South Is. Alps
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Coromandel
Coromandel, NZ
Square Kauri
Square Kauri, NZ
Lake Griffin
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『〈満洲〉の歴史』

小林 英夫、2008、『〈満洲〉の歴史』、講談社 (講談社現代新書)

ずいぶん前に『満鉄調査部』を読んだことがあって、それ以来、久しぶりに満州国について学ぶことになった。新書ながら、その歴史がよくわかったように思う。
また、新たに理解したこともあった。つまりは、戦後日本の高度成長は、日中戦争から太平洋戦争に至る過程における、満州国の建国から崩壊までの間のコピー、あるいは、太平洋戦争遂行のための国家総動員態勢の非軍事バージョンというべきか。それを担った官僚として満州国の経済体制を担った岸信介や椎名悦三郎は、戦後、政治家として日本の高度成長にいたる政治経済体制を担う。こうした歴史の相似形がめについた。
中国大陸にとって、清帝国の揺籃の地である満州は歴史的に辺境であり続け、歴史を通じてモンゴルや女真などの遊牧あるいは狩猟採集の民が行き交っていた。それが、清帝国の誕生とともに、漢民族(漢字文化を担う農耕民)がこの地の開発に主たる役割を担うことになる。清帝国の崩壊後、中華民国の軍閥が割拠するなか、日露戦争の後、張作霖/学良父子らと並んで関東軍が軍閥のように機能して、満州国を成立させる。この地を直接統治することなく、傀儡政権を樹立して、大日本帝国は人材を送り込み、日本化を目指す。
本書は、戦後、1990年代に至るまで満州国に関わった人々の動きもふくめて満州の歴史を記すのであるが、気になったのは、日本の満州国経営における同化主義の顛末、そのことについての評価がどうであるか、と言う点である。近代国家という当時から現代に至るシステムのグローバリゼーションをになった満州建国と植民地支配ではあったが、そのことをどのように評価したのだろうか。その後、どのように日本の外交に影響したのだろうか。著者の前著『日中戦争』にも記されていることではあるが、やはり、日本はかわっていないということが、気になった。

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)
小林 英夫
講談社

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2009-02-22 23:11:55 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


『黄金郷(エルドラド)伝説:スペインとイギリスの探険帝国主義 』

山田 篤美、2008、『黄金郷(エルドラド)伝説:スペインとイギリスの探険帝国主義 』、中央公論新社(中公新書)

1492年のコロンブスのいわゆる「新大陸発見」を素直にめでたいと考えている方は、珍しいのではないか(そう思いたい)。この後の「新大陸」の悲劇は、今も続く。新大陸ばかりではなく、ヨーロッパによって発見された諸大陸、諸国は大概ひどい目にあっていて、その癒しはどのぐらい必要なのか。
本書は、ベネズエラを中心にした南米大陸東北部の植民地分割の有様について、探検やそれに伴う地図作製、また、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』、アンリ・シャリエールの『パピヨン』、コナン・ドイル『失われた世界』などの文学(あるいは、エッセー)も含めて、西欧社会の世界支配/分割の様子を描いている。新大陸への探検ロマンは、決してロマンではなく植民地支配に直結していたし、そのことを隠蔽することになった文学は、あるいは、読者の心沸き立たせる探検記は誠に罪深いといわねばならない。

黄金郷(エルドラド)伝説―スペインとイギリスの探険帝国主義 (中公新書)
山田 篤美
中央公論新社

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2009-02-22 20:11:29 | 夕食・自宅 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


豚ロース肉とキャベツ、ほうれん草の蒸し煮

豚ロース肉とキャベツ、ほうれん草の蒸し煮(キャベツ、ほうれん草、えのき茸、絹揚げを好みに切って、土鍋に塩、花椒、赤唐辛子小口切り、豆鼓とあわせておく。紹興酒とナンプラーを振りかけ、土鍋で蒸し煮にする。蝦子麺を別に茹でて、めいめいのボウルにいれて、先の野菜とからめて食する)
棒餃子(スーパーで作り置きの棒餃子。黒酢、濃い口醤油、豆板醤で食す)

2009-02-22 19:24:47 | 夕食・自宅 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


温暖化問題について

昨日、『正しく知る温暖化』について、書評を書いたのだが、この「読書と夕食」ブログでは、何冊も関連する書籍などについて書いているので、一覧の形で記録しておこうと思う。
評者の立場は、温暖化は惑星としての地球における非常にマクロな気候変動であって、昨今の温暖化の社会問題化をうさんくさく感じている、というものである。おそらくグローバルな資本主義が関与する経済問題と感じている。

2009年2月21日:『正しく知る地球温暖化:誤った地球温暖化論に惑わされないために』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/6c9777662d03134be3c6a1599cc4e414
2009年1月30日:『「地球温暖化」論に騙されるな!』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/152687fae3b5b54a468e6689d8b214b1
2008年10月2日:『科学者の9割は地球温暖化CO2犯人説はウソだと知っている』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/c8178e61f30206d4fa08e4e4cff22981
2008年9月14日:『人類が消えた世界』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/0440ea79caaf4a2595ee6e6b7b25c088
2008年6月30日:『日本沈没 第2部(上)(下)』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/032b30ed0252a56d1431fc8fcd8dcf9e
2008年6月16日:『深海のYrr』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/550606660fafc702b6b03ad2a3ca5c26
2007年7月31日:DVD『不都合な真実』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/6efd833f5049fd36e1c1877d0169eb91
2006年12月23日:『深層水「湧昇」、海を耕す!』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/af3da60c3bb9e3a80154c53c751de26d
2006年12月3日:『環境問題の杞憂』http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/c0ec0e2ac07537955323dc708e51ab85
2006年3月31日:『スノーボール・アース:生命大進化をもたらした全地球凍結』:http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/70bb7aef0f25b890840366dfd202f8b2

2009-02-22 13:01:07 | コメント | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


『「環境」都市の真実:江戸の空になぜ鶴は飛んでいたのか』

根崎 光男、2008、『「環境」都市の真実:江戸の空になぜ鶴は飛んでいたのか』、講談社 (講談社プラスアルファ新書)

本書の「おわりに」のなかで、著者は執筆動機として「とりもなおさず江戸の町を環境的に理想化した本の氾濫と、それらによるゆがんだ江戸の「環境都市」像の広がりを危惧しているからであり、ありのままの江戸の環境事情を描きたい」ということであったと記している。たしかに、江戸時代ブームもあって、環境都市のイメージが強いが、考えてみると、それもこれも、現代の環境に対するイメージが投影しているのであって、たとえば、反故紙のリサイクルや屎尿の周辺農村での肥料としての利用は、現在問題視される「資源利用ののちは廃棄」という一方向ではなく、リサイクルして利用する方法が現在、強い関心を呼んでいることと関係があるだろう。だから、江戸の町を「環境都市」と理解することは、現在の環境観や環境政策と関連しているということであろう。
本書に描かれるように、鶴をはじめとする野鳥が江戸の空を舞っていたことは、歴代将軍の鷹狩りのための野鳥の保護であり、生類憐れみ綱吉の時代にしても、ほかの野鳥が保護されている一方、トンビやカラスが捕獲されているなど、「生類憐れみ」という仏教思想に基づく環境観でのみ理解することができない。しかし、逆の見方からすれば、環境保護に関する厳しい法令があれば、環境は維持できるとも見える。もっとも、綱吉時代には「生類憐れみ」のために鷹狩りは行われなかったが、帰って野鳥に関する関心が低下し、江戸の都市化の拡大と相まって、次代の吉宗の次代には、野鳥が激減していて、鷹狩りを復活するために改めて、野鳥保護をうちだしていたという。こうしたことは、厳しい法令といっても、なかなか一筋縄ではいかないということではあるが。
本書を読んでいて、興味を持ったのは、江戸の町の公衆便所の状況である。屎尿は売買される商品であって、下肥商人は辻辻に屎尿桶をおいて、屎尿を回収して肥料としようとするが、町方では、屎尿桶が通行の妨げとなり悪臭のもとであるとできるだけ設置をさけようとした一方、立ち小便が通常であって辻辻には尿の川ができていて、そのことについては、悪臭のもととは考えられていなかったという。こうした屎尿に関する不浄観が大変興味深かった。

「環境」都市の真実――江戸の空になぜ鶴は飛んでいたのか (講談社プラスアルファ新書)
根崎 光男
講談社

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2009-02-22 12:31:59 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )