日本車で初めて「5ドアセダン」というジャンルのクルマを世に送りだしたのは、意外にもトヨタであったと思われる。
おそらくは、1965年登場のコロナ・ファイブドアが日本初の5ドア車であろう。
だが、やはり「バンみたい」と人気は出なかったようで、その後暫くはコロナの5ドアはラインナップから姿を消すこととなる。
雌伏の時を経て、1978年に「コロナ・リフトバック」として5ドアは再登場。
ところがやはり販売はパッとせず、ひっそりとフェイドアウト・・・
その5年後。
それまでFF化には慎重で、ラインナップのほとんどがFR車だったトヨタなのだが、1983年1月にそれまで販売されていたFRコロナと併売する形で、満を持してFFコロナを追加発売する。
なんと、そのFFコロナは、まずは5ドアのみで登場したのだった!
トヨタというのは、イイ意味であきらめの悪いメーカーである。
5ドア車のユーティリティーを、なんとかユーザーに理解させたかったのだろう。
全体のフォルムは、無骨なフェンダーミラーを除いてはシンプルかつクリーンなのだが、モール類やランプ類の意匠で「いかにもコロナ」になっているところが、大トヨタのすごいところでもあり、面白くないところであるともいえよう。
この時代のトヨタ車のインパネの造りは、当時の日産車よりは少し上だが、ホンダ車にはやや劣る、プラスティッキーなフィニッシュであった。
トヨタお得意のデジタルメーター。
これは「GX-EXTRA」というグレードのもので、タコメーターは付いていないが、シンプルで好感が持てる。
全高は1365mmである。
この当時のクルマは現代のクルマよりも背が低かった。
たとえば、BPレガシィツーリングワゴンの全高は1470mmと、このコロナ5ドアよりも10cm以上背が高いのだ。
写真で見る限りは、レガシィの方が低く構えてみえるのだが・・・クルマのデザインとは不思議なものだ。
それから5年近く経過した1987年12月にコロナはフルモデルチェンジされる。
5ドアも引き続き設定され、「SF」(センセーショナル・フィール)というペットネームが付いた。
サイドウインドゥのグラフィックスについては、先代5ドアよりも、ややコンサバになってしまった印象がある。
デジタルメーターは一気に現代的になり、ちょっと派手な家電のディスプレイのようである。
見やすいのかどうかは謎ですが・・・
インパネのプラスティックの質感も、一気に向上した。
この辺りの時期から数年間、日本はバブル景気の真っ只中に突入していくのだった。
そして、バブルがはじけた後の1992年にコロナはフルモデルチェンジ。
トヨタはまだ5ドアをあきらめず、引き続き「SF」を設定する。
ただし、先代では別個に「SF」専用のカタログが用意されていたのだが、この代からは、コロナ全体のカタログの中のバリエーションモデルといった扱いとなっている。
この時代の「SF」、後ろからみると、実は結構カッコいい。
ただし、メーターパネルのチャチな質感に、「バブル崩壊後」を色濃く感じさせる。
とはいえ、私としては、デジタルとアナログのハイブリッドのメーターについては、なんだかフランス車みたいな趣で、結構好きだったりする。
この代の「SF」のフォルムは、今で言えば「アテンザ・スポーツ」のようで、割とスポーティーで、欧州テイストがあって好感が持てる。
しかし、フロントグリルやらヘッドランプの意匠は、どこから見ても「コロナ」にしか見えない。
それが、このクルマに関してはマイナス要因になってしまったのだろう。
どうしても、コロナというクルマにはオジンくさいイメージが付きまとってしまうのだ。
で、結局コロナは1996年のフルモデルチェンジで「プレミオ」というペットネームを与え、それと同時にコロナの5ドアは消滅する。
そして、あろうことか、それが「コロナ」というブランドの最終モデルとなってしまったのである。
「カローラ」もいつかは「アクシオ」に吸収される形になるのだろうか。
今後の動向を見守りたいと思う。合掌。