すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

納得?の三冊だった

2016年01月23日 | 読書
 『ひなた』(吉田修一  光文社文庫)

 これも以前読んだのではないかと思いつつ、中古本を買ってしまった。読み進めるとやはりと思い当たったが、面白いのでまた読みふけってしまった。ストーリーはほとんど覚えていないが、気のきいたフレーズは「ああこれ」とすぐよみがえってくる。自分流の読み方とはこんなものだろうか。以前書いた感想メモは、ずいぶんと格好いいことを書いているなあ。この5年ばかりで弱ったのは体力ばかりではなく、正対する気力もそうなのかもしれないと嘆きモードに入る。



 『白ゆき姫殺人事件』(湊かなえ 集英社文庫)

 これまた独特な構成を考えたものだ。本文?にあわせて巻末資料?(事件に関わるSNSの投稿集、週刊誌記事など)を参照させるという手法だ。正直、ちょっと面倒でもあり、読み方(読む順序)が指定されている気もするし、そうしないと正しく読みとれないようで、少し違和感もある。異なる視点人物による語りを重ねていく形は得意技だが、今回ほどその人物が多いのも珍しい。犯人は意外な人物だったかというと、そうとも言えるし、十分あるなあと二重の納得をさせることもいつもの湊ワールドだ。



 『ニュースキャスター』(大越健介  文春新書)

 しばらく「NHK9時の顔」でもあった大越キャスターの書いた新書である。東日本大震災の起こった前後のことであり、特殊状況とも言えるが、ある意味ではキャスターの本質、王道といったことを考えさせてくれた。マスコミには一般視聴者のうかがいしれない部分は多いだろうが、それは何の業界にも言えるかもしれない。つまり「自分」をどこまで出せるか。ぎりぎりのところでせめぎ合う部分が一番面白い。そんな読みどころがあふれる本だった。文章もとても上手だ。