幕末に函館で散った土方歳三はその生きざまから多くのファンを得ている。その土方の函館での最期をオペラ化した舞台を北海道教育大学では実験劇場という形で公開した舞台を私は再度観劇することができた。
3月23日(土)午後、札幌市民交流プラザSCATSにおいて「北海道教育大学・実験劇場 マドリガーレ・オペラ『土方歳三 最後の戦い』~義に殉じた男~(演奏会形式)」が上演された。
私は昨年8月、札幌市教育文化会館で上演された同じ演目の舞台を観てとても感動したしたこともあり、再演で再度の感動をと思い観劇することにした。ただし、今回は演目の最後に( )書きで「演奏会形式」となっているように、オペラのように出演者が舞台で演ずることのない形式だったこと、ストーリーをイメージするために舞台にイメージ画が場面ごとに映し出された点が前回とは異なっていた。
実験劇場と称するだけあって、まず第一部として舞台や背景を理解するためのプレレクチャーが約30分間行われた。そこでは台本・演出・構成を手掛けられた塚田康弘北海道教育大教授のリードにより、原作の広瀬るみ氏(皮膚科医)、作曲・指揮の二宮毅(福岡教育大教授)、背景画を担当された舩岳絋行氏(北海道教育大准教授)がそれぞれ作品を創り出すうえでの背景を語った。
それから休憩をはさんで、9名のキャスト、9名の室内合奏団による舞台が始まった。キャストはいずれも教育大学で教鞭をとる方や研究生ばかりである。室内楽の方は教育大の音楽コースで専門に演奏技術の習得に励んでいる方と本格的な構成である。
塚田康弘氏の朗々たる語りによって榎本武揚が率いる旧幕府軍に帯同する土方歳三と明治新政府軍の戦いを9人の歌手と室内楽によって格調高く演じられた。
※ カメラNGのアナウンスがなかったので、一枚だけ舞台の様子を撮らせていただいた。
ただ、感想を正直に述べさせていただくと、やはり動きのない「演奏会形式」の舞台は前回の舞台に比べてやや物足りなさを感じたのは事実だった。また、会場のSCATSは演奏会場というよりは練習会場ではないのだろうか?客席はパイプ椅子を並べた席で鑑賞に相応しい会場だったか?と問われれば疑問符が付く。前回、8月に素晴らしい舞台を観させていただいていただけに、私の中で期待が大きく膨らんでしまったきらいがないわけではない。
演じた(歌った)キャストの方々、演奏したプレイヤーの方々のレベルは相当なもので、そうした質の高い芸術に接することができたことを率直に感謝したいと思う。