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アイヌの子守歌・諸民族の子守歌

2018-06-20 21:38:11 | 講演・講義・フォーラム等

 アイヌをはじめとして、諸民族に伝わる子守歌には共通するところが多々あると講師は言う。アイヌ、沖縄、チュクチ、コリヤーク、サウ族、ジョージア、セネガル、ナイジェリア、カメルーンのピグミー、etc. etc.…。

 

 6月17日(日)午後、北海道博物館ミュージアムカレッジにおいて、表記講座「アイヌの子守歌・諸民族の子守歌」が開講され参加した。

 講師は、北海道博物館のアイヌ民族文化研究センターのアイヌ文化研究グループに所属する甲地理恵氏が務めた。

 

 甲地氏は言う。「子守歌とは、子守行動であり、音楽行動でもある」と…。そして、「子守歌とは、寝かせ歌であり、遊ばせ歌でもある」と言う。

 そうした目的をもった子守歌のメロディは、「ゆっくりめ」であり、「拍節感(はくせつかん)が緩く」、「音域は広くなく」、「柔らかく、静かな感じ」であると言う。さらには「技術的にさほど高度さを要しない」し、「短めのメロディ」であり、「繰り返し(反復)が多い」とも言う。

 ここまでについては、私も祖母の子守歌で育った体験もあり、納得することばかりである。

 

 さらに甲地氏は、子守歌には「N」音、「H」音、「R」音などの繰り返しが多く、それは催眠効果があるのではないか、と甲地氏は推察する。

 そして、子守歌には歌以外の状況の効果として、子どもに密着して聞かせることによる安心感・リラックスの効果がある。また、一定のリズムで軽く叩く、そっと揺らすことによる、繰り返しによる催眠効果、静寂の中で歌うことで入眠を妨げないという効果もあるのが子守歌であると甲地氏は指摘した。

 

 さて、アイヌの子守歌であるが、地方によってその呼び名は様々だそうだ。また、メロディも地域によって、あるいは個人によっても様々なことが多いそうだ。

 アイヌ民族には20世紀初頭まで、アイヌ独特の「背負い紐」、「ゆりかご」があったそうだ。

          

          ※ アイヌ民族に伝わっていた「背負い紐」ということです。

          

          ※ 私たちが知っているゆりかごとは少しイメージの違うアイヌ民族に伝わっていた「ゆりかご」です。(〇枠の中)

 また、アイヌの子守は男性もしたようだが、子守歌は女性が中心だったようだ。そうした中、男性による子守歌の歌唱の記録もいくつか残っているという。

 アイヌ民族の子守歌として共通するいくつかの特徴は、①語としてとくに意味のない言葉で歌うことがあるという。例えば「ハタ ハタ」「ハタ ハン」「オホ rrr オホヘ」といった言葉を意味のある言葉の前後で繰り返し挿入するという。(※ rrrは舌を震わす巻き舌の連続音を表す記号)

 この巻き舌のふるえ音は、和人の子守歌にない特徴だということだ。

 

 この後、講義はその他の民族の子守歌について、それぞれの特徴に触れたが、印象深い話は少なかった。そんな中、台湾の先住民族「サウ族」とカメルーンのピグミー(Baka族)には多声音楽(ポリフォニー)の子守歌があるということで、その音を聴かせてもらったが、ちょっと珍しい子守歌と私には映った。

 

 講義の最後に甲地氏は各地の子守歌について次のようにまとめた。

 ① 子守歌には「寝かせ歌」と「遊ばせ歌」がある。

 ② 子守歌の音の響き自体に、乳幼児をなだめやすい要素があるのかもしれない。

 ③ 子守歌には、民族や文化の違いが反映される。

 ④ 子守歌には、民族や文化の違いを超えて共通する要素もある。

 ⑤ 伝統的な子守歌には、それぞれの音楽文化の特徴が反映されている。

 ⑥ 子守歌は、子守りという目的・昨日のほかに、子守りする側(歌い手)の内面を表出させるカタルシスの機能、叙情歌としての側面も持つ。

 ⑦ 伝統を踏まえつつ新しいものを気楽に創り出せるジャンル…かもしれない。

とまとめた。

 

 文中でも触れたが、私は祖母から子守歌を聴かせてもらった体験があるが、おそらく私の息子はその体験がないのではないかと思われる。

 現代の日本の中で、子守歌はどれくらい残っているのだろうか?