すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

ぶれずに作り続けた人

2015年12月22日 | 雑記帳
 先週、岡本おさみの訃報がネット上に載っていた。岡本おさみと言えば、私ぐらいの年代で言えば、「旅の宿」「落陽」「祭りのあと」といった曲で、吉田拓郎との関連で覚えていたり、あのレコード大賞曲「襟裳岬」の作詞者として知っていたりするのが、普通だろう。量的には少ないが印象深い書き手の一人だと思う。


 今考えると、「落陽」や「祭りのあと」にある厭世感がぴったりとはまってしまう十代には何か笑ってしまうが、当時は普通にいた。世をすねている、斜に構える、反発するがあまり社会的な行動に出るわけでもない…こう書き出してみると、いわゆるポスト団塊世代という奴ら(自分!)はどうしようもないと気づく。


 それはさておき、個人的に岡本おさみには多少の興味があった。2003年に発売された一枚のCDを持っているのは、その証でもあろう。『岡本おさみ アコースティックパーティーWITH吉川忠英』。ギタリストの吉川をプロデューサーに迎え、全編岡本の作詞の曲に、様々な歌い手が参加して作られたアルバムである。


 SION、加川良という渋い人や、福山雅治、南こうせつというメジャーな人、かつてファンだった桑江知子、ビギンの比嘉なども参加している。吉川のアコースティックが心地よく、岡本の世界を引き立てている。一曲だけ岡本自らボーカルをとっている。「たまには、雨も」というその曲は、まさにあの頃と同様だ。


♪時の流れにのったやつもいたし
 酒に愚痴を注ぐやつもいたぜ
 憂鬱も夢も飾り飽きたから
 忙しいことは 悪くないと思う
 雨が街をぬらしている

 たまには雨に 濡れてみるのも
 たまにはいいね♪



 ラストは吉川が歌う「祖国」という曲で、これも心に響く。「落陽」に登場する人物に似ているとも考えられるし、その後の人生をどんなふうに生きたか想像できる。その題名はかなり重い気がするし、ぶれずに詞を作り続けた矜持もあるだろう。どこまでも風来坊で在り続けたい願いか。一部を引用しよう。合掌。


♪さまよってゆくよ
 やせた魂が
 願うことはいつもひとつなのに
 ぼくらは静かに許されるだろうか
 幼い者が願うだろう未来に♪