『父親力』(正高信男 中公新書)
ちょうど去年の今頃に、こんな記事を書いていた。
「二人目の母親」でいいのか
ここで読んだ正高氏の文章のもとになった新書だろうと思う。
2002年に発刊された本だが、実に興味深く読んだ。
特に「父親の話はあまり登場しない」とされた前半の二章が面白かった。
第一章 記憶の起源~「はじめての記憶」から子どもの発達を考える
第二章 「死を看取る」ことの意義
第一章冒頭の、著者が調査した「いちばん古い記憶」についての学生と高齢者の結果比較が実に納得でき、かつ考えさせられる。
「人はいやなことを覚えている」からヘビへの恐怖感、そして仲間から判断の基準を学ぶという「社会的参照」までの件は、なるほどの連続であった。
第二章は、記憶の分類が出てきて、多少知っていたことではあったが、それが子どもの成長とどう結びつくのか、これも納得させらた。
それ以降の章においても、「相手の笑いを先取りする笑いの発達へ」といった、ふだん自分がよく感じている事柄についての論考もあり、読みどころ満載だったといってもいい。
肝心の「父親力」についての必要性は、多くの人が語ることに近いと思われるが、これだけ理論づけられれば、本当に納得いや身にしみる、ということだ。
反省を促す著である。いまさら、ではあるけれど。