すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

100円読書で養う想像力

2010年10月04日 | 読書
 9月に課していた100円読書シリーズもどうやら終了である。


 『死体は悩む ~多発する猟奇殺人事件の真実』(上野正彦 角川0NEテーマ21)
 
 法医学とか監察医、検視官などを扱ったテレビドラマがあり、なんとなくイメージはつかんでいたような気分だったが、実際の問題を提示しながら話を進めている本書はまた格別だった。
 誰しもが知っている事件、「和歌山カレー事件」「沖縄トリカブト事件」、そして本県秋田の「彩香ちゃん事件」等々、ああこんなふうに分析できるんだと、監察医の奥深さに触れる思いがした。
 人の死に対する、また死体に対する国民性の違い、時代による違いにも言及している箇所も興味深かった。
 いずれにしても、人の死はそれぞれのドラマを抱えていて、それに事件性の要素が少しでも加われば、表現は悪いが実に見せるものだなと思いを強くした。
 医学の目とは凄いものだ。


 『それでも やっぱり がんばらない』(鎌田實 集英社文庫)
 
 これもまた別の意味で医学の凄さを感じさせてくれる。こちらは、目というより心だろうか。
 諏訪中央病院における医療のあり方はかなり有名であり、著書も初めてではない。それでもまた小説以上に泣ける話があり、単純にいいなあと感じる。
 それは端的にいえば「やさしさ」なのだが、登場する患者や家族の背負う重さを考えたとき、どんなレベルでそういう括り方ができるか、少し戸惑ってしまう。
 この病院の医師らは、治療より大事なものがないか探っている気がする。いや、本物の治療とは何かを探っているのだろう。
 身体に効くのはいったいどんな働きかけか…それを広く見つめているし、深く考えている。

 100円読書シリーズ、最後の二冊に共通していたのは「想像力」であった。
 どんなに分析ができても、想像力がなければ問題は見えてこない。