考えてみるとスイスという国は、私たちから見たら不思議な国である。国の中で三つの言葉(正確には四つの言葉)が話されているというのだ。それで一つの国が成り立っているのだから、ちょっと不思議に思われる。講座はそんなスイスの言語事情に触れたものだった。
北大のメディア・コミュニケーション研究院が主催する公開講座「世界の言語と文化」の4回シリーズの講座が6月7日(木)より始まった。
第1回目は「多言語社会とダイグロッシア」と題して、同研究院の江口豊教授が講師を務められた。
いきなり耳慣れない言葉に当惑した。「ダイグロッシア」とは私は初めて聞く言葉だった。
そこで講義前に慌ててスマホで調べてみた。それによると、「ダイグロッシアとは日本語に訳すると、『二言語変種使い分け』となる。社会によっては二つの明らかに異なる言語が状況や場面に応じて使い分けられており、同時に存在する場合がある」となっていた。
スイスの場合、公用語がドイツ語、フランス語、イタリア語、レトロマン語と四つの言語があるという。その使用人口の比率は、ドイツ語64%、フランス語20%、イタリア語7%、レトロマン語1%という割合だそうだ。
スイスの言語事情の特殊性の一つに、レトロマン語(ほかの三つの言語とは違い、スイス南東部の一部で使用されている方言のようなものらしい)を除くドイツ語、フランス語、イタリア語は、それぞれの国と隣接する地域で使用されている。ということは、それぞれの国への帰属意識、あるいはそれぞれの国との併合などという論議が出てきそうなものだが、そうした動きは見られないとのことだ。それはスイスという国の経済が比較的豊かだということにその因はあるという。
次に、四つの言語が公用語とはいっても、国内において半数以上の64%の国民がドイツ語を用いているということだが、日常使われているドイツ語はスイス地方の方言のドイツ語(スイスドイツ語)だそうで、標準ドイツ語とは似て非なるものらしい。したがって、スイス国内においては、公的領域(行政、マスメディア、学校、教会など)では標準ドイツ語を、私的領域においてはスイスドイツ語が使われているそうだ。
したがって、スイス国内のドイツ語圏においては、標準ドイツ語を学校で学び、それ以外ではスイスドイツ語を使っているという。また、マスメディアは標準ドイツ語と先に書いたが、テレビではスイスドイツ語で放送されているということだ。
その他のフランス語、イタリア語使用地域にはドイツ語のようなことはないという。
とまあ、複雑なスイスの言語事情のようだ。したがって、スイス人の相当数の人がトリリンガル(3か国語を話す人)らしい。
ところが最近のグローバリズムの波が押し寄せる中、チューリッヒなどの都会では、学校において他言語を教育するより英語の教育を導入しようとする動きも出てきているらしい。
最後に講師を務めた江口教授は、こうした言語事情はスイスだけが特殊ではないという。世界に目を広げてみると、多言語社会の国家がけっこう存在しているという。
そういえば、私が体験した例では、インドでは各州、各部族によって使用言語が違うため、各地を旅して商売する人たちは英語を使用していた。調べたところインドの公用語はヒンディー語と英語だそうだ。
ある統計によると、世界には6,700もの言語があり、特にアジア、アフリカは多いようで、一つの国が一つの言語で通用している日本などはあるいは特異な例なのかもしれない。
江口氏は、多言語使用国家は一つの国として成り立っていくために相応のコストがかかっているとした。
北大のメディア・コミュニケーション研究院が主催する公開講座「世界の言語と文化」の4回シリーズの講座が6月7日(木)より始まった。
第1回目は「多言語社会とダイグロッシア」と題して、同研究院の江口豊教授が講師を務められた。
いきなり耳慣れない言葉に当惑した。「ダイグロッシア」とは私は初めて聞く言葉だった。
そこで講義前に慌ててスマホで調べてみた。それによると、「ダイグロッシアとは日本語に訳すると、『二言語変種使い分け』となる。社会によっては二つの明らかに異なる言語が状況や場面に応じて使い分けられており、同時に存在する場合がある」となっていた。
スイスの場合、公用語がドイツ語、フランス語、イタリア語、レトロマン語と四つの言語があるという。その使用人口の比率は、ドイツ語64%、フランス語20%、イタリア語7%、レトロマン語1%という割合だそうだ。
スイスの言語事情の特殊性の一つに、レトロマン語(ほかの三つの言語とは違い、スイス南東部の一部で使用されている方言のようなものらしい)を除くドイツ語、フランス語、イタリア語は、それぞれの国と隣接する地域で使用されている。ということは、それぞれの国への帰属意識、あるいはそれぞれの国との併合などという論議が出てきそうなものだが、そうした動きは見られないとのことだ。それはスイスという国の経済が比較的豊かだということにその因はあるという。
次に、四つの言語が公用語とはいっても、国内において半数以上の64%の国民がドイツ語を用いているということだが、日常使われているドイツ語はスイス地方の方言のドイツ語(スイスドイツ語)だそうで、標準ドイツ語とは似て非なるものらしい。したがって、スイス国内においては、公的領域(行政、マスメディア、学校、教会など)では標準ドイツ語を、私的領域においてはスイスドイツ語が使われているそうだ。
したがって、スイス国内のドイツ語圏においては、標準ドイツ語を学校で学び、それ以外ではスイスドイツ語を使っているという。また、マスメディアは標準ドイツ語と先に書いたが、テレビではスイスドイツ語で放送されているということだ。
その他のフランス語、イタリア語使用地域にはドイツ語のようなことはないという。
とまあ、複雑なスイスの言語事情のようだ。したがって、スイス人の相当数の人がトリリンガル(3か国語を話す人)らしい。
ところが最近のグローバリズムの波が押し寄せる中、チューリッヒなどの都会では、学校において他言語を教育するより英語の教育を導入しようとする動きも出てきているらしい。
最後に講師を務めた江口教授は、こうした言語事情はスイスだけが特殊ではないという。世界に目を広げてみると、多言語社会の国家がけっこう存在しているという。
そういえば、私が体験した例では、インドでは各州、各部族によって使用言語が違うため、各地を旅して商売する人たちは英語を使用していた。調べたところインドの公用語はヒンディー語と英語だそうだ。
ある統計によると、世界には6,700もの言語があり、特にアジア、アフリカは多いようで、一つの国が一つの言語で通用している日本などはあるいは特異な例なのかもしれない。
江口氏は、多言語使用国家は一つの国として成り立っていくために相応のコストがかかっているとした。