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北大メディア研公開講座「世界の言語と文化」№2

2018-06-17 23:50:50 | 大学公開講座

 中国には回族と呼ばれるイスラム少数民族が存在する。彼らはイスラムを解するために、漢字でアラビア語を書いたり、アラビア文字を中国語を書いたりというような歴史を経ながらイスラム信仰を今日まで継続してきたという。

 

 北大のメディア・コミュニケーション研究院が主催する公開講座「世界の言語と文化」の第2回講座が6月14日(木)夜に開講された。

 第2回目は「漢字でアラビア語を書く、アラビア文字で中国語を書く」と題して、同研究院の奈良雅史准教授が講師を務めた。

                                       ※ 奈良雅史准教授です。

 まずタイトルについて次のような説明があった。

 1990年代に書かれたコーランのテキストは、アラビア語のように右から書かれた中国語のコーランや、アラビア語のコーランに漢字の「よみがな」がふられたものなどがあったそうだ。こうしたテキストは、現在は使用されていないそうで、テキストは時代によって変化しているという。

 

             

              ※ 写真左のように漢字で書かれたコーランと、右側はアラビア語で書かれたコーランです。

 中国はご承知のように宗教活動については厳しい現実がある。特に文革時代には厳しい弾圧に遭った。その後法的には信教の自由は回復されたが、いまだにさまざまな制限下におかれているのが実情だという。

 そのような中、講師の奈良氏は雲南省昆明市に入って回族の社会の変化を調査し続けているそうだ。そこから見えてきた中国のイスラム教の現実をさまざまな角度から講義された。

 

 前述したように中国における宗教事情は文革時代を経て、改革開放時代を迎えた1980年代以降になり、信仰の自由が回復したことにより急激な宗教復興の状況にあるという。といいながら、公の場での宗教勧誘活動などは制限を受けているともいう。

 宗教復興の具体的な状況は、1980年代以降イスラム関連の書籍が相次いで出版されるようになり、さらには2000年代入ってイスラム関連のウェブサイトも開設されたという。

 

 こうした状況下にあって、調査した昆明市にあっては宗教指導者を介さずに、一般信徒が宗教的知識にアクセスすることが容易となり、宗教指導者の宗教的知識の独占が崩れる傾向が出てきたそうだ。

 一方で、中国社会が進展する中で回族の「漢化」も進んでいるという。つまり宗教教育よりも普通教育を重視する回族の増加である。

 そのことで、回族の中では民族と宗教の分化傾向が出てきているとも奈良氏は指摘する。

 

 講義の全てを再現するのは難しく私の手に余るものなので、以降は私の雑駁な印象を綴ることでこの項を終えたいと思う。

 ご存知のように、イスラム教は他の宗教と比べてその戒律が厳しいことで知られている。

 そした中、中国においてイスラム教を信仰する少数民族として回族は古くから中国社会にあったが、中国政府の宗教対策、あるいは進展する中国社会にあって、必ずしもイスラムに帰依する回族ばかりではなくなってきている現実があるようだ。

 そうすると、回族の中における対立が内在することとなる。

 回族の中においては、コーランを解するためのアラビア語教育か、それとも中国社会で生きていくための漢語教育か、〈宗教教育と世俗教育の対立〉という問題が常に問題となっているという。

 

 中国におけるイスラム教徒は、中国社会において少数とはいえ約2,300万人とけっして小さな数字ではない。彼らが今後どのような道を辿るのか?そこには中国政府の宗教政策も関わってくると思われるが、果たして純化の道を辿るのか、それとも世俗化の道を辿るのか、回族のウォッチングを続ける奈良氏に、数年後に再びお話を聞いてみたいと思った。