すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

いつも風が吹いている

2013年08月10日 | 雑記帳
 知り合いもかの先生もあの大先生も観たというので,遅れてはなるまいと,いざ『風立ちぬ』へ。ジブリだけれどこれはもう子ども向けではないわな。相変わらず画像の美しさ,特に冬の風景の描き方など本当に見入ってしまう。写真や実映像でも感動はできるが,絵に描く深さのような感覚が今回も迫ってきた。


 テーマは「風」だ。おっとそんなこと言いきっていいか。いろいろなシーンで吹く風は物語を誕生させ,象徴的な役割を果たす。だからアニメとして風の描き方に十分注意が払われている。登場人物への局地的な風が作りだす世界は,時代の大きな風のうねりの中に巻き込まれるが,人はそれを見逃してはならない。


 改めて声優の使い方が絶妙だなと思う。主人公二郎にああいう人の声を持ってくるセンス,いや世界観があるのだろう。声の持つ存在感が人物を決定づけている。バック音楽はトーンの違いに最初あれっと思わせておいて,マッチングさせていく妙を感じた。主題歌『ひこうき雲』は正直なところ,ぴんとこなかった。


 おおうっと思ったのは,二回登場した「天上大風」という書。この良寛の言葉を題名とした雑誌が発刊されていたことを思い出した。映画の字は良寛の書ととても似ていた。公式サイトによると鈴木敏夫氏の筆という。使い方は何気なかったが,宮崎監督は「風」を最終的に善なるものという捉え方をしているのか。