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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

古楽器の魅力?

2014-06-17 22:41:40 | 大学公開講座
 講義室の前にはたくさんの楽器が並べられ、あまり講義が得意そうではない講師のお話にどう反応してよいのやら?「なんじゃ、これは?」と思っていたところ、講師が最後に提示した「短絡的(笑)結論」に妙に納得した私だった。 

 6月14日(土)午前、東海大学国際交流会館において公開講座が開かれ受講してきた。
 テーマは「多様な文化と音楽 ~ 様々な楽器からアイヌ文化や歴史を探る~」と題して、東海大の沖野慎二准教授が講師を務めた。
 まあ、受講の動機は、道民カレッジで私が専攻している「ほっかいどう学」の単位が取得できるという不純な動機ではあったのだが…。

          

 沖野氏は冒頭に「文化の普及・啓発・創造・継承はWalk Don't Runである」とパワーポイントで提示した。Walk Don't Run?ベンチャーズの名曲ではないか。このあたりから私は沖野ワールドの迷宮に迷い込んだようだ。

 話の接ぎ穂は憶えていないのだが、沖野氏はフェルメールの名画を次々と提示した。フェルメールというと、17世紀にオランダで活躍した画家である。沖野氏はフェルメールが描いた多くの絵の中から楽器が登場する絵を10枚近く提示したのではないだろうか。
 その中にはさまざまなヨーロッパの古楽器が描かれていた。

               
               ※ フェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」です。

 例えばここに提示した「ヴァージナルの前に座る女」である。「ヴァージナル」とはピアノの原型とも言われるが、音的にはむしろハープシコードに近いと言われている。などという解説を加えながら講義は進んだ。ちなみに、同じ画の中に描かれているのはコントラバスの原型と言われている「ヴィオローネ」という楽器である。
 その他に、ギターの原型とされる「リュート」、形状がヴァイオリンやチェロに似ている「ヴィオラ・ダ・ガンバ」等々が紹介された。

 講義がユニークなのは、それらに似た音を出す楽器を実際に弾いて見せるところだ。沖野氏によると古道具店などを歩き回り、安値で購入したものばかりという。
 傑作なのは、沖野氏の演奏技術がまったくもって稚拙(失礼!)だったところだ。音色としてはなんとなく分かるのだが、曲にはなっていないというと伝わるだろうか?
 あえて沖野氏を弁護すると、あれだけ多種多様な楽器を全てスムーズに演奏できたら研究者はしていないかもしれない。
 さらに氏は、黒人の楽器として知られる「カズー」という楽器も紹介した後、最後にはなんと数台のエレキギターが登場し、それぞれを弾き分けて見せたのである。

          
          ※ シターンに似たマンドリンを弾いてみせる沖野氏です。

 そして、フェルメールの古楽器、カズー、エレキギターには共通点があるあるというのだ。それは「音」を歪ませているということだという。この「音の歪み」を実は人間が好む音でもあると氏は言う。
 そして、こうした「音の歪み」を取り入れた楽器がアイヌの中にもあったという。
 それが「ムックリ」だと氏は指摘し、こうした「音の歪み」を出す楽器は「反(非)近代西洋」「伝統継承の象徴」(沖野氏の表現)だったとした。
 最後に「ロック(ROCK MUSIC)がなぜ『反抗的』なのか、その理由の一つはこの『音』では?」として講義を終えた。

 ここからは私の解釈だが、古楽器がなぜ古楽器かというと、近代楽器にはない「音」の歪みが敬遠されために改良が施されてしまったようだ。
 また、カズーやムックリなどは虐げられた民族が使い続けてという背景がある。
 一方、エレキギターは楽器を改良したり、操作方法によって「音の歪み」を創り出してきたという側面がある。
 つまり、時代が進むにつれて敬遠されたり、無視された「音の歪み」が出る楽器は、「反抗」の象徴としてエレキギターの中に取り入れられ、ロック音楽を創出したということのようだ。

 最後の最後になって、演題の「アイヌ文化」の一端に辿りついたようである。ほんとうにWalk Don't Run 的な講義だった。