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教える技術は,学びである

2013年08月28日 | 読書
 校内の実践研修会で模擬授業やら協議説明をする準備が半端なままだなあと思いつつも、注文しておいた書籍が届いたので、つい読み込んでしまった。

 『いちばんやさしい教える技術』(向後千春 永岡書店)

 200ページ弱の単行本で、新書でもいいのではと思わせられる質、量だった。しかしそれは不満ということではなく、コンパクトにまとめられているし、実にすっきりした読後感があったという評価だ。

 教えることを仕事にしてきた「先生」歴三十数年の自分にとっても、新たな知見があったし、再確認できたことも多かった。

 「教える技術」の原則は、まず次の言葉に集約される。

 教えるゴールは行動になるように言い換える


 私たちが「目指す姿」とか評価をするときの「具体的な観点」といった言葉で表現していることと同じである。
 つまり、「学んだ」ことを実行しているかどうかであり、そのことによって「教えた」と言えるかどうかが決定される。
 この覚悟は、何度も何度も思い起こさなくてはならない。

 筆者は「教える」ゴールを三つに区分したことも実に分かりやすい。

 「運動スキル」「認知スキル」「態度スキル」


 この運動スキルに書かれてあることは、実に得心がいった。運動があまり得意でなかった自分が、特にスキーや水泳の指導にある程度の自信をもつに至ったコツがすべて網羅されているように感じた。
 大雑把に言えばスモールステップとフィードバッグである。常にそれだったと思う。

 運動スキルを教えることの難しさは、自分ができるようになったことを忘れてしまうことにあるらしい。その意味では自分が簡単に上手になれなかったことで、ある意味の臆病さや慎重さが備わって教える技に転化していったのかと考えた。


 認知スキルで興味深かったのは、記憶する場合の聴覚型と視覚型というタイプだ。
 学習に難儀する子の指導法の中で話題にされることが多いが、どの子も(どの人間も)特性があるらしい。その見分け方が「出来事の話し方」に注目するというのは、言われてみればもっともだった。
 はたして自分はどちらだろう。これは誰かに聞いてみた方がいいだろう。

 態度スキルについては、今まで漠然と考えていたことをズバリと言語化されたようで、ずいぶんと気持ちが良かった。
まず、このことだろう。

 相手の心に触れることで態度スキルを教えることができる

 教える側も、相手から何かを学ぶという姿勢が必要になってくるのです。



 具体的には、相手自身の気づきを大事にする、相手自身がストーリーを作って具体的な行動に移せるようにする、そのための質問法いわばコーチングの手法に結びつくものだった。

 この夏「授業力をみがく」というテーマで研修会をし、校内でも「授業改善」を取り上げた。その根本は「自らの授業力を生かす」「強みを意識しながら、改善点を探る」にある。
 そのために、どんな問いかけが有効になるのか。
 この本では、対個人のスキルが中心になっているが、集団の中でも生きる問いかけはある。
 そういう問いかけは、結局自分自身に向けられるし、それを学びととらえてみたい。
 教える技術は、やはり学びなのだ。