すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

冬休み後半軽読書

2016年01月14日 | 読書
  『架空の球を追う』(森 絵都  文春文庫)

 短編が11作収められている。いやあ、手練ですなあ、という感想をまた持ってしまう。特に表題作は、単に小学校の野球の練習風景を描いているに過ぎないのだが、妙に生々しく心に迫ってきた。また「夏の森」という作品も、百円ショップで見つけたカブトムシと、かつて「自由奔放な女になりたい」という気持ちを持った記憶が、何か手品でもみたように鮮やかにつながり、小説の面白さというものを存分に味わえた気がした。



 『大切なことは60字で書ける』(高橋昭男  新潮新書)

  「名文より明文」という著者の主張にそって展開される、文章作法である。自分も共感するのだが、なんとなく「名文」にほのかな憧れを抱いてしまうので、結果「迷文」になってしまうことがよくある。最後に著者が言う「とにかく書く」は及第点をもらえるが、肝心のところが守られていない。2つの問題はそのまま、自分の駄目な点でもある。「メッセージを意識しないで文章を書いている」「メッセージを光らせる手立てを使わずに文章を書いている」


 
 『嘘みたいな本当の話』(高橋源一郎・内田樹 選  文春文庫)

 「自分たちの人生で起こった、風変わりな、もしくはかけがえのない出来事について書き記した」文章を募集した作品集。アメリカのラジオ番組での企画を、日本版として編集した。個別の作品も味わい深いが、アメリカでの投稿内容と日本のそれとの比較を、内田教授が語っている箇所が特に面白い。内容より文体にこそ個性が表れることは前から語っていたが、国民性さえも如実に表れるとは、一つの発見であった。それから「届く言葉」について、かなり自分にとって画期的なことを書いてあったので、目を見開かされた。