本日取り上げるのは、S-RV。
といっても、中国でホンダCR-Vを模倣してつくられたアレではない。
日産が’96年に日本国内で発売した「パルサーセリエS-RV」である。
’90年代初めにレガシィ・ツーリングワゴンやパジェロが大ヒットし、’94年にトヨタがRAV4を、ホンダがオデッセイを発表した頃あたりから、日本国内の自動車市場に「RVブーム」が吹き荒れる。
この頃は、ステーションワゴン・ミニバン・SUVをみんなひっくるめて「RV」と総称していたのだ。
’95年の5代目発表当初は3ドアと4ドアセダンのみのラインナップだったパルサーだが、当時RVの持ち駒が少なかった日産は、そのRVブームに乗り遅れまいとして、欧州市場では発売されていたパルサー5ドアを「RV風」に装飾し、’96年に「S-RV」として日本国内に投入したのだった。
カタログは、当時の若者を意識して、写真日記風に綴られている。
なんともオジサンの視点で捉えた若者像という感じで、不器用な日産らしくて、とてもヨイ。
バンパーガード・ルーフレール・マッドガード等を装着。
平凡な2ボックス5ドアハッチのパルサーを、RV風に仕立て上げようとする努力の跡が垣間見える。
この頃から、国産車にもエアバッグやABSが標準装着されるようになってきた。
日産はそういった安全関連デバイスの標準装着化は早かったほうで、「ZONEボディコンセプト」と共にその安全性をCM等で積極的にアピールしていた。
当時の日産先進の4WDシステム「アテーサ」。
だが、そのシステムはラゲッジルームを大きく侵食し、上の写真の青いクルマのようにスペアタイヤが荷室にはみ出してしまっていた。
それを反省してか、後日SUV風の「背面スペアタイヤ仕様」も登場した。
いかにも付け焼刃で企画されたクルマであることがうかがい知れる。
パルサーというクルマ、結構がっしりとして欧州車的な私の好きなクルマだった。
だが、5ドアを普通に売らずに、若者に媚びたRV風に仕立て上げようとした挙句、イメージの構築に失敗し、この5代目をもって日本国内ではブランド消滅の憂き目にあうのだった。
パルサーは本来クルマ好きの大人に向けて売るべきクルマだったような気がするのだが、「オレの彼女は、超アムロ。」なんてキャッチコピーのクルマは、気恥ずかしくて大人には買えなかったであろう。
残念なことである。合掌。