獅子丸のモノローグ

☆気まぐれ不定期コラム☆

薄幸なる5ドア車たち(9) 日産・スタンザFX

2007年02月09日 | カタログ倉庫

 時は1981年春。
 その当時の日本車は、まだFRが主流で、FF車はスバルとホンダの一連のクルマ、トヨタのターセル/コルサ、日産パルサー、マツダファミリア、三菱ミラージュ、ダイハツシャレードといったところくらいしかなかった。
 そんな時代、日産は世界戦略車としてバイオレット/オースター/スタンザをフルモデルチェンジでFF化させ、バイオレット・リベルタ/オースターJX/スタンザFXの3兄弟として華々しくデビューさせたのだった。
 セダンがあるのは3兄弟共通だが、ラグジュアリーなバイオレット・リベルタとスタンザFXには5ドア。
 スポーティーなオースターJXには3ドアがそれぞれ設定されていた。
 今回は、その中のスタンザFXにスポットライトを当ててみよう。

   
   
   
 今見ると、フェンダーミラーに違和感を感じるが、このセダンの全体のスタイルは端整で悪くない。

   
 その一方、インパネにはあまりデザインが感じられないというか、どことなく安っぽく、スイッチ類の配置が雑然とし、やっつけ仕事的に思える。

   
 シートの表皮や、デザインは、当時の日本人の考える「高級」な感じ。
 カラーがワインレッドでなくてベージュなので、やや救われるが・・・


   
 そして、この5ドア。ウエストラインが低く、窓面積の大きい全体の形には、結構好感が持てる。

   
 だが、そのインパネは、やはり商用車然とした、あまりいただけないモノであった。

   
 シートの表皮のデザインも、新しさを出そうと試みてはいるのだが、なにか未消化な感じは否めない。

   
   
   
   

   
 「リヤコーナーピロー」っていうのも、なにやら意味不明なカルトな装備といえよう。
 日産車では、セドリックにも設定があったようですネ。

   
 だが、さすがに「先進のFF」。
 スペースユーティリティーには優れていた。
 ただし、トランクやバックドアがバンパーレベルから開かないのは惜しい。

   
 このクルマ、たしかに「志」は高かったように思う。
 だが、最後のツメが甘かった。
 このクルマが出た当時、私は中学生だったが、カタログを貰う際に実車を見て、このクルマのインテリア・インパネ・シートのデザイン・大雑把な格子状のグリル・テールランプ・メッキモールの使い方など、そういった部分に非常に安っぽさを感じた。
 それは、当時のアコードと比べると、まさに天と地ほどの差があると思った。

 そして、その価格である。
 当時のスタンザFXセダン1800SGLの価格は134万円。
 アコード・サルーン1800EXは132万円。
 名車の誉れ高い「910」ブルーバードセダン1800SSSも同じく132万円。
 この3車の価格は全て5MT。さて、アナタは何を選びますか?

   
   
 このクルマ、ホントにケレン味のない、いいスタイルをしている。
 ディテールを改善し、これを磨きあげればよかったのに。
 きっと、関口宏氏も、そう思っていることであろう。

   
   
 だが、あろうことか、2年後の’83年。
 このクルマの販売の失敗が「丸くて小さく見えるスタイル」にあると勘違いした日産は、このクルマの一番の美点だった顔にメスを入れてしまう。
 そして日本では売れなかった5ドアを引っ込めて、オースターに設定されていた3ドアを投入し、その存在をますます曖昧にしてしまうのだ。
 なんともチグハグで、全てが後手に回り、この頃が日産の一番の混迷期だったと思う。

   

 ・・・マニアの方なら、「スタンザ・リゾート」というモデルをご存知であろう。
 ホントはそのクルマにも触れたかったのだが、残念ながら、そのカタログは我が家にはない。
 そこで、それについては「徳小寺無恒」氏のコラムをご参照ください。
 

コメント (10)
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