『QJKJQ』
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本作品は2016年の第62回江戸川乱歩賞を授与された。作者は『テスカトポリカ』で2021年上半期の直木三十五賞を授与されていて、本作品を続けて読もうと思ったのは、その作品を読んでそのスタイルに関心を持ったからだ。
本作が取り上げるトピックは殺人である。聖書で語られるカインとアベルの物語から人間の持つ原罪でもある。個人で行われる殺人は倫理的にも法的にも断罪されるにも関わらず、社会は戦争など社会が認める殺人は許容する。作中に登場する謎の機関「アカデミー」は、殺人の類型を調査し、殺人犯を泳がせ、殺人を観察する。ところが、普通の人間が殺人を犯すことが明かされる。また、殺人という行為を記憶に刷り込むことも可能である。
ストーリーとしては、並行してネット検索しながら楽しんで読めたのだが、一つ気になったのは、匂いだ。血の匂いや死の匂いは一切語られないのだが、私には、その意味では、リアリティを感じることができなかったのは残念だった。
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