すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「女王」にしては凡作か

2016年02月24日 | 読書
 今年になってから、もう三冊読了である。

 この頃は「イヤミス」という形容詞はどうかと思うが、個人的に「女王」と称してもいいほど、肩入れ?しているなあ。
 しかし、今回は辛口コメントしてみるか。


 『豆の上で眠る』(湊かなえ  新潮社)

 失踪した姉が戻ってきたら、別人になっていた…この有りそうもない設定、ちょっと無理があるかなと思いつつも、読ませてしまうのは筆力か。
 視点人物が現在と過去を往復するよくある手法だが、小学生の頃の感覚が大人過ぎるのも途中から気になった。湊作品としては、かなりくどく繰り返されている印象がした。
 ただ冒頭にある、貧乏な画家のエピソードはなかなか面白い。
 「新しいカンバスを買う余裕がなくて、絵が描かれているものを塗りつぶし、その上から新しい絵を描いていた」そして、「人間の記憶もそのカンバスのように、重ね書きの繰り返しではないだろうか」と導きだし、物語へ誘う。ここはさすが上手い。



 『望郷』(湊かなえ 文春文庫)

 最新の文庫。珍しく短編集である。
 ただし舞台は、瀬戸内海に浮かぶ白綱島と限定されている。その島内における人間模様を色濃く背景にした物語が並ぶ。作者の出身である因島がモデルらしい。
 ミステリ色は少し薄く、どちらかと言えば人間模様ということか。
 考えると、「島」「学校」「家」という規模に差はあるが、閉鎖的な空間の、そして人間の持つ閉鎖性、排除性が物語のきっかけを作っていくパターンが圧倒的に多い。
 意図的とは思うが「○の○」と題名を限定している。
 どんな言葉も当てはまるその枠組みは、まるで「島」のようにある面で揺らがない。
 しかし短編は、湊にとってなんとなく習作のようにも感じる。失礼か。