(このエントリー記事の初投稿日時は、2016年3月7日、午後9時半で、それから4日付にバックデートしました)
政府は、
「人工衛星等の打ち上げ及び管理に関する法律案」(190閣法41号)
と
「衛星リモートセンシング記録の適性な取り扱いの確保に関する法律案(190閣法42号)
2案を閣議決定し、平成28年2016年3月4日(金)、第190回国会に提出しました。
自民党の河村建夫元文科相、民主党の野田佳彦さん、細野豪志さんらが8年前に提出した議員立法
「宇宙基本法」(平成20年5月28日法律43号)の規定により、それを肉付けする新法(改正法案ではなく新しく作る法律案) 。
当ブログは、2015年7月2日付のエントリー(宇宙活動法案2016年通常国会以降に提出 日米同盟、集団的自衛権を先取りした宇宙軍事協力へ)で報じています。なお当時は安保法(今月施行)の審議中だったので、勇ましいタイトルになっていました。
法案の概要は、人工衛星がこちら、衛星リモートセンシング記録の法案がこちらから見ることができます。
審議は秋の臨時国会以降になると考えられ、今国会は衆議院で継続(閉会中審査)の手続きがとられると見立てるのが有力だと考えられます。
施行は「人口衛星」が交付から2年以内の政令で定める日。「リモートセンシング」が公布から1年以内の政令で定める日。
以下は、最初に報じた時のエントリーです。
[当ブログ内エントリーから全文引用はじめ]
第3次安倍内閣(自民党・公明党連立)が、先々週3日(金)午前8時10分から8時20分まで、官邸内で開いた、「宇宙開発戦略本部」(安倍晋三本部長)で、来年平成28年2016年の通常国会にも、「宇宙活動法案」と「衛星リモートセンシング法案」を提出する方針を決めていたことが分かりました。
「宇宙活動法案」には、「人工衛星の打ち上げの許可・監督」を内閣官房の権限にし、「第三者損害賠償」を導入する条文が盛り込まれるもよう。
「衛星リモートセンシング法案」は、「民間人工衛星の推進」、「ビッグデータの悪用を防ぐ適切管理の義務付け」などを盛り込む方針。リモートセンシングとは、衛星を通じて情報を集めること、という意味です。
この2法案が成立すると、損害保険の不整備などにより、受注から発射までのリードタイムで、他国に後れている、種子島宇宙センターからの海外人工衛星の打ち上げ代行が促され、農機具の自動運転、無人飛行機の貨物輸送などの技術を日本が開発することができるようになるようです。
超党派で立法した、「平成20年宇宙基本法」は、そのの第11条に「政府は、宇宙開発利用に関する施策を実施するため、必要な法制上、財政上、税制上または金融上の措置その他の措置を講じなければならない」と書いてあることにもとづく、法案だと考えられます。
平成20年宇宙基本法は、その第2条で、
「宇宙開発利用は、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする」としながらも、
その第3条で、
「宇宙開発利用は、国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存および生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和および安全の確保ならびに我が国の安全保障に資するよう行わなければならない」とし、軍事転用に道を開いています。
「存立危機事態」という言葉が、第189回通常国会で審議中の安全保障法案に書いてあり、同法の成立が不可避の情勢になりつつあります。
安保法案に盛り込まれた、「平成13年周辺事態法」改め「平成27年存立危機事態法」で、人工衛星などの軍事利用ができる解釈が可能です。
日本自衛隊と米軍の具体的な協力項目をリストアップした、「2015年日米防衛協力のための指針いわゆるガイドライン」(4月27日署名・発効)では、
その第6章「国際平和支援」で、
「日米両政府は、宇宙空間の安全保障の側面を認識し(Recognizaing the security aspects of the space domain)、責任ある、平和的かつ安全な宇宙の利用を確実なものとするための両政府の連携を維持し、強化する」
「(日米の)各々の宇宙システムが脅威にさらされた場合、自衛隊および米軍は、適切なときは、危険の軽減および被害の回避において協力する(In cases where their space systems are threatened,the Self-Defense Forces and the United States Armed Forces will cooperate,as appropriate,in mitigating risk and preventin damage)」
「被害が発生した場合、自衛隊および米軍は、適切なときは、関係能力の再構築において協力する(If damage occurs,they will cooperate,as appropriate,in reconstituting relevant capabilities.)」となっています。
宇宙空間において日米いずれかに、存立危機事態や、重要影響事態、国際平和共同対処事態が起きたら、日米の集団的自衛権の発動で、共通の相手(「敵」)に対して「危険の軽減」ができます。「被害の回避」が盛り込まれたことから、日米いずれかへの攻撃を人工衛星などで察知(リモートセンシング)した場合は、陸上、海上も含め、相手(「敵」に対して、先制攻撃ができる、という協力項目が、2015ガイドラインにはじめて盛り込まれました。
宇宙空間での集団的自衛権の発動は、国連憲章第51条により「集団的自衛権」という言葉が70年前に人類に誕生して以来、国連に報告されていません。宇宙の平和利用を定めた国際法もあります。
安倍内閣は、宇宙空間の日米軍事協力の錦の御旗を振りかざしながらも、実際には行使せず、日本の民生用宇宙開発の巻き返しが狙いと考えるのが妥当です。
ただ、宇宙基本法の制定には、自民党の額賀元防衛庁長官や、河村元文部科学大臣のほかにも、第1次野党期・民主党の野田佳彦衆議院議員、細野豪志衆議院議員らも発議者に名を連ねており、両議員を含めて民主党が国会を通じて国政調査することが求められます。
以上
[全文引用おわり]
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