監督のアキ・カウリスマキは言う。「私がこの映画で目指したのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入して妻や家をかすめ取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打つ砕くことです」と…。今のヨーロッパを分断する難民問題を題材とした映画を観た。
6月16日(土)午後、白石区にあるリフレサッポロ(JICA北海道の隣にある札幌市の施設)において、「難民を知る2018 ~ちいさな善意がつむぐ希望の光~」というイベントがあり、その中で表記映画が上映されると知って参加した。
映画「希望のかなた」は、シリアの内戦によって家も家族も失い、妹と主人公(カーリド)だけが生き残った。その二人のその後の行方を追う映画である。彼ら二人は故郷を捨てヨーロッパへと逃亡するが、その途中で妹と離ればなれとなり、カーリド一人がフィンランドに流れ着く。
優しい国と思われていたフィンランド(監督のアキ・カウリスマキの母国)だったが、他のヨーロッパの国々同様押し寄せる難民のために寛容さを失いつつあった。
難民申請をしたカーリドだったが、無情にも却下され本国送還の危機に瀕したり、ネオナチからいわれのない暴力を受けたりする。
そのような中で、人生に躓いた一人の初老の男(ヴィクストロム)がカーリドに助けの手を差し伸べる。さらにはヴィクストロムの周りの人たちもカーリドに救いの手を差し伸べる…。
※ 主人公カーリドはフィンランド人たちの支援で無事に妹と再会できたのだが…
そうしたフィンランドの内情を監督のアキ・カウリスマキは、時には難民に対するフィンランドの残酷さを、時にはフィンランド人の優しさをシュールなユーモアも交えながら描いていく。それはけっして声高ではないが、ヨーロッパの中にはびこりつつある難民に対して不寛容な社会へ警告を鳴らす映画である。
そんなアキ・カウリスマキに対して、2017年度のベルリン国際映画祭は監督賞を与えた。
※ レストランを経営するヴィクストロムは経営不振の打開策として寿司を導入するのだが…。そこにはシュールな可笑しさが…。
ヨーロッパの各国と違い、わが日本は私も含めて遠い国の問題として見ているところがある。しかし、世界が小さくなった今、我が国においても早晩難民に対してどう対処するかが問われることになると思われる。
私自身、難民を受け入れる覚悟があるか、と問われると正直言ってはっきりと答えることができないのが現実である。考え続けていきたい問題である。