もう30年も前のハナシだが、我が家のクルマは初代ギャラン・シグマであった。このクルマが我が家を去ってからすでに4半世紀以上が経過してしまったのだが、なぜか、取扱説明書だけは現存している。読んでみるとけっこう興味深いモノだったので、この機会に紹介しよう。
当時は「フューエルリッド」のことを「ヒューエルリッド」と呼んでいた。言葉とはその時代時代で変遷するものだ。それは「ドロップ」が今では「落ちるカーブ」に変わったように。
この頃は「フューエルリッドオープナー」なる装備はまだ一般的ではなく、ガソリンスタンドではクルマのキーを従業員に渡して、リッドを開けて給油してもらっていたのだった。
正しい運転姿勢についての記述は現代とそう変わりなく、私もそのようなドライビングポジションをとるよう心がけている。
シートの調整機構については、このギャランはなかなか充実しており、今でいうシートリフターやランバーサポートまで装着されていたのだ。
今ではほとんど見かけなくなった「油圧計」と「電流計」。かつては6連メーターがスポーティーなクルマのひとつの「記号」だったのだが、クルマの信頼性が増した現代では「水温計」すら絶滅しそうな雰囲気である。
そして、今やほとんど絶滅しかけている「パーキングランプ」も、当時の車にはなぜか必須のアイテムだったものだ。
営業車でさえも、今やこのタイプのラジオは装着してなさそうだ。だが、手探り操作性はおそらくバツグンである。
そして、現代のクルマの説明書にはまず載っていないと思われる、「カセットテープ取扱い上の注意事項」・・・
また、面白いのは、このクルマはトランクリッドそれ自体がアンテナの役割を果たしていたそうで、伸縮するタイプのアンテナは付いていなかったのだ。これはなかなかのナイスアイディアで、下手なパワーアンテナやガラスプリントアンテナよりも低コストで作れそうなのだが・・・なぜトランクリッド=アンテナは絶滅したのだろう。
そして、私はこの取扱説明書に、重大な誤植を発見してしまった。暇をもてあましている方は、どれがどのランプの写真なら正しいのか、考えてみましょう。
インジェクションでない時代のクルマには、エンジンをかける際にも様々な「儀式」があった。
有鉛ガソリン仕様の「GSR」には、まだ手動チョークレバーが残されていた。
チョークは使い方を誤ると、プラグがカブってしまい、エンジン始動が困難になる。そんな時は、アクセルペダルを床まで踏みつけたまま、セルを回すとエンジンが掛かるのだ。私も、かつてキャブレターの「ホンダ・シティ」に乗っていて、この方法で何度も助けられた。取扱説明書というモノは、熟読しておいて損はない。
そして、暖機運転についての記述が興味深い。現代のクルマは工作精度が高いので暖機運転は不要といわれているのだが、私にはこの説明書の記述がトラウマとなり、冬期間はタバコ1本分くらいの時間の暖機運転を励行している。そしてその実感としては、「暖機運転は燃料の節約には決してならない」と私は思う。
そして諸元表。うちのクルマのグレードは「スーパーサルーン」(2000cc)で、105馬力。有鉛ガソリンのスポーティモデル「GSR」は115馬力(※いずれも「グロス」換算)であった。
このギャラン・シグマだが、現代のカローラよりも8cm短く、4cm細く、10cm低い。昔のクルマは小さかったんですネ。いや、現代のクルマが肥大化しすぎたというべきか・・・