田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 213 万引き家族

2018-06-13 16:34:37 | 映画観賞・感想

 いや~、観る者を深~く考えさせる映画だった。血が繋がっていさえすれば家族なのか?そうではなくとも家族同様の絆を感ずることができれば家族と呼んでいいのではないか?そのような家族を引き裂く権利が誰にあるのか? etc. etc.……。

                 
                ※ 一家(?)揃った写真ですが、彼らはさまざまな理由・経過から一緒に住み始めた家族(?)だった。

 映画「万引き家族」が今年のカンヌ映画祭の最高賞(パルムドール)を受賞したと知り、「ぜひ観なくては」と思っていた。それはもちろん私のミーハー的な部分に拠るところ大なのだが、是枝裕和監督が脚本・監督を務めていることも大きな動機だった。彼の作品「そして父になる」を観て、この監督の素晴らしさに触れていたからだ。

 6月12日(火)、本来であれば6月の空の下フットパスに出かける予定が、雨で叶わずユナイテッドシネマ札幌に足を運んだ。
 ネット上にはいろいろなあらすじが登場しているが、その一つを拝借すると…。
「東京の下町、時代に取り残されたようなおんぼろ平屋で、父母の不安定な稼ぎを祖母の年金と万引きによって補いながら日々をつなぐ家族が、児童虐待を受ける女の子を偶然拾ってともに過ごすうちに、それぞれに心境の変化が生まれ、ある事件がきっかけで一家の真相、その在り方が露わになってゆく物語」

             
             ※ ごく自然な演技が好評の城桧吏(右)と佐々木みゆ(左)の子役二人です。             

 その「ある事件」、「一家の真相」についてはネタバレになるので敢えて触れないが、是枝監督はパルムドール受賞記念講演で「ふだん社会のなかで見過ごされがちな人々を可視化させようと考えて作りました」と語っている。そのように聞くと、一見社会の矛盾をあぶり出す固いドキュメンタリー映画のように考えがちだが、「ある事件」を持ち出し、「一家の真相が露わになる」ことを描くことで、観る者がある種のエンターテイメント性も感ずることができる映画となっている点が是枝監督が優れた点なのではないかと思える。

             
             ※ 一家(?)の幸せ絶頂期に海へ海水浴に行ったシーンです。            

 それでも映画は観る者を考えさせる。
 どうして血の繋がりだけが最も大切なのだろうか?
 どうして自ら選び取った目に見えない絆よりも、目に見えるけれど錆びて朽ちかけの鎖で繋がれることの方が大切といえるのだろうか?

 偶然にも、東京目黒区で船戸結愛ちゃん(5歳)が両親の虐待によってあまりにも悲惨な死に方をしてしまったという事件があったばかりである。
 映画では、拾われた女の子(佐々木みゆ)は主人公(リリー・フランキー)の家で楽しく過ごしていたのだが、「ある事件」をキッカケに元の虐待を受けた両親のもとに帰らざるを得ない状況でエンディングを迎える。

             
             ※ パルムドール賞のトロフィーを抱えて感激に浸る是枝裕和監督です。

 いくつもの要素が詰まったストーリーは、簡単に答えの出せるものではない。その答えもきっと観る者それぞれだろう…。
 東京目黒区ばかりでなく、日本各地で児童虐待がかなりの頻度で報道されるようになった今日、この映画を観ながら「家族」ということついて考えてみてはいかがだろうか?お勧めしたい映画である。