このトランジスタラジオNT-880Mの修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
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前回は、このトランジスタラジオの電池入れを含む電源部を調査しました。しかし、電池受けに錆があった程度で不良は特に見つかりませんでした。このため、今回は基板そのものを調査することにしました。最初に高周波増幅部、次に低周波増幅部を調査しました。
今回も、自作のシグナルインジェクター・トレーサーが活躍しました。この治工具は、ラジオ類を作ったり修理するためのアマチュアの道具です。とても便利なので、今後暇があればこの治工具を改良しようと思います。
ラジオ内の基板を取り出して、調査しやすいように裏返す
最初に高周波部を調査しました。中間周波段にシグナルトレーサーの端子を当てると、ラジオ放送がよく聞こえました。高周波段は特に問題ないようです。次に検波段や低周波増幅初段にシグナルトレーサーの端子を当てるとこれまたラジオ放送がよく聞こえました。さらに低周波電力増幅段にシグナルトレーサーの端子を当てると、音は大きく聞こえるのですが、音がとてもひずんでいます。どうも電力増幅段に問題があるようです。
中間周波段を調査 検波段を調査:問題なし
不思議なことに、これだけ音が大きいのにスピーカーからはいっさい音が出ません。どうも、電力増幅段以降のどこかが断線している可能性があります。そこで、音声出力以降からスピーカーまでの電線を丹念に追いかけました。すると思いがけない不良を見つけました。それは、イヤホンとスピーカーを切り替えるイヤホン挿入端子です。イヤホンを抜いてもスピーカーに切り替わらない不良を見つけました。スピーカーは常に遮断状態となっていました。
丸内は、イヤホン挿入時にスピーカーへの接続を遮断する箇所
スピーカーへの音声出力が遮断されている箇所を、紙やすりで磨いて導通するようにしました。すると、ラジオ放送が大きな音で聞こえるようになりました。音はひずんでいません。音声出力が開放された状態だったため、音がひずんでいたのでしょう。
修理後、基板を元のように本体に収めて裏蓋を閉める
修理後、基板を元のように本体に収めました。そして、チューニングダイヤルを回してラジオ放送を正常に受信できることを確認しました。周波数の低いNHK第一放送(594KHZ)から、周波数が高いラジオ日本(1422KHZ)まで良く受信できました。AGC電圧を使って作動するのだと思いますが、このラジオの特長であるチューニングメーターも正常に動いています。後日時間があれば、本体表面を磨いたり傷んだ革を修復してみようと思います。
ネジ類を全て締め、元に戻す 本体を、黒革に収める