すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

羽生の言葉を噛み締めたい

2015年12月14日 | 読書
 スケートの羽生ではなく、将棋の羽生である。季刊発行のある広報誌に棋士羽生善治のインタビューが載っていた。著書や雑誌等の記事を読んでも非常に明晰な言葉を使う人だなあといつも思う。今回の記事も密度が濃い。将棋の戦法が絶えず更新されているという現状認識のもとに刺激的な言葉が繰り出されている。

 
 「人は経験を積んで、何がリスクになるかを学習します。そうなると今度は、できるだけリスクを回避しようとします。しかし、長い目で見ると、それでは発展は望めませんから、頑張ってアクセルを踏み込む勇気を持たなければなりません。」


 仕事のなかみが、時々「リスク回避」だけになっているのでは…と思わされることがある。例えば「危機管理」という言葉も拡大解釈され、そのものが目標になったりすることもある。今、目の前にあるリスクは全体のものなのか、組織のものなのか、私のものなのか…区別も曖昧になっている。「覚悟」が大事である。


 「小さな『負け』は、大きな『負け』を防ぐために必要だと考え、受け入れる覚悟もいると思います。」


 未読ではあるが『大局観』という新書があったと思う。その点と将棋や勝負事にある「読み」という二つの重ねを、身近で見事な例で説明している。将棋会館を初めて訪れる人に必要なこととして、初めに大雑把な位置や方角を知り、駅等で降りたら番地や周囲の目印を確かめる、という2段階があることを強調する。


 「ゴールの方向を『大局観』でフォーカスし、『読み』を積み重ねて一歩ずつゴールへ近づいていく。」


 トップ棋士としてのモチベーションのあり方を問われ、答えた言葉は実に納得だ。オリンピックを目指すアスリートと違い、年間60局以上何十年も続けるプロ棋士が「つねに高く保ち続けることは、ほとんど不可能」と言う。職業柄、ある面で教師も同じではないかとすぐ頭に浮かんだ。噛み締めたいことばがある。

 「モチベーションは『天気』のようなものだと考えています。元気な晴れの日もあれば、どうしてもやる気の出ない雨の日もあるでしょう。(中略)雨の日は雨の日なりに、きちんとした将棋を指そうとは思っています」