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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

札幌学院大公開講座⑩、⑪ 札幌学院大が目ざすアウトキャンパス

2018-06-25 20:53:10 | 大学公開講座

 札幌学院大の山本ゼミが取り組んだ地域貢献プロジェクトは、そこに集った学生たちに新鮮な刺激を与え、そこから育った学生は「子ども食堂」の創設に取り組んだという。その経緯を聴いた。

 

 6月23日(土)午前、札幌学院大人文学部の公開講座「人間論特殊講義」の第10講、第11講が開講された。

 この日の講義は第10講が「地域貢献とアウトキャンパス学修の意義と実践」と題して、同大の山本純教授が講座を担当した。続いて第11講は「地域で芽吹く若者たち~〈子ども食堂〉の活動から見えてきたもの~」と題して、同じく同大の二通諭教授の趣旨説明と、二本松一将同大研究生白取鈴同大生がそれぞれ実践報告した。

 

 山本教授は、札幌学院大に勤めること約30年、ご自身の研究の履歴について語った。それによると、以前から学生が机に向かって学ぶだけではなく、地域へ出向いて調査したり、地域と連携したりすることの有用さを認識し、その実践や研究を行っていたそうだ。

 その過程で課題となったことは、単なる調査員に終始したり、単なる調査体験に終わっていることに気付かされたという。また、地域との連携を模索しても、希薄な地域連携にしかなっていないという課題が残ったそうだ。

 

 さまざまな模索の中から、山本教授は2012年、江別4大学(北翔・酪農学園・北海道情報・札幌学院)が連携してまちづくりに取り組む「まちづくり・多大学交流会」を実施したという。

 その取り組みの中から、まずは江別のまちを紹介するフリーペーパーの発行、その動きに注目した白石区から行政と企業と学生が連携して白石区のフリーペーパーを発刊する仕事を体験したり、さらに発展して新冠町のまちづくり関わる事業も体験したそうだ。 

          

          ※ 白石区から依頼のあった、行政・企業・学生が連携して取り組んだフリーペーパーの具体例です。

 そうした体験の積み重ねの上に立って、現在は石狩市厚田地区のまちづくりに深く関与している実態の報告があった。(この山本教授の主宰(?)する教養ゼミは、学部に関わらず興味関心のある学生はどの学部の学生も参加できるらしい)

 厚田地区との連携については、2014年に構想を開始し、2015年には連携の検討が始まり、2016年の「厚田ふるさとあきあじ祭り」への参加から始まったという。山本氏としてはこのような連携が単なる一過性のものに終わらせるのではなく、長く継続的にまちづくりに関わることが地元との信頼関係を築くうえから重要なことであると強調された。そして今、学生たちは「厚田ふるさと創生構想」への参画を目ざして、現在も厚田地区に定期的に訪問し、地域住民と協議を重ねているということだった。

         

     ※ 厚田ふるさとあきあじ祭りを札学院生が盛り上げたことを伝える北海道新聞です。右は江別支社勤務の記者がそのパワーを江別市にも、と伝える記事です。

 一方、この教養ゼミを受講した一人、二本松一将さんは受講体験から自分たち自身で何かすることはできないかと考えた末に、江別市大麻地区で「子ども食堂」を起ち上げたという実践を報告してくれた。

 二本松さんは自らの壮絶な生育体験から、子どもの居場所づくりのための「子ども食堂」を開設することを目ざして仲間とともに取り組んだということだ。名称は「子ども食堂ここなつ」、「ここなつ」に込めた思いは、「こ」…子ども、「こ」…交流、「な」…仲良く、「つ」…繋がる、という意味を込めたという。

 「子ども食堂ここなつ」は、多くの方々からの支援をいただきながら、「夕食提供」・「学習支援」・「遊び」を活動に柱として2016年4月から江別市大麻地区に開設したという。二本松氏は活動が軌道に乗ったこと、ご自身が大学を卒業することから2017年3月に活動を後輩たちに託して卒業したそうだ。

          

      ※ 山本教授がまとめた地域学習(実践)がいかに多くの人・機関と繋がりができ、そのことが学生にとって実践的学習となっているか、を表した図です。

 その後、活動を引き継いだお一人である白取鈴さんが現状を報告したのだが…。「子ども食堂ここなつ」は開設から65回を数えた2017年12月を最後に活動を停止しているという。

 原因は二本松氏のようなリーダー不在がその要因のようだ。白取さん言う。「今年秋には再開したい」と…。

 白取さんは「子ども食堂ここなつ」に参加して、色々な人との出会いがあり、繋がりができたという。また、そこには自分を受けて入れてくれる場所があったという。

 そして、正解が分からない中での活動だが、実践から多くのことを学ぶことができた。

 こうしたことを感ずることができた白取さんは、ご自分がリーダーとなってぜひとも「子ども食堂ここなつ」を再開してもらいたいものである。

           

          ※ 二本松氏たちが始めた「子ども食堂ここなつ」の開設を伝える北海道新聞です。

 今回の札幌学院大の公開講座はまだ終わりではないが、私たちの時代とは大学も相当に様変わりしていることを感じさせられている。「大学は象牙の塔」などと称された時代もあったが、いまや積極的に地域に出向き、そこからたくさんのことを学ぶ時代となってきたようだ。もちろん大学によって、その態様はさまざまなのだろうが…。