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「学校には道具が多過ぎる」

2016年07月18日 | 読書
 続けて、『「暮しの手帖」初代編集長 花森安治』(「暮しの手帖」別冊)

 花森安治の言葉を、歌人穂村弘がセレクトしているコラムがあった。

 意外な人選だが、やはりという思いもする。
 穂村の感覚を面白いと思う自分が花森に惹きつけられるわけだ。

 実に痛快な一言を選んでいた。

 「個性は欠点の魅力である」(※「点」は旧字体で書かれてあった)

 こんなふうに言えることは、本当に凄い。
 「個性」の価値を、「欠点」と「魅力」という表裏の関係にある言葉で見事に言い表しているではないか。
 魅力を感じない人にとって、個性は邪魔な存在でしかありえないのだ。
 ああ、納得だ。



 すっきりとは逆に、ズドンと腹に答えた一節もある。

 それは「人間の手について」という、口述筆記による絶筆である。

 「人間の手のわざを、封じないようにしたい」

 新しもの好きの花森は、様々な道具に興味を示したが、いわゆる「手仕事」の本質を手放してはいない。それが人間としての根源につながるということをしっかり把握していた。

 そしてなんとその絶筆の一番直接的なメッセージは「学校には道具が多過ぎる」という指摘である。
 もう40年も前に語られたことだが、現在の学校現場に対しても深く問いかけてくる。
 もう一度真摯に検討する必要があるのではないか。