呼ばれながら選挙を戦い、当選したら、「タレント議員」と呼ばれ、衆議院に転じても「タレント議員」と呼ばれ続けたことから、議員立法に目覚めたそうです。馳さん、遠藤利明さん、河村建夫さんら文部科学族には議員立法に熱心な人が多いので、文部科学族隆盛の時代となったのかもしれません。法案は、アスリートが治療などに使う覚せい剤など薬物の輸入を、東京オリパラに限って認める特例法案。立憲民主党は医師の吉田統彦さんが差し替えで登場し、批判。なぜ閣法でなく、議員立法なのかとの批判も出ています。採決では立共反対、自公など賛成で可決すべきだと決まりました。最近の議員立法で立憲・共産が採決で反対するのは異例。

【参議院災害対策に関する特別委員会 同日】

 「自然災害義援金差押え禁止恒久法案」(204衆法18号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。

 これに先立つ一般質疑は3時間コースで、自民党45分、公明党30分が割り振られましたが、与党もやり足りない感想を持つ議員もいそうです。

【参議院憲法審査会 同日】

 「日本国憲法改正手続きのための国民投票法改正案」(196衆法42号衆修正)の参考人質疑と自由討論。来週採決の公算。

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【6/1国会まとめから6/2にかけて】「後期高齢者2割で現役の月負担の軽減はわずか30円」前回解散後4度目の通常国会は議員立法総仕上げへ、LGBT法案のみ成立せずか、土地規制法案も成立の公算

2021年06月02日 00時06分51秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]幼稚園児ながら鋭い眼光の筆者、1978年頃撮影。

 きのう面白いことがあって、自民党役員会の頭撮りの待機をしていたら、エレベーターから降りた二階幹事長が部屋の入口とは逆方向になる私のほうに歩いてきてお辞儀して下さったので、お辞儀し返しました。周りの記者はこの人誰だろう、と私のマスク越しの顔をまざまざ見てました。二階さんは新生党結党35人衆の一人なので、先日「羽田議員と私」の写真を上げたからその関係かも知れない。また和歌山3区内の県議1回生である二階さんの元秘書に「一生県議やってろ(町長返り咲きを目指すな)」「(郡選出県議として)成人式の複数会場ハシゴはさすが県議だね(町長なら1か所だけだから)」とやさしいご指導を繰り返しているので、その関係かも知れない。小沢一郎さんによって破壊された「新生党・新進党」で、二階さんが「羽田ファミリー」と顔を合わすことは今生ではないだろうけど、古き良き保守勢力による政権交代ある政治の実現の機運は、ここ1年ほどで再び盛り上がってきたと思います。

 解散後4度目の通常国会ということで、政治課題はもうありません。きょうからあすにかけて議員立法ブームとなり、第48回衆議院は総仕上げを迎えます。

【衆議院本会議 きょう令和3年2021年6月1日(火)】

 「北朝鮮経済制裁のための特定船舶入港禁止措置の承認案」(204承認2号)は全会一致で承認されました。

 「病院船推進法案」(204衆法20号)が全会一致で可決し、参議院に送られました。今国会成立は確実。「災害禍とコロナ禍で」という合わせ技で25年越しの政治課題が成案を見て、政府に対して法制上・予算上の措置を命じることになりました。

 「平成28年度NHK決算承認案」は立共反対、自公維国など賛成多数で承認。「平成29年度NHK決算承認案」は全会一致で承認されました。これも、衆参の先議は関係なかったんですかね、後日調べたいと思います。

 「国重要施設及び国境離島における土地等の利用状況の調査及び利用の規制に関する法律案」(204閣法62号)が立共反対、自公国維の賛成多数で可決し、参議院に送られました。参議院内閣委員会は会期内にはまりそうです。

 「65歳に定年を延長する国会職員法など改正案」(204衆法24号)は全会一致で可決し、参議院に送られました。衆議院事務局と参議院事務局は全く別の役所ですが、なぜか根拠法は一本です。法律の無謬性を信じて疑わない国民が普通ですが、法律はむしろ変なものの方が多いように思います。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 重要広範議案「後期高齢者自己負担2割の高齢者医療法・健康保険法など改正案」(204閣法21号)の総理入り質疑がありました。

 立憲民主党の田島麻衣子さんは、本会議答弁も参考に、「自己負担が2倍になるのに、現役の負担軽減は、窓口負担金額に換算して、月30円でしかない。少ない過ぎないか」と指摘しました。財務省による財政緊縮脳もいい加減にしてほしいし、「年金含めて年収200万円」という複雑な線引きで民主主義が機能しなくなることは避けてほしいと考えます。

 昨今の総理入り質疑とは趣が違い、きょうの採決はありませんでした。

【参議院総務委員会 同日】

 参議院では「平成29年度NHK決算承認案」が全会一致、「平成30年度NHK決算承認案」が共反対、自公立国維賛成多数、「令和元年度決算承認案」が共反対、自公立国維賛成多数で承認すべきだと決まり、審査を終えました。

 今国会の開始時点で、最も長くたなざらしとなった政府提出法案「65歳に定年を引き上げる地方公務員法改正案」(201閣法53号衆修正)が武田良太総務大臣と、神谷裕・立憲民主党衆議院議員から趣旨説明されました。政府と衆議院修正者に対する質疑は次回で、今国会の成立は確実。

【参議院内閣委員会 同日】

 「65歳に定年を引き上げる国家公務員法改正案」(204閣法63号)が河野太郎公務員制度改革相から趣旨説明されました。

【参議院国土交通委員会 同日】

 「航空法改正案」(204閣法60号)が趣旨説明されました。

【参議院環境委員会 同日】

 「廃プラスチック資源循環法案」(204閣法61号)の対政府質疑が始まり、自民党の石井準一幹事長代理も質問しました。

【参議院経済産業委員会 同日】

 「産業競争力強化違法改正案」(204閣法23号)の参考人質疑がありました。

【参議院外交防衛委員会 同日】

 「日英原子力協定承認案」(204条約8号)、「大西洋まぐろ類保存条約の改正の承認案」(204条約9号)、「国際航路標識機関条約承認案」(204条約10号)の3本が審議入りしました。対政府質疑は次回。ひょっとすると、日印ACSAの審議を遅らせようと、コニハク(小西洋之筆頭理事と白真勲元副大臣)がもくろんでいるのかもしれません。

【衆議院環境委員会 同日】

 「瀬戸内海環境保全特措法改正案」(204閣法43号参送付)が全会一致で可決すべきだと決まりました。これに先立つ質疑では、国民民主党の玉木雄一郎代表も香川2区選出の立場で、瀬戸内海の海苔の色落ちなどについて政府をただしました。

【衆議院科学技術・イノベーション特別委員会 同日】

 半導体産業を取り巻く諸状況について、有識者から参考人公述や、質疑をしました。

 ●議員立法

 「LGBT理解増進法案」(未提出)は、自民党政調審議会を通過して、総務会で役員一任という珍しい展開となり、衆参の内閣委員会が会期内ではまりそうですが、提出・成立しない見通し。

 「石綿アスベスト被害給付金法案」はあす起草される見通し。国と折半する企業百数十社の基金への参加呼びかけの文言が気になります。

 「オリパラ特措法改正案」(204衆法21号)も審議され、成立の公算。アスリート個人の治療用薬物の持ち込みの規制特例に関する法案。

 「ILO条約の関係法律整備法案」(204衆法23号)も審議され、成立の公算。

 「鳥獣被害防止法改正案」も起草されるはこび。

 「水循環基本法を改正して地下水など盛り込む法案」も起草され、質疑をした後に採決の公算。これは成立以来、ずっと議員立法で改正されています。

 このほか、衆議院を通過した「災害義援金差押え禁止恒久法案」(204衆法18号)もあすの参議院災害対策特別委員会で審議され、採決。この法案ですが、内容を読んだら、「東日本」以降の5本の特措法を廃止する規定は含まれておらず、制定法律2000本超の立法爆発解消とはならないようです。

 その他は、来週水曜日の党首討論に向けて、コロナと五輪と補正予算。与党と霞が関は今月中旬以降の、財政運営と改革の基本方針いわゆる骨太の方針2021の文言が中心となりますが、山は越えました。

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